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EP 6

黒い太陽の大掃除――劇薬カウンターの創設

昭和15年(1940年)冬。

帝都・首相官邸、総理執務室。

地下監房での赤山天人との「ガラス越しの宣戦布告」から帰還した近衛文麿(若林幸隆)は、深夜にもかかわらず、直ちに東條英機を呼び出していた。

「……東條」

「はっ、ここに」

直立不動で立つ東條の顔は、死人のように青白かった。

自分が赤山に脅され、部下の腐敗を隠蔽してしまったこと。それがすでに幸隆にバレているのではないかという恐怖が、彼の精神を極限まで削り取っていたのだ。

幸隆は、割れたデスクの残骸に足を乗せたまま、冷徹な三白眼で東條を見据えた。

「お前がワシに嘘をついた理由は分かっとる。……部下の不祥事(横領や借金)のリストを、あの地下牢のクソガキに握られたんじゃろうが」

「ッ……!!」

東條は、雷に打たれたように膝から崩れ落ちた。

「そ、総理……! も、申し訳ありません……!! 私は、猟犬としての任務を……ッ!」

「泣き言はええ。ワシはお前を責めとるんじゃない」

幸隆の予想外の言葉に、東條は驚いて顔を上げた。

「人間、誰でも影(弱み)はある。あのクソガキは、お前の部下たちが抱えとった『昭和の貧しさ』や『欲』という見えない隙間に入り込んだだけじゃ。……お前が束ねとる『憲兵隊』という組織が、あまりにもデカくなりすぎたせいでもある」

幸隆は、備前焼の灰皿にタバコを押し付け、ゆっくりと立ち上がった。

「法律を守り、規律を重んじる巨大な組織おもちゃは、あのサイコパスにとっては『ハッキング(洗脳)しやすい格好の的』でしかない。……だから、捨てる」

「す、捨てる、とは……?」

「今日この瞬間をもって、東條英機の管轄下にある『帝都の特別憲兵隊』を、すべて解散パージする」

「なっ……!?」

東條は絶句した。それは、大日本帝國の治安維持の要を自らの手で破壊することに他ならない。

「そして、あのクソガキの『影の内閣』に依存しとる財閥、官僚、軍人を根こそぎ物理的に狩り尽くすための……ワシ直属の、ルール(法律)の通じない『新しい狂犬部隊』を創設する」

幸隆の放つオーラが、部屋の空気を黒く染め上げていく。

「法が邪魔なら法を捨て、組織が腐ったなら組織を壊す。……赤山。お前が『見えないルール』でワシの国を縛るなら、ワシはそのルールごと、ちゃぶ台をひっくり返してやるわ」

   ◆

翌朝。霞が関の各省庁に、激震が走った。

近衛総理の特命により、これまで帝都の治安を担っていた憲兵隊の主力部隊が突如として「満州への配置転換」を命じられ、事実上解体されたのだ。

「一体、どういうことだ!? 東條の部下たちが、ごっそりと帝都から消えたぞ!」

「総理は血迷ったのか……?」

赤山の「影の内閣」に依存していた官僚や財閥の重鎮たちは、この不可解な動きに戸惑った。

だが、彼らに「安堵」の暇は与えられなかった。

その日の昼。

帝都の高級料亭で、赤山の指示通りに『違法な資金逃がし』の密談を行っていた財閥の総帥・郷田の部屋の障子が、一切の躊躇なく蹴り破られた。

「な、何者だ!! 憲兵隊はもう……!」

郷田が叫ぶが、踏み込んできたのは、軍服を着た憲兵ではなかった。

真っ黒なスーツに身を包み、身分証もバッジも一切持たない、目つきの鋭い男たち。

彼らは、無言のまま郷田の護衛を物理的に制圧し、郷田の首根っこを掴み上げた。

「き、貴様ら! 私は大財閥の頭取だぞ! 法律がどうなっているか……!」

ルール? そんなもん、俺たちには関係ねえよ」

黒スーツの男の一人――広島の裏社会で名を馳せ、幸隆が直々に「スカウト」した武闘派の極道――が、ニヤリと笑って郷田の顔面に拳を叩き込んだ。

「俺たちは、総理の『私兵』だ。……てめえらの汚え裏帳簿、全部吐き出してもらうぜ」

そう。幸隆が創設したのは、警察でも憲兵でもない。

軍の規律にも、国家の法律にも縛られない、完全なアウトローたちによる『超法規的特務機関ヤクザ』だった。

合法という盾の裏に隠れていた権力者たちは、法律というルールの存在しない「純粋な暴力」の前に、次々と物理的に狩られ、裏帳簿を奪われていった。

   ◆

「……な、何だと?」

地下の特別監房。

面会室で待っていた赤山の顔から、初めて、完璧なUI(微笑み)が完全に剥がれ落ちた。

彼の元へ、外の顧客(権力者)が一人も来ない。

それどころか、自分が「弱み」を握って洗脳していたはずの看守(憲兵)たちが、一晩にして全員別の部隊(黒スーツの男たち)に入れ替わっていたのだ。

「近衛総理め……! 自身の最強の武力(憲兵隊)を、一切の躊躇なく切り捨てただと!? 自分が作り上げた国家の『治安維持のシステム』を、自ら壊すなど……そんな非合理な真似、計算式にない!!」

赤山の瞳に、明らかな『焦り』が浮かぶ。

彼は、幸隆が「政治家としてのルール」に縛られているからこそ、地下の玉座から余裕で操れると思っていた。

だが、幸隆は違った。彼は、愛する国(月)を守るためなら、自分自身が「無法のバケモノ」になることすら厭わない、最強のチートプレイヤーだったのだ。

「……さあ、掃除の時間じゃ。クソガキ」

面会室のドアが開き。

そこに、ドス黒い覇気を纏い、手には奪い取った『影の内閣の裏帳簿』の束を持った近衛文麿(若林幸隆)が、ゆっくりと姿を現した。

最強の太陽による、逃げ場のない「物理的完全論破」の幕が、今、上がる。

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