24話【仲間っていいよな。…………仲間っていいよな!】
冒険者登録も済ませ、狼の素材も買取を済ませたという事で俺たち3人はギルドを後にする。
どうせキースはこの間の酒場だろう。
俺達も合流して飯でも食うか。
ところが、ギルドを出てからというもの、エルナが一定の距離を空けて後をついて来ていた。
まぁ、ギルドにいた時から嫌な予感はしていた。
登録料すら払えないわけだからコイツがこれ以上金を持っているとは思えない。
きっと宿代も飯を食う金も無いのだろう。
しばらく無視していたがこのままでは本当に家まで付いてこられてしまう。
そう思った俺はバッと後ろを振り返るとエルナを追い払うため、拒絶の意志を伝えた。
「エルナ…、お前いつまでついてくるつもりだ?」
「う゛ぅ゛……おうちに…泊めてください…。」
「ダメダメ、うちにはもう養わなきゃいけない人間がいっぱいいるの。
うちだって家計が苦しいんだよ!
さっき金借りといてその上、宿までとか厚かましすぎだろ!」
「そ、そんな…、ぐす……ぐす……、そうやって突き放すくらいなら最初から優しくなんてされたくなかった…う゛う゛…期待させるだけさせておいて…こんなのあんまりですよぉ…。」
チッ…なんだコイツ…、ガキのくせにいっちょ前に弄ばれた女みたいなセリフ吐きやがって。
っていうかその優しさがなかったらお前死んでたんだからな?
「ご主人様最低です。
こんな年若い少女の気持ちを弄ぶとは…。」
「なんでお前がそこで擁護するんだよ!弄んでねーよ!」
「……ですが、可哀想です。」
「お前にそんな感情あったのかよ…。
………。俺に……、一回もそんなふうに言ってくれた事ないくせにぃぃィ!!」
思わず感情が昂って声が裏返ってしまった。
俺だって可哀想な目に沢山遭ったりしてるし、なんならお前のせいで可哀想な目にあったこともあるからな?
「それは、なかなかそういった機会に恵まれなかっただけです。」
「恵まれてるよ!!
滅茶苦茶恵まれた環境の中で生活してますけど!?」
「……そうですか。
恵まれた環境で生活出来ているのなら良かったではありませんか。」
「………、………?………!!!
そ、そうじゃねーよ!!
恵まれてるのはお前に可哀想って言われる機会の話であって…恵まれてる生活とは………、あーー!!もう!!ややこしいなぁ!!!」
こいつ俺の事、煙に巻くのだんだん上手くなってないか?
一瞬頭が混乱して上手く返せなくなったんだが。
「とにかくこのようなまだ年若い少女を野宿させるなど、わたくしは看過できません。
それに田舎の街の中とはいえ、冒険者も多いのですよ。
治安も良いとは言いきれないでしょう。」
「まぁそりゃそうだけど…別に一晩くらい平気だろ。
それに治安が悪いのは領主として改善してかなきゃいけないけど、だからってなんで俺が宿の面倒まで…」
なおも渋る俺に対しクラウディアが目を細めた表情で顔を近づけてくる。
「ご主人様は今日、エルナと一緒にギルドに来て、騒ぎを起こしております。
その姿を複数の冒険者達が目撃しておりますし、翌日エルナが痛ましい姿で見つかれば…何らかの疑惑の目がご主人様にも向くかと。」
こいつ…、そんな脅しみたいな事してくる子に育てた覚えはありませんよ!!
少なくとも出会って初めの頃はこんな駆け引きなんてしてくるような奴じゃなかったのに…。
うちのメイドにこんな悪影響を与えたのは一体どこのどいつだ!
……多分、これ俺の影響だと思う…。
「お可哀想に…ご主人様。」
「きぃいぃぃぃぃぃ!!!クソが!!!」
当て付けかよ!!
「とにかく今日のところはエルナを泊めてあげましょう。」
こいつエルナのこと気に入りすぎだろ…。
もちろん治安の問題で一人で放置しておくのは宜しくない。
それはごもっともだ。
でも、それ以上にクラウディア自身の意志を感じる…。
まぁ、実際エルナを気に入る理由も分かる気がする。
エルナは誰にでも人懐っこいし、クラウディアにすら気兼ねしている様子がない。
やたらとリアクションもデカイから助けてもらった時クラウディアに対してカッコイイとか、すごいとか滅茶苦茶褒めまくってたし…。
いや、チョロ過ぎだろ…。
褒められて気持ちよくなっちゃってんじゃねえか。
じゃあ俺も同じように褒めれば…と思ったが多分純粋さのパラメーターが俺とエルナでは天と地ほど違うから、絶対に素直には受け取られないだろうな。
「だ、ダメですかぁ…?お願いしますぅ…」
うるうると涙を浮かべた瞳でこちらを見ている。
「良いのですよ。
私達はこれから酒場へ行きます。
そこで夕食を摂り、今夜は私の家へ泊まってゆきなさい。」
「おい!なんでお前が勝手に…!あとお前家じゃなくて俺の家だから!」
「ですが、ご主人様はエルナを泊めてやる気が無いようでしたので。」
「じゃあ尚の事勝手に言うなよ!ってか泊める気だったし!
俺が許可出そうとしたら勝手にお前が許可出しちゃったの!
流石にエルナが犯罪に巻き込まれたらバツが悪いし…」
「では決まりですね。」
「い、良いんですか!?ホ、ホントに!?
あ……あ゛り゛か゛と゛う゛こ゛さ゛い゛ま゛す゛ぅううう゛!
もう…ダメかと思いましたぁぁぁ…」
安心したのかその場で地面に座り込むエルナ。
顔中ベショベショで涙と鼻水にまみれている。
歳頃の少女がしていい顔じゃないだろ…。
「飯代も出してやるから…そんなに泣くなよ…。」
「ご、ごはんも!!??」
「よろしいのですか?」
「まぁ、俺らだけ食ってて横で物欲しそうな目で見続けられても、食いづらいからな。
気にするな。代金はクラウディアの給金から引いておくから。」
「……………。わかりました。良いでしょう。」
意外とあっさり引き下がるな…。
抵抗するかと思ったのに…。
「う゛…、そう簡単に引き下がられると俺が情のない守銭奴みたいに見えるからやめてくれ…。
わかったよ…、飯代も俺が出すよ…。」
「守銭奴ではないのですか?」
「違うに決まってんだろ!」
コイツは…最近益々俺に対しての敬意というものが感じられない。
これはご主人様として由々しき事態なのでは…?
「いいか!?エルナ!今日だけだからな!?明日以降は自分の食い扶持は自分で探すんだぞ!わかったな!?」
「はい!ありがとうございます!領主様!」
満面の笑みでお礼を言ってくる。
眩しい…、俺にはこういう純粋さが足りないのかも…。
その後、俺達はキースのいるであろう酒場へと向かい一緒に食事を摂った。
キース曰く結局こうなるだろうなと思ったと言われてしまってイマイチ納得いかないまま食事をするのだった。
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翌日になって早速俺達はクエストを受ける。
もちろん今日も今日とて街道の整備だ。
地味だけど仕方ない。
ライオード商会がやって来るまで日にちもあまりないのだ。
ちなみにエルナもちゃっかり着いてきており、一時的に俺とパーティを組み同じクエストを受注している。
正直クラウディアとキースが居れば護衛と警戒は事足りるんだが…。
どうしてもという事で仕方なく許可を出した。
まぁ、Fランクの内は人数毎で補助金が出るわけだし…まぁ良いか。
「とりあえずエルナは何かあった時の戦力として…、一応警戒な。」
街道の障害物の撤去等の作業は俺がやるから、他のメンバーは護衛だけしててくれれば良い。
昨日整備を進めた街道を再び歩いてゆく。
作業が進めば進むほど現場までの移動時間が伸びてつらい。
最終的にはこれ泊まりになったりするんだろうか…?
「あれ?ここ昨日片付けなかったっけ?」
街道を歩いてゆく途中でまたしても街道にはみ出る形で倒れている倒木を発見する。
「あー…、せやな…。
確か昨日はこの辺は綺麗だったはずやで。」
「そうだよな?じゃあまた魔物がやったって事?」
「せやなぁ…、しゃーないわ。
こらまた、なおすしかないなぁ。
きっとこの辺を縄張りにしとる魔物が定期的に巡回しとるんやろ…。
また周り見とくから大将頼むわ。」
その時俺の脳内にまたしてもナイスなアイディアが浮かんできた。
最近の俺は実に冴えている…気がする。
「………ちょっと待った…。
いや、これはやんなくていい。
放置しとこう。」
「は?何言うとんねん。
何のために?ホンマに言ってる意味がわからんねんけど…。」
「もうすぐライオード商会の商隊が来るだろ?」
「んあ?ああ…せやな…」
「商会が来るタイミングに合わせて冒険者雇って一緒に片付けよう。
ただしその時、俺は能力使わないで人力でやる。」
「まさか…大将…あんた……。
なんちゅう…小汚い…」
「汚くねぇだろ!立派な戦略だよ!プレゼンテーションなの!」
「あの〜…ホントにどういう事なんでしょうか…?
出来れば私にもわかるように説明してくださると…」
エルナが遠慮がちに手を挙げ、おずおずと説明を求める。
俺の立案した素晴らしい計画をエルナに説明してやろうと思ったその時だった。
「ご主人様がライオード商会にやってる振りを見せるためですね。
ただのそういったポーズのために、わざわざ街道の障害物を残しておいて商隊が通る際に見せつけるおつもりなんでしょう。」
「ふりじゃねーよ!実際撤去作業とか街道補修は進めてんだろうがよ!
たまたま商隊の皆さんがこの道を通る際に俺達の努力を見掛けたっつーだけの話だろ!
一般の冒険者に混じって汗水垂らして領地のために働く領主…
尊い領地への愛、素晴らしい勤労精神だろうが。」
「えぇ……?それって嘘ついた事になりませんか…?
そういうのあんまり良くないんじゃ…。」
「嘘にはなりまっせーん。
撤去は実際やってまぁーす。
たまたま俺達の努力の様子が見えてしまうだけでぇーす。」
「はぁ…、白々しいわ…何食うて育ったらそんな卑怯なこと思いつくんや…。」
「確かに卑怯かもしれない…。
でも俺には成さなければならない事があるんだ。
俺はこの領地を救いたい、豊かにしたいんだ。
みんな、俺を信じて付いてきてくれないか。」
「今更真面目ぶってそんな事ゆーても無駄やで。」
「いいですかエルナ、普段の言動の結果というのは大事な時にこそ強く影響するものなのです。
普段からきちんとした振る舞いを心掛けるのですよ。」
「せやな。」
「…………。」
気付けば涙が零れていた。
「じゃぁ…、お前らきちんとした振る舞い出来てんのかよ。
お前は完璧なメイドなのか?
炊事、洗濯、掃除。」
「……。それは…」
「泥棒はきちんとした振る舞いなのか!?
倉庫荒らし、不法侵入、密猟、スリ、万引き、詐欺、置き引き、不法就労。」
「多い多い!
なんで俺の項目だけそんな多いねん!」
「うるせぇ!お前がやった事だろうが!!お前の罪を数えてみろよ!!」
「エルナは……!えっと…エルナは……、もうちょっと計画的に動かないと…ダメだぞ?」
「あ、はい。気を付けます。」
「……。」
「……。」
痛いところを突かれたクラウディアとキースが黙り込み気まずい沈黙が生まれる。
「……さぁ、商隊がやってくるまで、日にちがもう残り少なくなっております。先を急ぎましょう。」
「せ…せやな!ほら大将!
姐さんの言う通りやで!
確かにナイスアイディアや!
ここは一旦保留して先を急ごか!」
「…………。」
こいつらマジでさ……。
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俺達は仲間だ。
お互い足りない部分を補い合って生きていこう。
ライオード商会到着まで残り少ない。
俺たちは助け合わなければならない。
やれる事をやっていこう。
俺達は仲間だ。
仲間なんだ。
誰がなんと言おうと。




