489話「地区予選 決勝戦① 先鋒ソルジの心意気!」
予選会場はほぼ満席で観客が賑わっていた。
「「「わああああああああああああああああああああああっっ!!!」」」
オレたちアニマンガー学院と、レキセーンモサ学院の決勝が始まるからである。
どっちも優勝候補なので盛り上がるのは間違いなし、ってトコか。
「とはいえ、もうカレン、オオガ、チササ卒業しちゃってるんだよな……」
「ええ」
オレとヤマミは、レキセーンモサ生徒の見知らぬメンバーを見て呟いた。
去年の『仮想対戦・明治魔導聖域』の地区予選で苦戦させられた猛者が一人もいない。
学院限定クラシック大会に出場できるのが二年間だけなので、三年制だろうが四年制だろうが関係ない。
とはいえ、決勝戦まで勝ち上がるほどの実力なのは間違いない。
アニマンガー学院側!!
大将『龍史マイシ』
副将『城路ナッセ』
中堅『小野寺リョーコ』
次鋒『和久モリッカ』
先鋒『武劉フクダリウス』
レキセーンモサ学院側!!
大将『龍史ガンイ』
副将『城門アルゼ』
中堅『範馬サツキ』
次鋒『紺古ツネリ』
先鋒『菜野ソルジ』
マイシはピクッと眉をはね、敵チームの大将に「てめぇは……!」と反応しとる。
ベンチにいるナガレも「あ! 兄がなぜ……!?」と驚く。
そういやマイシとナガレと苗字同じ……。親戚か?
向こうのガンイってやつはマイシを見るなり「フッ」と冷笑してくる。
仲悪いんかな……?
《では決勝戦、試合開始ですっ!! 互いに先鋒前へ!!》
しょっぱなからキャプテンのフクダリウスが先鋒として出てきて、騒然とする。
同じく敵チームからはソルジが不敵に笑みながら歩み寄ってくる。
フクダリウスにも負けない巨躯で筋肉隆々しているのが窺える。歴戦のオーラを感じるぞ。
「いつかは対戦したかったぜ!」
「ではお手柔らかにお願いする……」
二人が転移魔法陣を踏んで、仮想世界へシュパーンと転送された。
見渡せば中世ファンタジーの城塞だ。
万里の長城みたいな城壁路が囲むように入り組んでいて、それぞれ段差が違う。
要塞にしては広大で、先鋒二人が降り立った位置は平原と向こうの山脈が見渡せるところだった。
「まるで異世界へ来たような雰囲気……存分に戦うにはもってこいだ」
「うむ。では……」
フクダリウスはメキメキと筋肉を膨らましていって五メートルもの体格に変貌していく。
そしてソルジも動物でいうサイへ変身していき、筋肉隆々で頑丈そうな皮膚が浮かび出してくる。
ブッキーを柄の長い斧に変えていく。
「わしは『蛮族』……。サイへ変身して幾多もの戦場をくぐり抜けてきた」
「かような者がなぜ学院へ!?」
フクダリウスはザッと大きな戦斧で構えていく。
「これまで生き残ったのは、わしが未熟ながら運に助けられただけに過ぎん。だが、うぬらナッセたちのような本物の英雄は実力でくぐり抜けた。痛感した。初心に帰って入学したのよ!」
ソルジは敷き詰められたタイルを蹴って破片を飛び散らせ、素早い動きで戦斧を降ってくる。
フクダリウスは戦斧を振り上げて互い刃が交差。
凄まじい衝撃音とともに、周囲へ烈風が吹き荒れて振動が建造物を伝わっていく。
「ぬううううううううッ!!!」
力比べとばかりに震えながら互い押し切らんとする。
まさに己の鍛え上げた力量を相手にぶつける純粋な勝負というべきか。
「ぬうおあッ!!!」
「フンヌッ!!!」
力任せに押し切ろうとすると、ガツンと爆ぜるように両者は飛び退く。
苦い顔をし、再び重量任せに得物を振るう。
ガッ! ガガッガッ! ガッ! ガガッ! ガガッ!! ガキッ!!
互い譲らぬ斬り合いで重々しい衝突音を響かせ、その衝撃だけで周囲の城壁や床に亀裂が走っていく。
フクダリウスの振り下ろしを飛び退いてかわすソルジ。
グワンッ!!!
空振りした戦斧が下の城壁を木っ端微塵に爆ぜさせて、断裂してしまう。
普通の人ではジャンプで渡れないくらいパックリ裂かれていたが、両者は人間離れしているので巨躯ながらも平然と飛び回りながらガンガン得物をぶつけ合っていた。
「うぬあああああああッ!!」
今度はサイノが戦斧を振り下ろし、城壁が爆破四散した。
その破片が飛び散るも両者の硬い皮膚を前に弾かれるのみ。そのまま両者は得物を交錯させて攻防の応酬を繰り広げていく。
互いに防ぎ損ねた攻撃が掠って、少しずつダメージを蓄積させていった。
「フクダリウス・タイフーン!!!」
フクダリウスが戦斧を扇風機のように高速回転して、竜巻の光線を放つ。
阻む城壁などを削りながら一直線とソルジへ目指す。
「インパクトバースト!!!」
ソルジが垂直に斧を振り下ろして、稲妻を彷彿させるギザギザの斬撃が一直線と伸びていって竜巻光線と激突した。
ズドゥオッ!!!!
爆心地から凄まじい衝撃波が爆ぜて、周囲の城壁を崩し、余波が押し流していく。
ゴゴゴゴゴ……と地響きが城塞ごと揺らす。
真剣な顔で睨み合うフクダリウスとソルジは息を切らしていく。
「やるな……!」
「ぬしこそ……! やはり入学したのは間違いではなかった! しょせんわしなど井の中の蛙でしかなかったのだ!」
「ソルジ」
「……人の心とは脆いもの。強さに溺れれば慢心し、傲慢にもなりかねない。それがわしは恐ろしいのだ」
ソルジ、ただの猛者ではない。
ただの強さを求めず、己を見返しながら心身を鍛える漢なのだ。
「だがナッセたちを見聞し、己の未熟さを痛感し得たのだっ! むしろ感謝するぞ!!」
真っ直ぐな想いをもって、ソルジは再びタイルを蹴ってフクダリウスへ迫る。
一気に勝負を決めようとする気迫だ。
フクダリウスは迎え撃たんと戦斧を振るうが、ソルジはフェイントを仕掛ける事で敵の斧をタイルに埋めさせた。
「受けてみろーッ!!!」
「ぬうッ!?」
ソルジは軽やかに戦斧を滅茶苦茶に振り回す事で、巨躯のフクダリウスを縦横無尽と宙を舞わせた。
幾重も戦斧で弾き続けてフクダリウス自身を回転させていく。
まるでフクダリウスを手玉に取っているかのようだ。
「マキシマム・ジャイロムーヴ!!!」
「ぐわああああああああああああああああッ!!!」
渾身のソルジが滅茶苦茶に弾きまくって、フクダリウスはなすすべなくジャイロしながら宙を舞うしかない。
最後に上空へ飛ばされ、同時にソルジが飛び上がる。
柄の長い戦斧でフクダリウスを逆さまに抱きかかえるよう極める。ガキイッ!
更に横回転を繰り返し、まるで竜巻が下りてくるかのような急降下する。
「マキシマム・スカイドライバーッ!!!」
ズギャガガガァ!!!!
回転しながらフクダリウスを脳天からタイルに埋めるよう叩き込み、城壁ごと粉砕して地面にまで打ち付けた。
土砂を噴き上げて煙幕が立ち込める。
オレたちは「あぁ……!」と成り行きを見守る。
「終わったか!?」
「ぐ……グフフッ! 流石に効いたわ……!」
「ムウッ!? あの技を喰らって立ち上がるとは……!!」
煙幕の中から頭上から血まみれのフクダリウスが不敵に笑んでいた。
だが、それでもソルジは彼が繰り出す技は既に把握している。そしてその対抗策もある。
フクダリウスサイクロンからツイスタードライバーへ繋げる技もな。
「悪いが、うぬに勝ち目はないぞ!」
ソルジは警告するように言ってのけた。
それでもフクダリウスが繰り出す技を受けて立つ気概である。その上で勝つつもりなのだ。
フクダリウスはフッと自嘲する。
「確かに、これまでの技が通用するぬしではないだろう! どうやら新技を見せるしかあるまいッ!」
「なにいッ!?」
ソルジは戦慄した。
認めた漢だからこそハッタリとは全く思わない。それ故である。




