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20話【誰が言ったか、じゃなくて何を言ったかが大事だろ!】

自分でクソ能力とか言ってたけど正直でかい木10本近く一気に持ち上げるとか凄くね?

こんなの見せたら普通「うわぁーご主人様すごーい!」とか「一生ついて行きますぅぅう!」とかなるもんなんじゃねーの?

なんで俺部下にダメ出しされて説教されてんの?

そんなにダメだった?

なんか普通にムカつくんですけど。


「大将、ごめんて…。ちょっと言い過ぎたわ。

だって大将の魔術おかしいんやもん…。

ただ、きっかけがな…。」


「もういい…今後この事は口外禁止な?

いいか?俺は生まれ育った村と最愛の恋人を魔物の襲撃によって失い、失意の中、心に深い傷を負い、この力に目覚めたんだ。

………わかったな?」


「んふっ…大将のキャラでそら無理があるやろ。」


「あ!今お前鼻で笑ったな!

だってこれ、ホントの事話したら馬鹿にされるんだろ!?」


「まぁ…バカにされるかどうかは分かりませんが、間違いなく冗談だとは思われるでしょう。」


またコイツらは人の苦労の話を蒸し返してまでバカにしやがって!


「ドラマチックな体験をした奴がそんなに偉いのかよ!!

俺だって大変だったんだ!

人の苦労に優劣を付けるなんて最低なんだぞ!」


「なんや言うてる事だけはご立派で真っ当なんやから…。」


「誰が言ったかじゃなく何を言ったかが大事だろうが!!はぁ…はぁ…」


「まぁまぁ、落ち着きや大将…。

ごめんて、わかった。

もう言わん、言わんから。

堪忍や堪忍!まぁ特異術式のことも自分で言わんかったら大丈夫やから。

大将みたいな年齢のもんが持ってたら普通なんかあったんかとおもて、深堀りなんてせんから。

人の痛みの部分に繋がる可能性もある事なんやからな。」


「そうだな…。俺の心の大きな傷だから。

触れたらダメなんだからな!」


「せ、せやな。今後俺らは触れんから。な?

姐さんも触らんよな?」


「……っ……はい。」


こいつ…一回なんかいらん事言おうとして止めたろ!

ご主人様はメイドの事なんてなんでもお見通しなんだからな!


「わかったよ…、まぁとりあえずやる事はやっちまわないといけないしな…。

ライオード商会来るまでそんなに時間もなさそうだし。」


とりあえず二人から言われた酷い発言の数々は根に持っておくとして仕事は進めなくてはならない。

この分だと、街道沿いにいくつも問題箇所が発生しているはずなのでそこを全部とは言わないが、あれ?アルン周辺の街道きれいになってね?と思われるくらいには掃除しておかないといけないわけだ。


そこからしばらく、岩をどかしたり倒木をどけたり、地面を均したり…。これじゃ俺、重機扱いじゃん。


領主になってこんな土木作業員みたいな仕事させられるとは思わなかった。


「しっかし…、大将そんなにずっと魔術使ってて魔力は切れへんの?」


手伝う素振りすら見せずにキースが草の上に横になったまま俺に問いかける。

まぁ、手伝ってもらうような事も無いから良いんだけどもうちょっと態度どうにかしような?まぁ、良いんだけどさ…。


「ん~?別に何とも。疲れを感じるってのがいまいちわからん。

具体的に魔力切れると、どうなんの?」


「俺は魔術の勉強なんてした事ないから・・・姐さん!助けてください!」


「わたくしも魔術は扱えませんので知識としてだけですが、魔力切れになると、全身の虚脱感、めまい、意識の混濁、そして最悪死にます。」


「え・・・。この作業もうやめていい?

帰ってフライドポテト食べよ?」


「通常は完全に枯渇する前に意識を失いますので、魔力切れで死亡することはほぼありません。

特殊な事情で無理に魔力を消費し続けるようなことでもなければ、まず大丈夫かと。

…それに、ご主人様はまだ魔力切れの予兆など何も感じておられないのですよね?」


「んあ?ま、まぁ・・・今んとこ何にもないな…。

でも、この力ってひたすらゆっくり動かすだけだから魔力一気に持ってかれた〜とかそういうの感じないんだよな…。

もっとも、魔力が持っていかれたみたいな感覚も味わった事ないからそもそもわかんないんだけど…」


「………。特異術式は人によって特性も違いますから何とも言えませんが……ご主人様の魔力量はとんでもなく多いのでは?

ここまでの作業量をこなしていて、なんともないというのは流石に異常でしょうし。」


マジ?これやっぱりチートだったって事なんだろうか。

転生者とか転移者とか魔力量お化けってやっぱありがちな話だしね!


「まぁ、特異術式は特性もそれぞれですからとんでもなく燃費が良くて魔力量自体はたいした事ない可能性も否定出来ませんが。」


「俺を喜ばせたり落ち込ませたりして遊んでない?」


「いえ。」


こいつ、返事が簡素すぎてこういう時の判断が付きづらいんだよ…。


「じゃあさ、結局魔力量ってどうやって測んの?」


「大きい街のギルド等でしたら魔力の量を大まかに測定する装置もありはしますが…簡単なのは他の広く普及した汎用的な魔術を使ってみる事です。

もちろん燃費などには個人差もありますので正確に魔力量を推し量るのは無理ですがある程度の推測くらいは可能かと。」


「おお!じゃあ教えてくれよ!その汎用魔術って奴!」


「私は魔術が使えませんので。」


「………あっそ…。

じゃあ、次の補修現場探しに行くぞ。

キース、今までと同じように先頭で索敵な。」


期待させるだけ期待させておいて肝心な事はなんも分からないんじゃねぇか。

俺のワクワクを返して欲しい。

真面目に聞いて損したわ。


やや気持ちがブルーになりながら次の作業を始めようと歩き始めた時だった。


「おや、こんな所に人の足跡が…。」


「足跡?村人のだろ?」


「いえ、小さな一人分の足跡です。

子供でしょうか?だとすれば、まずいのでは?

ここはもう魔物が出現する可能性の高い区域です。

子供が一人で歩いて良いようなところではありませんよ。

しかも、街道の外の森の方へ入って行ってます。」


「どないしたん?足跡?

んじゃあ、俺が見るわ〜。」


キースがやる気なさそうに話に割って入り、その問題の足跡を見て動きが止まる。


「んー。体重の掛かり方からして子供ではないみたいやけど…多分靴跡の形的に小柄な女やな…多分年齢もだいぶ若いわ。

あっちから来て…ここの前で止まって足踏み?なんやこれ?で…森に入って行って…?

…どないします?

冒険者っぽくはあるけど、前衛職って感じでも無さそうやし…そんなんが一人でここら辺うろつくか?この時点で駆け出し冒険者の臭いがするわ〜…一応様子見に行ったりますか?

この足跡、出来てから全然時間も経ってへんみたいやし。

この感じの女が一人で森の中とか多分危ないやろ。」


「お…、おう…。

ごめん…お前ちょっとキモいぞ…。

なんでそこまでわかんの?ストーカー…?そういう犯罪は良くないって。」


「犯罪とちゃうわ!

コソ泥やってた時に身に付けたんや!

家主とか見張りの情報読み取られへんと上手いこと入り込めんやろ!?

せっかく大将の役に立とうっちゅーのに気ぃ悪い事言うのやめぇや!」


「泥棒は犯罪ですよ。」


「う…、せ、せやけど…。」


ただの胡散臭いコソ泥野郎だと思って実はあんまり期待してなかったけど、こいつちょっと凄いのでは?

思わぬ拾い物をしたようでこれは多少キースの評価を上方修正しなければいけない。

そうなると自動的に俺の相対評価は益々下降していくわけだが…。


「確かにちょっと危なそうではあるな…。

助ける助けないは別にしてまず確認くらいはしておこうか。

大丈夫ならそれでいいし。

クラウディアはこの辺りの魔物なら問題なく対処できる?」


「問題ありません。」


「じゃあ隊列は変えずにキースが先頭ね。

足跡を追跡しつつ気付いた事があったら報告。

確認に行くわけだから急がなくて良い。

安全第一で頼むわ。

クラウディアは何かあった時にすぐカットイン出来るように一応警戒しておいて。

俺は…警戒してもどうにもならんから堂々としとく。」


「はぁ…大将も一応、警戒しといてくれや…。」


キースには呆れられたがしょうがないだろ、俺なんて警戒したところでどうせなんも出来ないんだから。


そのまま3人で森の中のへ分け入り、獣道に残された足跡を追う。

そこからしばらく進んだところで、キースが片手を上げて俺達を制止した。


「あ…これ、アカンかも…。

この子多分戦っとるわ…、で、こっちに逃げて…ってかこの子、魔術師やな…。

これは狼か…いや、パッカーウルフの群れやな…恐らく10匹ちょい…」


確かにキースの視線の先には複数の魔物らしき足跡と件の人物の足跡が入り乱れていた。

そしてその近くには焼け焦げた木の枝が散乱している。

キースはそれらを見て、その人物が恐らく反撃しながら更に森の深くへと逃走を図ったのだと予測したようだ。


「今から急げば多分まだ助けられるわ!

どうする大将!?助けに行くか!?」


と言いながらもキースはもうその場から走り出していた。


「助けに行くか!?とか聞きながらお前、もう走り始めてんじゃねーか!

もちろん助けに行くに決まってんだろ!

お前ら急げ!全力だ!」


と、指示を出した次の瞬間には、クラウディアの肩に担がれ、すごい速度で森の中を移動していた。

まぁ、そりゃそうだな…。

だって俺、絶対2人に追いつけないもん。

魔物のうろつく森の中に1人取り残されて絶対に泣く事になる。


クラウディアの判断は間違っていないが…これ、助けに行った先でその子にこの体勢見られるんでしょ?

恥ずかしいから現場着いたら流石に見られる前に降ろして欲しいかも…。

あと、腹をクラウディアの肩に乗せられ、米俵みたいに後ろ向きで担がれてるから全然前が見えなくて怖い。


現場に着く直前には降ろして貰って、格好付けられるといいなぁ…。

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