477話「チューブトップ美女の憂い……」
夏季大会『仮想対戦・甲子園』真っ只中で、オレたちは大阪府の地区予選をしてる。
まずは一回戦突破して、二回戦待ち。
今頃は他の学院が一回戦してるところだろう。
オレとヤマミは諦念ながらも喫茶店で、ある人と向かい合う。
まーだ相談しに来る人いたよ。
別に募集してるワケでも、開設したわけでもねぇのにな……。
「時間取らせてすまない」
相手はなぜか黒いチューブトップ水着の綺麗な黒髪お姉さん。
胸が大きくポロリしそうな感じではある。うおわ……。
麦わら帽子をかぶってて、さっきまで海水浴してて休憩してるみたいな感じだぞ。
「申し遅れました。ミズギキーター学院を卒業した中部都ツプネだよ」
爽やかな笑みで色っぽい。
ヤマミに「見すぎ」とチョップで頭をぺしんと叩かれる。
「それでまさか弔い合戦かしら?」
冷淡な目でヤマミは腕を組む。しかしツプネは苦笑いして「いやいや」と手を振る。
昨日にミズギキーター学院を破って初戦突破したからな。
「確かに観戦はしてたよ。一年生でもあのレベルで凄いじゃん。私が在学中で参加してても勝てなかったね。あれ」
「ツプネさんも創作士……」
「英雄でもなんでもなく、パッとしない平凡なモブさ」
そんなすごい美女なのになぁ、と大きな胸を見ながら思った。
ヤマミのチョップがまたドスン。
「最近さ日本競泳界で懸念されてる事なんだけど……、創作士増えてきてるじゃん?」
「まぁ……」
「そうね。モンスター出没、そして『洞窟』の存在……」
今まではあんまなかったけど、徐々にファンタジー化してるかのように顕著化されている。
それも社会に潜む悪人が魔界オンラインへ強制ログインしてから、急激に環境が変わってきたせいでもある。
善悪の戦いは変わらないだろうが、魔界オンラインのおかげで悪人がモンスターという形で分かりやすく襲ってくる構図となっているってくらいか。
黒チューブトップ巨乳に目が行く。
いやでも本能的に見てしまう。ヤマミにバレないか心配だ。
「創作士が増えるにつれて、日本水泳界は廃れてきているんだよ」
「なんでだ? 変わらずにやればいいんじゃ?」
「一般人と創作士は違うからね」
「あっ!」
ヤマミが指摘して、ハッとした。
「そうだよ。まだ一般人の選手がいるんだよ。でも創作士はレベルが上がれば一気に強くなるし、色々なスキルを覚えるし勝負にならなくなっていくんだよ」
「ああ、そっか……。別々に分けざるを得ないよな……」
「そうだよ」
ツプネは深いため息をつく。
彼女も元々は一般人で純粋に水泳してたんだろうけど、創作士になってから環境がめぐるましく変わったって事かな……。
ツプネが背もたれに背中を預ける際に、黒チューブトップの巨乳による下乳が。うっ……。
「ついに私も創作士になっちゃってさ、他の選手からは卑怯者扱いされて一緒に切磋琢磨できなくなったんだ。でだ、同じ創作士で競技やればいいじゃんと思うだろ?」
「ああ、確かに……」
「でも思ったようにはいかないんだよ。私と同じく創作士の扉を開いた人は普通の競技ではもう収まらないんだよ……。プールが狭すぎる……」
苦悩している感じで額に手を当てている。
一般人はレベル0だから、レベル1になっただけでも身体能力は激変する。
レベル格差がますます広がってしまっては競技にもならない。
「むしろモンスターを狩ったり、仮想対戦でバトルしてた方が割に合うんだろうねぇ……」
戦闘とは関係ない創作士だと『生産型』『芸能型』くらいか。
スポーツ関係は『戦闘型』に部類されるけど、ますます廃れていくばかり。
黒チューブトップの巨乳が動く度に揺れる。あんなに柔らかく……。
「水泳に限らず、他のスポーツも似たような感じだとは思うけどね」
「そうね。テレビでもスポーツ番組減ってるもの」
「そういやそうか……」
テレビ見てっけど、野球とかやらなくなってきたなーと感じてたのある。
創作士レベルだと野球グラウンドは狭くなるだろうなぁ。ストライクかホームランのみの合戦になるだろうと予想つく。
そこまでは想像してなかった。
あと黒チューブトップで覆われた胸の先……。いやいや何考えてんの。
「ホントはさ、あんたらにもスポーツやってもらって新しいの開発していこうって思ってたんだけどね」
「過去形……?」
「ナッセたち有名だから、広告塔がわりになりそうでね。でも利用するみたいでヤメだ」
「それに、私たち卒業したら異世界行くからね……」
ヤマミは目を細める。オレもウンウン頷く。
「今回来たのは愚痴を聞いてもらいたかったってトコかな」
「そこまで深刻な事態になってるとは思わんかったな」
「これも時代って事かしら?」
ツプネは首を振る。
黒チューブトップの巨乳、一度でもいいから揉みてぇ……。いやいやオレのバカ!
「水泳に人生捧げるつもりでやってきたのに、こんな事になって絶望だよ。だからさっきまで学院に通ってたんだよ。卒業しても結局迷いまくりさ」
水泳選手としての苦悩だろうか、彼女なりに必死に新しい道を模索し続けているんだろう。
「オリンピックどうなるんだろ?」
「知らなかったの? 二〇一二年から『仮想対戦・五輪大会』として発足される予定だから」
「えー……」
「もはや『仮想対戦』に侵食されたわね」
「そうさ」
ツプネは諦めたように前かがみになってため息をついた。
黒チューブトップの巨乳がテーブルにムニッと置かれて、その弾力が窺える。
「まぁ、前にも言ったけど水泳だけに限らず、相撲、プロレス、ボクシングなども衰退の道をたどってるからね。こないだ前に創作士が紛れ込んで世界チャンピオンをワンパンした事件起きてたしさ」
「そんな事が……」
「あれをきっかけに、別々にしろと騒ぎ出して空中分解みたいになってるんだよ」
「気の毒だとは思うけど力になれないわ」
世界チャンピオンっても、さすがにクマやライオンには勝てねぇもんな。
世界レベルのアスリートでも一生懸けて鍛えたってオオカミやウマには勝てないだろう。
それだけ一般人と創作士の差に隔てりが大きい。卑怯と取られても仕方ないぞ。
黒チューブトップ巨乳の谷間が情欲そそらせてくる。やばい。
見ないようにしようとしても見たくなってしまう。
「……あんたら二回戦の相手校知ってる?」
「いや」
「プロレスリング学院ね」
ヤマミ知ってた。
「そいつらもプロレス界を追われたんだよ。これまで一緒にやってきた仲間とは別々にされてね」
「そんな……」
「昨年に新しくできた学院さ。私たちミズギキーター学院だって五年前に建ったばかり」
これから対戦する相手校にもそんな事情が……。
創作士としてプロレスを盛り上がるべき、学院を設立して生徒を募って頑張ってるのが想像できる。
時代の波と言っちゃオシマイだけど、彼らにとっては一生の問題だ。
「……こんなんギャグにできねぇや。小話編に収録していい話じゃねぇ」メタァ!
「何メタな事を……」
ヤマミにジト目で呆れられる。
「済まなかったね。けど思う存分話せてスッキリしたさ」
なんか晴れ晴れとした顔で片目ウィンクしてくる。
「普通に競技が無理なら、仮想対戦に倣って仮想競技とか作ればいいんじゃねぇ?」
「え……?」
「だってさ、試合場とか狭いんだったら仮想空間で広いのを用意して……」
「それだ!!!」
ツプネが急にガタンと立ち上がり指差してきたぞ。
さっきまで諦めて淘汰に身を委ねようとしてたのに、やる気に満ちた顔になってきてた。目が燃えている気がする。
「こうしたら、ノンビリしてられないよ!」
元から熱血だったのかメモを取り出してはカキカキする。
あーでもないこーでもない、自分で勝手に色々なアイデアを書き込んでいくのを、オレたちは眺めるしかない。
アイデアをひとしきり纏めた後、巨胸をぽよん揺らして立ち上がって「またね」と手を振って帰っていった。
……やはり黒チューブトップに巨乳は反則だ。悶々する。
「ずっと見てたでしょ」
やっぱバレてた。ヤマミにチョップされて頭上ぺしーん。
ともあれ活路を見いだせてよかったな。




