487話「デススカル学院には女性がいない……?」
準決勝を終えた翌日、またしてもオレたちは喫茶相談を引き受けていた。
ヤマミは冷めた目で腕を組んでいる。
「で、今度は介流トンナイトね。じゃあ奢らせてくれたら聞いてもいいわ」
「ほ……本当ですか!? ぜ、ぜひ!!」
準決勝戦では強者感を出していた褐色イケメンは畏まってペコペコ頭を下げている。
「他人に奢らせていいんか?」
「後ろ見て」
「あ……」
なんか五人ぐらい行列になってるぞ。喫茶店よりオレたちが目当てっぽいな。
トンナイトみたいに電話してではなく、偶然見かけたからウワサの相談役と見て並んだのだろう。
「敢えて奢らせて、相談が無料じゃない事を知らせないとね。腹一杯になったら断れるでしょ?」
「あ、確かに……」
「じゃんじゃん好きなの頼んで」
メニューを渡された。なので遠慮なく色々好きなのを頼んでいく。
トンナイトは引きつって「う……」と漏らす。
勝手に行列してる人もザワザワし始めて「ただじゃないのかー」「ちえー」「快く引き受けてくれるかと」とか漏れ出してきて解散してしまったぞ。
「このまま無料だと、行列長くなっていきそうだからね」
「そりゃそうか……」
チョコパフェを頂きながら納得する。
テーブルにメロンソーダとかコーラとかホットケーキとか並んでる。
「さて始めましょーか」
「うう……、背に腹は変えられんか」
「うめぇ」モグモグ!
介流トンナイト。
デススカル学院のチームメンバーで大将をやっていたが、前話でミナトから部分偶像化で一か八かの攻撃を繰り出されて負けたやつ。
彼は召喚士というクラスで、骸骨剣士を大量に召喚できるスキルを持つ。
オーラを纏う骸骨剣士出してたから、相当な腕前だと窺える。
「あなたたちみたいに強くなるにはどうしたらいいんでしょうか?」
「ってもさ、オレたちは人造人間大侵攻や世界大戦をくぐり抜けてたしな。そうそう体験できるものじゃねぇ」
「『洞窟』の探索は大半の人がやってるしね……」
「そんな……!」
ガーンってくらいにトンナイトはショック受けたぞ。
「チームでは賀市ヤドックが一番強くて、副将を買って出てたんだ。俺はそれなりに強いからとで保険として大将にされてたんだ!」
「そういうわけね……」
「普通に鍛えていっても強くなれるんじゃねぇか? 特訓次第だけどよ」
「……それはそれとして、彼女が欲しい」
なんかキリッとした顔で次の相談を言ってきたぞ。たぶんそれが本題か。
「どういう事なの?」
「デススカル学院は男子校みたいになってるんだー! 絶望的に男しかいねえええええっ!」
絶叫し出すトンナイト。でも待てよ……。
「おいおいおい先鋒で独廊コツネいなかったか?」
死神みたいな黒いローブに仰々しい鎌を持つ美女。
ウチの一年生ミャコと戦って破れはしたが、そこそこ強い創作士だった。
紛れもなく女性だよな……?
「あー、コツネね。そりゃそうか。誰だって女としか見えないもんな」
「「え……?」」
「実は男なんだよ。女装してる。見て分かった。向こうはバレてないと思ってるだろうがな」
オレは脱力した。
まさかの女装だとは……。見た目完全に女としか見えんかった…………。
話を聞くに、何らかの魔法で完璧に女装したら、誰も男だとは思わないとの事。
あんな綺麗な顔でタマチンぶーらぶーらなんだぜ……。
「いいの?? こんなところで?」
「日本橋だったら見られるけど、こんな遠くなら流石にいないだろー」
聞いた事ある声が聞こえたと思ったら、なんと同じデススカル学院チームの二人がカップルとして入ってきたぞ。
面食らって目を丸くするトンナイト。
まさかの独廊コツネ(女装)と翠香ルボーンだぞ。
ルボーンも褐色イケメンで骨の鎧を纏う男。
「お、おまえら……!?」
トンナイトの振るえる声に振り向いてきたコツネとルボーンは笑顔を硬直させた。
たじろいで一歩後ろへ下がる。
「な!? と、トンナイト……さんっ!?」
「なんでこんなトコにいるのよー!」
コツネは確かに女としか思えない言動してる。声高いし信じられんよな。
「コツネ……おめぇ男だろ? 男同士で付き合ってんのか?」
オレのを聞いて、ルボーンはひん剥いてギギギとコツネへ振り向いていく。
コツネは「ヤバッ」と苦い顔してる。
次第にルボーンは怒りに歪んでいって、唇を震わせていく。
あ、これ気づかなかったやつ?
「てめぇ……男だったのか…………!?」
「余計な事を!! なぜ分かっ……、な、ナッセェ!?」
コツネがキッと睨んでくるが、オレがナッセだと分かると愕然とした顔に変わっていった。
あの英雄のナッセだとすると、女装魔法を看破されたと考えても自然な流れだった。
もはやバレてしまったと観念するしかない。
「今まで安くない額を貢いでしまったんだぞ!! 騙したなああー!!」
「女だと勝手に思い込んでたでしょーが!! 頼んでもないのにホイホイ貢いできて、オマケにデートに誘っていい夢見れた?」
「てめぇ!! この野郎っ!!!」
コツネとルボーンで修羅場になったぞ。
ぎぎぎぎ、手を組み合って取っ組み合いだぞ。
するとコツネはボンと膨らんでいって、筋肉隆々でゴツい顔立ちになっていく。
「「「ええっ!!?」」」
誰もがコツネに注視していく。他の客も店員もビックリ仰天だぞ。
オレもヤマミも唖然と口を開けてしまったぞ。
「チッ! 女装魔法が解けちまったか! バレちゃしょうがねーな!」
「おまえ……!!!!」
コツネは大柄なムキムキ男だったのが判明したぞ。
女装魔法とかいう初めて聞く魔法だったが、ヤマミが言うに一時的に女性へ体型を整える見せかけの魔法。
在学中に女装魔法を維持し続け、なおかつ戦っていたんだから、相当な集中力が窺える。
今はバレて動揺したせいでウッカリ解けた模様……。
「お、おどろぇた……! その状態だったらミャコにも勝てたかも知んねぇな……」
「女装魔法にリソース割いてたものね」
ルボーンは悔しい顔で見上げる。
「……学院で言いふらす」
「なっ!? ち、ちょっと待って!! あちこち貢がれてたから、バレたら殺される!!」
「仕方ないだろ。俺みたいに騙されたままの人放っておけないし」
「くっ!! くそ────!!! みんな口封じしてやる────ッ!!」
なんとコツネがこんなところでオーラを噴き上げてきたぞ。ゴゴゴ……!
「オレもか?」
オレが呆れた顔で呟くと、コツネは見開いて硬直……。
ナッセがいる事を失念してた。どうあがいても勝てないのは火を見るより明らかすぎる。
冷や汗タラタラでガタガタ震えていく。まるで宇宙の帝王フリ○ザを相手に恐怖するかのように……。
よっこらしょっと、とオレは席を立つ。
「さて、やる?」
「ごめんなさ────い!!!!」
すぐさまコツネはジャンピング土下座で頭を床に付けた。ビターン!
ルボーンもトンナイトも呆然……。
鶴の一声で呆気なく大人しくなってしまったぞ。ヤマミはため息。
オレに半殺しされるより、バレて半殺しされた方がマシだという事なので、学院で女装を自白して貢いだ分を返金したそう。
その後、どうなったのかはオレも知る由しない。
「なんだかなぁ……」
「世の中驚く事ばっかりね……ホント」
夕日の下でヤマミと一緒に帰っていったとさ。




