最悪の終わり
「…これって、丘に戻ってきたってことですよね?」
大可士が南町さんに聞く。
「だろうな。…斬がいたな。あの雲の中には。」
「そうですね。斬の、あの必殺技…。かなり危険なんですかね。」
「そうだな。」
「まなは?まなはどこにいるの?」
すずみが動揺している。那深が慰めるように言う。
「磨夏ちゃんは、ちゃんとここに戻ってきてるよ。ほらね。」
那深が、指揮者のように腕を振る。すると、綺麗な色の鳥が飛んできて、磨夏を金属片の山の中から探しだし、立たせた。
「まなぁぁ!!」
「ん…すずみ?…そっか、戻れたんだ。」
「まなぁ!!心配してたんだよぉ!」
すずみが磨夏に抱きつく。
「私は大丈夫だよ。けど、斬さん…。」
「斬さんがどうしたの?」
「助けてあげられなかった…。恩返しできなかった…。」
涙を流し始めた磨夏に、いつの間にか来ていた結菜が声をかける。
「泣いてる暇は無いでしょ?まだ恩返しはできるよ。」
「…え?」
結菜と一緒に来ていた朱魅も言う。
「斬さんは、この金属片の山のどこかに堕ちて待ってるし。泣いてる暇は無いよ、探さないと!」
「…うん!!」
こうして、4人は斬の捜索を始めた。
「俺らも捜すぞ。」
南町さんが言う。
「そうですね。皆、行くよ。」
陽響が号令をかける。
「こういうのはウチに任せてー!」
来実がノコギリをぶん回して金属片を次々と切り裂いていく。
「…危ない。」
工事用ハンマーで、飛んできた金属片からガードする鳴実。それぞれがそれぞれの才能を使って斬を探している。
「おい、そこのさっきから仕切ってる女。」
金髪の青年が私に声をかけてきた。
「私ですか?」
「おう。…俺も、捜索手伝っていいかぁ?」
だからこの男は苦手なんだ。いかにも不良な格好してるのに、私達を手助けしようとしてくる。外見をもうちょい常識の範囲内にするか、いっそ不良らしくいきなりぶん殴りにきてもらった方がまだいい。けど、人は多い方がいい。手伝ってもらおう。
「はい。あなたの仲間らしき方々にも手伝っていただけるんですか?」
「車の中の奴らかぁ?俺が頼めば手伝ってくれるだろ。ぶっちゃけよぉ、俺ら外見だけだから。本物のワルじゃねぇから、何かあったら言ってくれよ。」
「…はい。」
私からは絶対に頼まないがな。
海督は考える。皆忘れてるけど、斬さんが連れて歩いてる小さい子、どこにいるの?斬さん捜しつつ、そっちも捜さないと。だって、空飛べるし強いし小さくて可愛いし。いや、俺こんなこと考えてたらロリコンじゃね?いや俺ロリコンじゃないし。ただ、仲間なんだからちゃんと捜さないと、てこと。もう一度言う、俺はロリコンじゃない。ただ仲間を捜してるだけだ。
「くぅぅぅ…。ぁんぁ…と……。」
彼女は、突然俺の前に現れた。おぉ、幼女のくせになんだこの男の本能を直接くすぐるような声はよぉ…。
「あんた、何者だぁ?」
「私は名月杏だ。お前こそ誰だ?」
「お前、あの辺にいる奴らの仲間かぁ?」
「そうだ。斬と一緒に行動していたのだが…見失ってしまった。」
ざん…?あぁ、多分捜してる奴の名前だな。
「そいつを捜してるのか?」
「そうだ。」
「手伝うぜ。」
「ありがたい。」
不思議な幼女だ。こいつには何かありそうだな。
「見つけたよーー!!」
湖が折れた柱の辺りで叫んだ。磨夏が真っ先に駆けつける。続いて杏が飛んできた。
「「……ッ!?」」
2人の無言の言葉が重なる。斬は目を閉じて倒れていた。全員が柱の側に集まってきた。
…。……。おう、生きてる生きてる。生きてる生きてる。とりあえず安心。気失ったのは疲れてただけだな、多分。
「斬!!」
磨夏のキンとした声が鼓膜を揺らす。
「…皆いたのか。よかったよかった。」
「心配したぞ。生きててよかったな。」
陽響が優しく声をかける。
「心配かけて、ごめん。」
立ち上がってみると、見知らぬ顔が3つあった。
「あの、あなた方は…?」
「おう、見つけてもらったか。俺は里亥凱心。さっき会ってから色々とお前の仲間を助けてらぁ。おい、そっち。自己紹介しなぁ。」
茶髪のロン毛の青年が口を開く。
「俺、町田共輔。凱心の趣味に付き合ってやってるダチだ。」
続いて、ロングヘアーででかいピアスが目立つ背の高い女性が口を開く。
「行贄由美子だよ。よろしく。」
「皆さん、よろしくお願いします。僕は館斬といいます。」
帰り際。陽響にあの金髪の青年達について聞いてみた。
「あの人達、どういう経緯でああなったの?」
「ここに私達が来たらその後勝手にこけに来て、色々と手助けしてもらった。それだけだ。妙に大夢君がなついているのが気になるが。」
「そうなんだ。」
どうやら陽響はあの人達に好感は持っていないようだ。にしても、いい車だ…。三菱トライトンの3.2リッターディーゼルエンジン仕様。フロントのフォグライト付きカンガルーバーがかっこいい。マフラーも変えてるのかな?いつかまた、ちゃんと話したいな。そう考えながら、小高い丘から去った。…最悪の誕生日はこれで終わりだ。




