482話「乙女プロレスラー紅味クインの悩める恋……」
またまた喫茶相談きたよ。
もはや喫茶店の店員に「ああ、ナッセくんとヤマミさんね」と覚えられてしまう始末。
常連以上に親しみもたれてるから呆れるしかない。
相談役定着されてもな……。
「で、まさか昨日対戦してたチームの人に相談されるとはな……」
「紅味クイン……。中堅やってたやつね」
「はい」
強面の女性レスラーで割と筋肉質。なぜか赤いコスチュームを普段着のように着てる。
普通なら日常的衣服でいいのにな。
ってかキャラとして強調する為に、敢えて普段も個性的な衣服を常時着ているなんてのは漫画あるあるだけどさ……。
ヤマミは腕を組んで冷めた目してる。
「で、なんの相談?」
「……こんな事、他のメンバーに言えないからだけど」
乙女のようにモジモジするクイン。目が泳いでいる。
胸は控えめだけど、まぁどうでもいいか。顔が厳つい。黒チューブトップ美女とは雲泥の差だ。
「コンドリオンって人、素敵じゃない? 殴られて目覚めたの……」
「そう」
「まさかコンドリオンに恋したんか? 告白すれば?」
するとクインは顔を両手で覆って「ウワァ~~!!」と赤面して前屈みになる。
イヤンイヤンと首を振る。
あんなゴツい女性レスラーがそんな事されたら引く……。
「でもね……勇気が出ないの…………」チラッ!
流し目して、可憐な乙女風に赤面。うわぁ……。
「どうせ振られるんじゃないの?」
「ええッ!!?」
ヤマミの遠慮ない言葉にクインは飛び跳ねるように竦む。
「でもでも、まだまだチャンスあるんじゃないかしら? ねぇ? 一度振られたけど……きっと恥ずかしがってるかもしれないし……」
「え? もう告白した…………??」
「帰りの時に引き返してコンドリオンに思いっきりラリアットして告白……」
オレとヤマミは目配せして頷き、スッと二人揃って席を立つ。
クインを通路に立たせて、オレとヤマミで挟み込むように走り合ってラリアットを同時に繰り出す。
ま、ま、まさかぁ────ッ!! この技は────ッ!?
「そりゃ振られるでしょーがっ!!!」
ドゴォ!!!
「ブボォ!!」
オレとヤマミで繰り出し、キ○肉マンでも有名なクロスボンバーがクインに炸裂だァ!!!
クインは目を伸ばし唇を窄めてギャグ顔で吐血。
周りの人たちは「おお~~~~!!」と歓声が上がる。店員さんも目を輝かせた。
なんか拍手が鳴り響く。パチパチパチパチパチ……。
「ぐふ……! き、効きましたわ!」
ヨロヨロになりながら席に着く。
オレもヤマミも周りに「お騒がせしてすみませんでした」と謝ってから、席に戻った。
「コンドリオンはどう振ったんだぞ?」
「うん……。なんか痛めた首をさすりながら苦虫を噛み潰したような顔で「いえ嫌です。すみません」と頭を下げられて、あたし傷ついたわ~!!」
わんわんテーブルに泣きついた。
「いきなりラリアットされて傷ついてるのコンドリオンの方では……?」
「わざとやってるの?」
オレもヤマミも引いてるぞ。もう切り上げて帰りたい……。
「いいえ! お互い体をぶつけ合って気持ちを通わせていくのがプロレスラーの矜持よ!!」
「コンドリオンは別にプロレスラーじゃねぇけどな」
「全く……」
キリッとカッコよく言ってもさぁ……。
ラリアットかまして「好きです」と言われたら、オレだって戸惑うしオッケー言わんわ。
プロレス界隈では当たり前かも知んねぇけどさ。
「やっぱラリアットじゃなく、ボディプレスが良かったかしら?」
「そういう問題じゃないぞ……」
「アホか」
オレもヤマミもジト目するしかない。
するとちょいちょい裾を引っ張られてヤマミに振り向くと、明後日の方へ指さしているのが見える。
その先を見ると、喫茶店の外側の電柱から白銀のマスクマンが覗き見してるのが見えた。
「え……? 聖斗エサレム??」
「うん。副将のやつ」
確か光属性のレスラーで目が凛々しい。でも素顔はゴリラみたいな顔つきでデコが広いブサイクだった。
素顔が割れてからファンがばったり途絶えたらしいやつね。
「じゃあ、どうやって告白すればいいの?」
「いやいやいや振られたんだし、諦めるしかねぇじゃん!」
「ええ~~!! それじゃあたしの気持ちはっ!?」
「そんなの知らないわよ!」
「ズルいっ!! あんたらデキてるのに、あたしだけっ!!」
キイイ~~!! ってハンカチを噛み締めながら、オレたちに僻んできたぞ。
ドン引きしていたが、ため息をついてからキッと見据える。
「コンドリオンはともかく、同じメンバーの人と付き合うとか考えてねぇのか? 同じ創作士のプロレスラーだし」
「う~ん。いないんだよね~」
クインは首を傾げて困った顔をする。
覗き見しているエサレムが「ガーン!」と竦んでいるのが視界の隅で見えた。
ワナワナ震えながら口をパクパクしてて「そんな……ウソだ……」とか呟いてそう。
「エサレムはどうなん?」
「え~? 素顔見たでしょ? ないない! ありえないわ~~! 確かに光属性で金髪綺麗なんだけど顔面が終わってるわ~~!!」
露骨に嫌そうな顔で首を振る。
これまた電柱の影でエサレムが口を大きく開けて「ガガーン!!」と二度ショックを受けていた。
なんか「ううう……」と涙を流して四つん這いになってて、周囲の人々をドン引きさせている。
「ねぇ、聞いた話だと想いを込めた技を繰り出せば美形になれるらしいよ」
「えっ!? ホント!?」
「エサレムとか、そうでなくても気になった他のプロレスラーにガンガンぶちかましてイケメンにすればいいじゃないの?」
するとクインがやけに自信満々の笑みを浮かべてきたぞ。
「なんだあるんじゃねえか。そんなカンタンな方法が……!」
まさかクインが孫○空みたいな顔とポーズでそう言ってくるとは予想外だ。
ヤマミも不気味にニコニコしてる。
オレは引いていたが「か、かもしれねぇぜ……。さっそく試していけよ……」と催促してみる。
「エサレムもなんかイケメンにすればイケそうな気がしてきたわ!! 光属性だし金髪綺麗だったし、試してみる!! ありがとうね!!」
パッと明るい笑顔で立ち上がって、バイバイ手を振って走り去っていく。
と、同時に電柱にいたエサレムは「ぎえええええッ!!!」とギャグ走ですっ飛んで行ったぞ。
わーお……。
「な、なぁ、技で叩きのめしたらイケメンになるってホントか?」
「バカね。ありえないでしょ」
ヤマミはベロ出してスンッとしてる。
後日、エサレムは捕まってガンガン技をぶちかまされて全治数ヶ月のケガを負ったそうな。
これに懲りてストーカー辞めたらしいな。
ちなみに後で明らかになったのだが、エサレムは前々からクインの生活を監視するレベルでストーキングしてた。
カメラ内蔵の家具をプレゼントしたり、夜な夜な忍び込んでバスルームの垢を舐めたり、髪の毛を収集したり、寝ているクインを凝視してハァハァしたりとキモイ行為オンパレード。
でもクインは恐ろしく鈍いので全く気づいていなかったぞ。
「なんだかなぁ……」
オレは苦笑いして、たはは……。




