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地球の裏側、再び

 「痛いじゃないかまったくもう…。」

杏が目を覚ますと、そこは見覚えのある場所だった。

「なっ…!?地球の裏側!?」

なんでこんな所に!?ていうか、斬は?


 おいおい、どういう事だよ…?斬は戸惑っていた。エネルギーブーストしたら、また地球の裏側に来てしまった。どうしよう…。とりあえず、吸血鬼さんの家に行ってみる?いやけど、ここ地球の裏側のどこ?うーん…。またエネルギーブーストしてみっか…けどあれ相当疲れるんだよな…。まぁいい、やれること全部やってみよう。


 私、ノリで飛んできちゃったけど、どうしよ…。自分が斬さんに恩返しをしたいのはわかるよ。わかるけど…なんでこんな事に?斬さん、助けて…。……って、また斬さんに頼ってる。斬さんを助けに来たんでしょ?ああもう…。私ったら、弱いんだから。


 自然に囲まれた場所に不似合いなエンジン音が轟く。と同時に、黒いピックアップトラックが降ってくる。タイヤやサスペンションが軋む音と共に、土煙を吹き上げて停止する。荷台から10数人の少年少女が下り、運転席から金髪の青年が下りてくる。

「んー…。予想通りだな。」

何か知っているような口振りで、青年が言う。

「んで、ここからどうするんですか?」

結菜が聞く。

「んぁ?とにかく探すしかぁねぇだろ?なぁ?」

「そうっすね!」

大夢が答える。いつの間にか青年と意気投合していたようだ。

 しかし、この不良青年の乱入。どうすればいいものか…。陽響は戸惑っていた。口調こそいかにもな不良だが、私達に協力してくれている。本当にどうしたものか…。


 斬は未だに悩んでいた。エネルギーブーストしたら相当疲れるし…。さっき不完全な格好でしたから、自分にもダメージが来てる。もう1発したら、戻れたとしてもぶっ倒れるかもしれないし、最悪戻れないでここで野垂れ死にって可能性もある。どうしよ…。

 実際、斬のダメージは深刻だった。機械兵らを全滅させるほどのエネルギーを不完全な状態で放ったのだから、自分が気を失っていないのが奇跡のようなものだ。

 斬の耳の中で、聞き慣れない車のエンジン音が響く。なんだろ…乗用車ではないな。木々に囲まれていて、周りはよく見えない。だが、声はなぜかよく聞こえた。

「……っすよ!」

大夢だ。大夢の声だ。話し声が聞こえるってことは、皆といるのか?僕を助けに?…なら、やれること全部やるか。斬は、この日2回目の覚悟を決めた。羽根が千切れかけていて飛べないので、木に登っててっぺんから飛び降り、滑空するような形でエネルギーブーストを行う。

「エネルギーブースト!!!!」


 「…斬?」

杏の細い目がはち切れんばかりに見開かれる。それと同時に、光の世界に巻き込まれていった。


 自問自答は、強制的に中断された。探していた、助けるべき人が滑空している。

「…斬さん!!」

喜んでいる自分が忌々しい。だから、私が探しにいって助けるはずだったんでしょ?なんで自分から動けないの?いっつもじゃん。また自問自答が始まりかけたところで、また強制的にそれは中断され、光が辺りに満ち満ち溢れた。


 「…おい!斬だぞ!!」

斬の滑空する姿に気付いたのは南町さんだった。

「あれかぁ、お前らが探してた人は?」

「はい。でも、何をする気なのか…」

陽響が不思議そうに答える。

「あの光…!俺が見たのと同じだ!!」

大夢がそう言うと同時に、辺り一面に金が湧いてきたかのようなまばゆい光が10数人の男女達を包みこんだ。


 斬が周りを見渡す。お、皆いるじゃん。エネルギーブーストも成功しそうだし、めでたしめでたし。光に包まれると、僕は目を閉じてしまった。意識なんてものは元々無かったかのように、自然な状態で。

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