495話「地区予選 決勝戦⑦ 大将ガンイの覚悟」
赤髪オールバックでツンツンに逆立ったガタイのいい男がガンイだ。
しかもマイシの兄ということなのだ。
「さて行くとするか……」
引き締めた双眸で歩き出し、シュパーンと転送されていった。
アニマンガー学院側のベンチでマイシの妹である一年生のナガレは「お兄さん……」と心配そうな顔を見せた。
事情を知らないサラクは「ナッセなら大将も倒すだろうぜ」と言い切り、ミキオは「そうだね」と自信満々に頷く。
エガラは察してかメモ帳にカキカキしている。
そしてガンイはナッセと対峙する。
「あ、おめぇが大将の……!」
「そうだ龍史ガンイだ。聞いていると思うが血縁関係ではマイシの兄になるだろう」
「血縁関係……、じゃあマイシを妹だとは思ってねぇって事か?」
ザッとオレは足を広げて構えていく。
「身から出た錆だ……。確かにマイシがドラゴンの力を発現して、それを恐れた俺は『あいつが身内じゃなければいい』と言ってしまった。今更弁解してもどうしようもない」
「後悔してんのか?」
「口を滑らした時から、な」
「てっきりマイシを嫌って、いつか排除しようと狙っているとばかり思ってたぜ」
ガンイは首を振って、ふうと息をつく。
足元からポコポコとウロコが浮かび上がるドラゴンのオーラが包み始めていく。すっぽり全身を覆うと頭上からツノを象り、尻からは尻尾が伸びる。
オレはそれを見て、マイシと同じ竜王の力だと察した。
「その気だったら、もうとっくにやっている」
前屈みになっていくガンイ。
ズズズズ……とドラゴンオーラの透明度が薄れていって、ウロコがより鮮明に浮かび上がる。ガンイの顔面を覆う竜の頭がくっきり浮かび上がっていく。伸びた口、鋭い牙、鋭い双眸、体表のウロコ。
まるで小さなドラゴンだ。威圧がビリビリ伝わって来る。
「悪いんだけどよ。オレ降参した方がいいのか? 戦う前にオッパイ星人ことアルゼが頼んできたぞ」
「好きにしろ……。今は試合だ」
オレはスウッと妖精王を解き、伸びていた銀髪が元通りに縮んでいく。そして手を挙げた。
「参った!! オレは降参するぞ!」
《ナッセ選手の棄権により、大将『龍史ガンイ』選手の勝ちです!》
「「「「な、な、なにいいいいいいいいいッッ!!!?」」」
観客は騒然とした。おおおおおお……、驚きが広がっていく。
それを尻目に戻ってきたオレはアニマンガー学院側へ歩いていく。
ナガレもポカンとする。
サラクは「なんでだよ!?」と納得が行かなさそう。ミキオは「え? なんで?」と困惑。
憮然としたマイシは「てめぇ……」とこぼす。
「あのオッパイ星人倒すのにムチャしたからな」
「三大奥義の一つも出さずに……舐めやがってし……!」
「そんなワケで、向こうの大将を瞬殺するなり料理するなりしてくれ」
「フン!」
仏頂面で立ち上がって転送魔法陣へ歩いていく。
それをナガレは末妹として息を呑む。兄妹の対決になるのだから……。
《アニマンガー学院の大将『龍史マイシ』選手、前へ!》
転送され、ガンイの前へ現れた。
互い兄妹としてかは分からないが、静かに睨み合っているとも見れる。
「フン! また会ったなし」
「マイシ……」
「きさまには特別に見せてやるし……! かあああああああッ!!」
全身からボウッと地揺るがす激しいエーテルを噴き上げ、更にウロコを模すスパークが迸る。
それに留まらず、更に激しさを増して周囲が激しい振動で蠢き始めていく。
ガンイは「む……!?」と汗を垂らす。
セミロングだった赤髪は竜の両翼を象るように広がって、白いラインが竜の翼の骨を描くように走る。頭上の二本の逆立った髪の毛は四本に増え、それぞれに尖った角を表すような白いラインが走る。
更にマイシの体表にウロコを模したような白いラインが走っていく。そして顔面の頬や顎にも及ぶ。
ガンイは「おお……!」と汗を垂らしながら驚きに満ちていく。
威風堂々とマイシが立ち聳え、全身を覆うフォースからウロコを模すスパークが荒々しく迸る。
神々しくて幻獣でも降り立ったかのような神秘的な輝きを纏う。
「これが最強形態……灼熱の火竜王マイシだし!!」
「ドラゴン○ールに例えると、こっちはまだ超2にもなれてない超○イヤ人に対して、そっちが超サ○ヤ人3って事か……」
「もっとマシな例えを出しやがれし! 特に作者!」メタァ!
ビリビリと伝わって来る強烈な威圧にガンイは気圧される。
ナッセが降参して万全のまま、大将同士の対決にもつれ込めたと思ったら……。
「これでは瞬殺されるな。だが……」
意を決してガンイは包んでいるドラゴンオーラから更に炎のようなオーラをボッと噴き上げて身構えていく。
例え瞬殺されるにしても、チームの砦として最後まで戦い抜こうとする気概だ。
それを察してかマイシは「ち……」と不機嫌になっていく。
このまま一撃でぶちのめしても試合なのだから誰も咎める事もない。
ガンイとしても覚悟はとっくにできている。
「やめだ!!」
なんとマイシがドラゴンフォースをかき消し、元の人間形態に戻ってしまう。
ガンイは見開いていく。
お構いなくマイシは剣の切っ先を突きつけていく。
「単純にドラゴンの力でならひねり潰す事ができるっしょ……。てめぇの言う通り恐れる力だし。このままやれば勘当される前と変わらねぇし……。そんなんであたしが納得いくかし!」
「マイシ……?」
「てめぇもドラゴン形態を解きやがれし! 純粋な剣の勝負で行くぞし!」
ガンイはふうと一息を付いて落ち着かせ、全身を覆うドラゴンの衣を引っ込めていく。
そして剣の切っ先をマイシに向けた。
観客はドヨドヨ……戸惑いが広がっていた。ドラゴンの力をなぜ引っ込めるか分からなかった。
豪快な怪獣合戦みたいにいくかと思っていたが……。
「では……龍史代々伝わる家系技を披露する」
「へっ」
かつて道場で兄ガンイが後継者として父から受け継ぐ為に日々研鑽していた『豪牙秘刀流』……。
もちろんマイシも父から授けられようとしていたが、ドラゴンの力が発現した事でうやむやにされてしまった。
今や、兄だけがその家系技を受け継ぐのみだ。
「行くぞしッ!!」
マイシは大地を爆ぜて間合いを詰めた。
迎え撃つガンイは真剣な眼差しを煌めかし刀を上段に構えた。そして気合いを発する。
「はあッ!!」
マイシの振り下ろす一太刀をガンイは弾く。周囲に爆ぜた風圧が広がった。
それでも好戦的な笑みを浮かべたマイシが乱雑に剣戟を繰り出し、それをガンイは堅実に捌いていく。
ガキッ、キキキッ、キィンッ、ギィッ、ギキィン、ギッギギッ、ガギイ!!
目にも留まらぬ剣戟の応酬。
マイシもガンイも真剣な顔で鋭い剣閃を煌めかす。ガッと刀身が交差する。
ギリギギギ……鍔迫り合いで両者震える。
「さすがだなし……!」
「そちらこそ……我流ながらも荒々しいながらも、やはり天才的な太刀筋は光っている!」
鋭い眼光を煌めかして郁恵の剣閃を煌めかして、けたたましく激突音を鳴り響かせていった。
ガギギギッギギギギッギッギッギンッ、ギンッギギッ、ギギィン!!!
「豪牙秘刀流・猛羅斬ッ!!!」
「火竜王の炸裂剣ッ!!!」
オーラで輝く一太刀に、マイシは『炸裂剣』で対抗。
ズガアアアアンッ!!!
互い渾身の一撃が衝突し合って、爆破が広がって烈風が吹き荒れた。
それでもガンイが間合いを詰め、マイシも第二撃を繰り出さんとする。
「豪牙秘刀流・相羅斬ッ!!!」
ガンイが斬撃を飛ばし、一回転しながら更に二発目の斬撃を放ち、マイシは「グッ!」と剣で受け止める。ビリビリと手に伝わって来る威力。
しかし強引に「かあっ!!」と振り切って弾いてしまう。
「大した妹だ!! 豪牙秘刀流・千羅斬ッ!!!」」
まるでナッセの流星進撃を彷彿させる、幾重に重ねる無数の斬撃が放たれた。
「かあああッ!!! 火竜王のッ、炸裂焔嵐剣ッッ!!」
マイシも炸裂剣の乱打を見舞う。
互い相殺し合ってドガガガガガガッと荒々しい爆破の連鎖が巻き起こっていく。
それでも両者の必死な顔に嬉しそうな笑みが走った。まるでこの時、兄妹として久しぶりに腕試ししているかのようだ……。
それを察して、ナガレは目を潤ませた。
「兄さん、姉さん…………頑張って!」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァッ!!
マイシとガンイが気合いを吠えながら、連撃を繰り出し続けている。
嵐のような爆裂の連鎖と幾重の剣閃が激突し合って、衝撃波の噴火が高々と噴き上げられた。
ドッッ!!!!




