490話「地区予選 決勝戦② 次鋒ツネリの奮起」
フクダリウスを認めた漢として油断なく追い詰めんとするソルジ。
このままでは勝てないと悟ったフクダリウスは新技を出すと宣言した。
「ここに来て新技だと!? 見せてもらおうじゃないか!」
「ああ……。付け加えるならば技と言っていいかどうか分からん。新形態とでも言うべきか……?」
「新形態!?」
ソルジは怪訝な目を見せる。
フクダリウスは多少躊躇いがあったが、拳に握って力み始めた。
「ぬううおおおおおおおおおおおおッ!!!」
するとメリメリ筋肉が膨らみ、赤く変色していくではないか。
体格が更に大きくなっていって、ただでさえ五メートルだったのが倍の十メートルになっていく。
もちろん骨格……いや遺伝子レベルで変化を及ぼしているのかもしれない。
「こ、これは……!? マルスやその両親が見せた『最強形態』なんかとは違う!」
「ええ! まるで巨人になってる!」
オレとヤマミは揃って戦慄した。
マイシの竜王化やコハクの陽快変化やオレたちの変身に限りなく近い種族変化。
「な……なに!?」
ソルジも後しざりするほど、巨人のフクダリウスに気圧される。
図体のデカさだけじゃない。みなぎるオーラは第三次オーラであるフォース。それに伴って威圧感も更に増している。
赤く変色していた体表はやや黒ずんでいる。
憤怒の表情のフクダリウスはフシューッと口から煙が吹く。
「これがワシの『邪威暗闘モード』だ……!!」
「……ッ!!!」
萎縮しそうになるが、戦意を高ぶらせてソルジは戦斧を振りかぶる。
「ならば喰らえーッ!! インパクトバースト!!!」
ソルジが斧を振り下ろし、稲妻みたいなギザギザの斬撃を放つ。一直線とフクダリウスへ直撃して衝撃波が爆ぜた。
しかしフクダリウスは平然と仁王立ちのまま……。
彼が繰り出した技は決して弱くはない。フクダリウスのタイフーンと同等だ。
「なっ!?」
「悪く思うなよ……! 一方的になるかもしれん!」
「く……くっ……!」
フクダリウスが地を蹴ると城壁が吹き飛び、凄まじいスピードでソルジへタックルをかまし、そのままガンガンガンと城壁をいくつも突き破っていく。
暴れるままにフクダリウスは豪腕を振るってソルジを滅多打ちする。
その一撃一撃の度に衝撃波の噴火が噴き上がって周囲の城壁を崩していく。ぱねぇ!
「ふう……」
フクダリウスが退くと、煙幕が晴れていって白目で仰向けになっているソルジが倒れていた。
ドン、と爆散して棺桶化。
《先鋒『武劉フクダリウス』選手の勝ち!!》
項垂れたソルジは「完敗だ……。やはり上には上がいる……」と敵チームへ帰っていった。
彼自身も相当なレベルだと自負して、この決勝へ挑んだつもりだった。
少なくともフクダリウスに辛勝できるくらいが御の字と思っていた。
「やはりアニマンガー学院は底知れぬようじゃな」
「ああ……、これまでのように圧勝はできないと思っていい。負けるかも知れない覚悟で臨んだ方がいい」
「あなたがそう言うほど、かなりって事ね……」
「マイシのいるチームだからな。やはり一筋縄で行かぬか」
マイシを一瞥するガンイ。
噂に聞いたアニマンガー学院はナッセとマイシ二強に限らず、選手の層も厚い。
決勝戦には二年生で構成されるだけあって、本気ということか。
……そして兄ですらない俺がどこまで通用するか!
「ガンイ殿、そう気負いするでない! このわらわが新チームの力を思い知らせてくれようぞ!」
「ツネリ……。あ、ああ! 頼んだ!」
「うむ!」
《レキセーンモサ学院の次鋒『紺古ツネリ』選手、前へ!》
今度は着物を着たツリ目の橙髪ベリショの長身女。
優雅な足取りで転移魔法陣へ踏み込んでシュパーン!
微かに息を切らすフクダリウスを、ツネリは目を細めて前傾姿勢に構えていく。
「あのモードを維持するのは大変だろうな。だがしかし、手加減などせぬぞ!」
ツネリの全身をキツネ色のオーラでボウッと包む。それは妖狐を象っている。ボワボワ炎のような揺らめきを見せる。尻尾が九本フリフリ揺れる。
体にも影響が及んだのか、顔つきが険しくなり牙が伸び、瞳が縦スジになっている。
ただならぬ威圧が溢れてくる。
「わらわは魔獣王『九尾の妖狐』なのじゃ! まだまだ未熟ゆえ、力が足らぬがな」
「むうっ……! オオガとチササがそうだったが……そうか」
「卒業した先輩方を覚えてくれおるとは光栄でありんす。その先輩に応える為に無様な戦いにしたくないぞえ」
タイルを蹴ると爆ぜて破片が飛び散り、ツネリは四つん這いでジグザグ駆け寄ってくる。
「ぬがああああああああッ!!!」
十メートル誇る巨人として大木のような豪腕が唸る。
ツネリは俊敏に、その腕へ飛び乗って顔を目指して走っていきオーラの爪を振るう。
「きえっ!!」
ザキュッ!!!
フクダリウスのほおを鋭く引っ掻くも、掠り傷すら付けられない。
「な、なに!? ノーダメじゃと!?」
「ぬうおおおおッ!!」
咆哮を聞いてツネリはゾクッと戦慄。すぐさま飛び退き、大きな手が空を掴む。
肝を冷やしたツネリは宙返りしながら城壁に降り立つと、サッと駆け出す。
フクダリウスは両腕を振るって、拳の弾幕を降らせる。
ドガガガッガガガガガッガガガッガガガガッガガガガッ!!!
まるで大砲の一斉射撃を受けたかのように城壁がことごとく砕かれていく。
ツネリは苦い顔で素早くかわしていく。紙一重でかわすのが精一杯で、飛び散ってくる破片の弾丸を身に受けていく。
「ぐうッ!!」
マイシのドラゴンオーラと同様、妖狐オーラで守られているがダメージを肩代わりするたびにエネルギー残量がゴリゴリ削られていく。
飛び散る破片ですら機関銃より威力が高いのだ。焦るツネリ。
「があああッ!!!」
吠えたフクダリウスは肘打ちを横薙ぎに振るい、ツネリを捉えてぶっ飛ばし城壁をガンガンガン貫いていく。
果てにズガアアアンッと向こうで飛沫が吹き上げられた。
「あぁ……!」
敵チームが騒然する。
フクダリウスの圧倒的パワーに妖狐さえ歯が立たないのか、と戦々恐々すると同時に、なんとか勝ってくれと願掛けする。
オレもマイシも険しい顔のまま試合の行方を見守る。
「ちょっと、持つのー?」
隣の中堅リョーコが心配そうに振ってきた。
「フクダリウスのあのモードは長く続かない。その前に倒せればいいんだが」
オレはリョーコにそう答える。とはいったものの、ちょい厳しいかな?
同じく察していたマイシは「ちっ……」と舌打ちする。
「リスクを恐れては勝てぬという事かの。ならば……」
煙幕が立ち込める先で、異様に威圧が膨らんでくる。
切羽詰まった顔をしたツネリが姿を現す。全身を覆う妖狐のオーラがズズズズと肥大化。
徐々にオーラが濃密度を増して透明度が薄れていく。
「ううっ……!」
地響きが伝わってきてフクダリウスは戦々恐々していく。
なんとツネリは巨大な九尾の妖狐へ変貌したのだ。十メートル強のフクダリウスにも負けないほどのデカさ。
大きなキツネの魔獣王で、九本の尻尾がたゆたう。
「キュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
全てを震撼させるほどの咆哮がつんざく。
獣じみた獰猛さを見せて、地を蹴る。噛み付かんとするツネリにフクダリウスも豪腕を振るう。
ドッ!!!
噴火のような衝撃波が噴き上がる。
「うぬがあああああああああああッ!!!」
「キュオオオオオオオオオオオオ!!!」
かたや巨神、かたや魔獣王、さながら怪獣合戦のように取っ組み合って周囲に余波が吹き荒れる。
凄まじいフォースが両者から噴き上げてきて周囲の城壁がグワンッと粉々に吹き飛んでいく。
バチッと両者は離れ、今度は殴り合いに発展して打撃音が重く響いてくる。
ドドッ! ガッ! ズゴッ!! ドガッ! ドガガッ!! ズガンッ!!
フクダリウスは新しい形態で因縁の魔獣王を打ち倒さんと全力を尽くし、ツネリも負けるものかと意地を見せて戦い抜かんとする。
「「「どわあああああああああああああああああああっっ!!!」」」
そんな激戦に観客も興奮して大歓声で沸いた。
「はっはーァ! 後輩もやるじゃないかーァ!」
卒業したカレン、オオガ、チササ、ソウタロウがしみじみと試合の行方を見守る。
主戦力が抜けてガタ落ちしていないかと心配していたが杞憂だったようだ。
「だべな。……きっと今後はレキセーンモサ学院を引っ張っていくだな」
「うおおおおおい! 未だ童貞なのはなぜなんだぁ~!!」
「……オオガ、空気を読んでくれ」
オオガだけ自らの童貞に嘆いてて、ソウタロウは呆れる。
フクダリウスが振るった拳でツネリは弾かれ「グッ!」と呻く。
後ろへ滑りながら飛沫を上げていく。ガガガッ!!
「くっ! まだ持つのか……! なら『九尾の殺生弾』でッ!!」
九本の尻尾で囲むようにして光子を集めていく。キュイイイ……!
フクダリウスは激しい息を切らし苦しい顔を見せていた。全身がミシミシ軋んでて激痛が走っている。
もはや限界だ……。




