494話「地区予選 決勝戦⑥ アルゼェの渇望と絶叫」
オレは妖精王となりシュウウ……とフォースを噴き上げていて、銀髪ロングが逆立ったかのように舞い続けている。
そしてアルゼもまた同じく第三次オーラであるフォースを噴き上げていて、黄金と赤混じりの両翼と逆立った髪を見せている。
相手は霊鳥王であり、別名ガルーダ。
「妖精王やドラゴンの他にもいたなんてな……。驚いたぞ」
「ドラゴンが群を抜いて知名度が高いのが気に入りませんがね……。妖精王も霊鳥王もマイナーな上位生命体ですし」
「オレは気にしないが……」
「それはそうと、あなたが羨ましい。同じ妖精王の彼女がいる」
「え?」
また素っ頓狂になるオレ。
「なんでこっちに同じ霊鳥王の彼女がいないんだよおおおおおおおおッ!!!」
嫉妬、葛藤、嘆き混じりの感情が爆発し、再び周囲に風圧が吹き荒れて煙幕を巻き上げていく。
そしてギロッとオレを睨みつけてくる。
さっきまでの丁重な言動とは打って変わって、粗暴さがあらわになってきたぞ。
「この勝負! 勝って溜飲を下げるとしましょうッ!!!」
感情をあらわにアルゼはそう吠え、軽やかに踊りながら弧を描く剣閃で斬りかかる。
オレは気張って太陽の剣を振るって正面衝突した。
ズゴアッ!!!
前までの衝突とは桁違いに衝撃波が噴き上げられて、タイルの破片が飛び散り、周囲の城壁が瓦解していく。
殺気漲るアルゼの繰り出す剣戟に、オレは戸惑いながらも巧みに捌いていく。
数百数千もの衝突を繰り返すたびに、周囲の城壁が原型を留めないほどに崩れ去り、破片が散乱されていく。
ズゴーン! ドゴーン! ズズズズズ……!!
「行きますッ!! 鶴舞天真流・風輪剣舞!!!」
肘を軸に一回転した振り下ろしの剣撃が迫り、オレは飛び上がる。
空を切って地面に突き刺さった刀で、轟音を伴って大きな亀裂を一直線に裂いた。
「次はッ!! 鶴舞天真流・昇輪剣舞ッ!!!」
今度は肩を軸に一回転したすくい上げるような斬り上げが、滞空中のオレを襲う。
咄嗟に太陽の剣を横薙ぎにして受け止めた。ガッ!
そのまま数十メートルも吹っ飛ばされて、なんとか受身を取って瓦礫を吹き飛ばしながら着地。なおも後方へザザザッと滑っていく。
「むっ!」
「鶴舞天真流・獅子激剣舞!!」
なんとキリモミ回転しながら旋風を引き連れて、こちらへ襲撃してくっぞ。
まさに暴れ狂う獅子が牙を剥きながら食らいつかんと襲って来るかのような剣幕だ。
オレは歯軋りし、太陽の剣を正眼に構えた。カッと眼光を煌めかす。
「流星進撃!!! 二五連星ッ!!!」
爆発するような瞬発力で、同時とも思える一瞬連撃を繰り出す。
それらは流星群のように幾重の剣閃が走って、アルゼのキリモミ回転切りと壮絶な乱打戦に入った。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!!
オレとアルゼが通り過ぎ、その間で衝撃波の噴火が高々と噴き上げられた。
互いに後ろから吹き付けてくる嵐にも涼しい顔をする。そしてカッと振り向き合う。
「サンライト・スパァークッ!!!」
「鶴舞天真流・螺旋轟剣舞ッ!!!」
オレが居合い切りのような最速の横薙ぎ一閃を繰り出すのに対し、アルゼはしなやかな全身を使った螺旋の動きを一太刀に収束した剣閃を繰り出した。
共に渾身の一撃がガッと交差し、周囲に凄まじい衝撃波が荒れ狂った。
ゴゴゴゴゴ……地鳴りが続き、飛び散る破片とともに煙幕が流されていく。
そしてオレとアルゼは離れていて、後ろでザッと着地した。
シュウウ……煙幕が足元を流れた。
「スゲェな……。ジャキガン学院のソージにも負けてねぇな」
「彼女……! 彼女もち許すずまし……!!」
なんか上目遣いでギリギリ歯軋りで睨んでくるアルゼ。オレは引いた。
「な、なんでだよ!? 今は純粋な試合で真っ当な勝負だろ?」
「あんな事やこんな事をしたんですよね……!? 想像するたびに腸煮えくり返ります!」
もう目がイッてる。
イケメンなのに自分が独身童貞なのが耐えられない故に、彼女持ちのオレを前にして本音を隠さずにいられないって事か?
「おまえもモテそうな顔してんのに!!」
「うるさいですよッ!! モテてないから苛立ってますからねッ!! 皮肉なんですか!? ボクはおっぱいも吸った事なあああい!! パンツ食ってなあああい!! 処女を奪ってなあああい!!!」
もろ欲情を叫んでるぞ。
その余波が周囲に轟々と吹き荒れている。
まるで独身童貞に嘆くオオガとカイガンみてーだぞ……。
親戚のタツサダさまもロリに飢えているヤベーやつだったし……。
「なんでこんなヤツばっかだぞ……」
「ふううううううおおおおおおおおおおおおッ!!!」
なんと怒りのあまりクチバシが生え出してきたぞ。
キッと目の敵のように睨んでくると、地面が爆発してアルゼ自身が消えた。
気づけば飛沫を吹き上げながらオレの背後に回っていた。まるで疾風と一体化したかのような速さだ。
「くっ!!」
太陽の剣と左手から伸ばした光の短剣を交差して一太刀を辛うじて止めた。
ギリギリギギギッと鍔迫り合い。
さっきまでとは段違いに強くなってやがる!
再び地面が爆発して掻き消えた。ボッ!!
「左────!」
オレは視線を左に動かした。
瞬間移動のように側面から踊り舞うような剣戟が襲って来る。
荒々しく回転切りを繰り返しながらメッタ斬りしてくるのを、オレは必死に粘って捌き続けていく。
ガッガガガガッガッガガガガガッガッガガガガッガガガガッガッガッ!!!
まるで猛獣だ。血気盛んに食らいつくさんと牙を剥いて苛烈な攻撃を繰り返す。
軽やかな柔軟剣技とは打って変わって、嵐のような獰猛な剣技になってやがる。
まるで別人! 別人格に変わったかのよう! つーかマジでヤバい系ッ!!
「ふうおおおおおおおおおおッ!!!」
肘を軸に一回転斬り、肩を軸に一回転切り、膝を軸に、腰を軸に、回転切りのコンビネーションが凄まじい。
あらゆる関節を利用した回転切りで威力が倍加されているのだ。
そして絶え間なく踊り舞いながら敵を切り刻む。
こちらは一息がつけず防戦一方。嫉妬で怒り狂ってくるのに戸惑いもあるが……。
「ま、まるで怪鳥の襲撃みてぇだぞ!!」
もはや鳥頭で仮面みたいな双眸で、怪鳥人としか見えない。
感情的になると我を忘れるらしいな。
────しかし逆に考えれば冷静に判断できなくなってるとも取れる。
「おっぱああああああああああああああああいッ!!!!」
リアルなおっぱいに渇望するあまり、アルゼは血眼で腹の底から吠えて斬りかかってくる。
オレはカッと見据えた。
太陽の剣を正眼に構える形で、アルゼの一太刀を受け止めた! そして!!
「流星進撃────!!」
「おっぱ!!?」
アルゼは鳥仮面でギョッと見開いた。
「四〇連星ッ!!!」
攻撃一辺倒になっていたアルゼは流星群のような剣戟を全身に受けてしまう。
各部位を粉砕されるような連撃に「お、おっ、ぱぱっ、おぱい、おおッ!!」と呻く。
そのまま吹っ飛ばして城壁にドゴンとめり込ませ、オレは追いついて追撃。
「八〇連星ッ!!!」
更なる流星群の剣閃が容赦なくアルゼを滅多打ち。
筋肉を裂き、骨をも断つような鋭い連撃に「おっぱあああああッ!!!」と絶叫。
その勢いで城壁を木っ端微塵に吹き飛ばし、飛んでいくアルゼはまた城壁に激突めり込み。そこへオレが距離を詰めた。
「一二〇連星────ッ!!!!」
畳み掛けるように渾身の連撃でアルゼを徹底的に叩きのめす。刀さえ粉々にされ、両翼が引き裂かれ、手足が変に曲がり、血塗れのアルゼは「ちちがすいたあッ!!!」と盛大に吐血。
城壁を木っ端微塵にして突き抜けたアルゼは、そのまま次の城壁をいくつもガンガンガン粉砕しながら飛んでいった。
血飛沫を散らし仰向けに沈み、ザザザッとタイル床を滑っていく。
アルゼもさすがに白目で痙攣しながら意識を手放した。シュウウ……!
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ……」
全身にビキビキ軋むような激痛でオレは剣を地面に刺して跪く。
苦い顔で見やると、白目で舌を出したままのアルゼはドンと爆破して棺桶化した。
「許せよ。アルゼェ……」
普通に戦っていたら、まず長引いていただろう。
お互い技が豊富で一進一退の激戦で拮抗するのは避けられなかった。
しかし独身童貞の自分に嘆き、彼女持ちのオレに嫉妬してカッとなったおかげで早々に決着をつけられた。
それはそうと「おっぱい」を絶叫してたのはドン引きしたぞ。
《副将『城路ナッセ』選手の勝ち!!》
「「「わああああああああああああああああああああああああっっ!!!」」」
本物の流星進撃だ、と感激しているようだ。
まさに流星群を連想させる興奮の大技をナマで見れたからか。
トボトボと去っていくアルゼはブツブツと「おっぱいおっぱい……」言い続けていた。大将のガンイはおろか他のメンバーもドン引きしていた。
《レキセーンモサ学院の大将『龍史ガンイ』選手、前へ!》
ザッと立ち上がる。赤髪を逆立てたオールバックの大柄な男だ。筋肉隆々としている。
同じく大将のマイシは「フン!」と漏らすのみ。




