475話「地区予選 一回戦で苦戦!?」
ついに夏季大会である『仮想対戦・甲子園』でオレたちは地区予選の一回戦で、『ミズギキーター学院』と試合する事になった。
先鋒同士でミキオとカタマデが戦う事になった。
ハイレグを肩にかけて着るほどの大柄変態カタマデは意外と強くて、ミキオがボコボコにされていた。
それを見てたオレは「うー……」と煮え切らない気分だった。
「いいんか?」
「うむ。こらえてくれ」
切羽詰ってフクダリウスに振ると、彼も真剣な顔で最後まで見据えている。
公式試合である以上、どのような結果になろうとも仕方ない。
別に敵選手が卑怯な手を使ったわけでもない。力の差で嬲られた結果になってるだけ。
「さやああああああッ!!!」
一矢を報いようとミキオが奮戦するも、カタマデはしっかり両腕で剣戟を捌いてしまう。
そして逆に回し蹴りを喰らってミキオは宙を舞う。
「さぁトドメだ!! そろそろイカせてもらうぜ!!」
なんとカタマデは宙を舞っているミキオを逆さまにした状態で頭を腕で極めたまま天高く跳躍した。バアア──ン!
はるか空へ舞ってもミキオは意識が朦朧としている。
オレは「やべぇ!!」と声を上げてしまう。
そのまま急落下しながら、カタマデは背中から倒れこむ。
「スカイドロップ・ブレーンバスターッ!!!!」
ダガアァァンッ!!!
砂浜から飛沫を吹き上げて、ミキオは脳天から叩きつけられた。
数十メートルからの垂直落下式ブレーンバスターは強烈な威力だ……。
カタマデがスクッと立ち上がる。
「へっへっへ! もう少し遊びたかったが、残りのヤツらも倒しとかんとなー」
微動だにできないミキオはドンと爆散して棺桶化した。
オレたちは呆然とするしかない。
《先鋒『葉入具カタマデ』選手の勝ち!!》
敵チームは「やったあああああ!!!」と歓喜してた。やっぱ悔しいぞ。
トボトボとミキオが「ごめん負けちゃった……」と歩いてきた。
「いや、力の差があっただろうがよく頑張ったな」
「でぇじょうぶだ。その負けん気はこっちで受け継がれてるさ」
フクダリウスとオレはそう慰めた。
サラクは「仇討ってやるから見ててな!」と、ミキオの背中を優しく叩く。
《アニマンガー学院の次鋒『古鏡サラク』選手、前へ!》
「言われなくても行くさ!!」
既に火がついていたサラクが立ち上がって、仮想世界へ転送した。シュパーン!
砂浜にサラクが現れ、カタマデは「よぉ!」と気軽に手を振ってきた。
「てめぇ! 覚悟しろよ!!」
「へっへっへ! カッカしてるのか? 面白い戦いになりそうだぜ!」
サラクは槍を振りかざしてカタマデへ挑む。
ガガガガッ、ガガガッ、ガッガッガッ、ガガガガガガッ!!!
カタマデを追い詰めるようにサラクは槍を振り回して押していく。
確かにサラクの方がミキオより少し強い。
しかしそれでも力の差はあった。
「……あのハイレグ威力値二万か、三万っぽいな」
「うむ、ワシもそう見てる。まだカタマデは余裕を残している」
オレの言葉にフクダリウスは頷く。
ミキオとサラクの威力値を高く見積もって一万としても勝てねぇ。
それでも強くなった方なんだから、この夏季大会は学院限定クラシック大会だけあって結構レベル高い。
「とうっ!!」
カタマデは振り下ろす肘打ちでサラクを砂浜に叩き落とし、更に拳を振り下ろすが飛び退かれて砂浜へ埋めた。
サラクは槍で連続突きをして、火の矢を乱射する。
しかしカタマデは「スピードアップ!!」とオーラを纏って飛び越えて、サラクの背後へ降りると回し蹴りを決めた。
「ぐうっ!!」
背中を打たれて、吹っ飛ぶも受身を取って苦い顔で「この……!」と槍の先端に光子を集めていく。
キュオオオ……光子が集まって槍が光り輝いていく。
「むっ!?」
「紅蓮火箭掃ッ!!!」
サラクの槍から光線が放たれて、カタマデを飲み込む赤紫の奇妙な業火が獰猛に燃え盛った。
凄まじい熱気が吹き荒れていって周囲がチリチリ乾燥されていく。
「ぐああああああああああああああああーッ!!!!」
カタマデは暴れまわって火炎を跳ね除けようとする。
サラクは息を切らしながら膝をつく。疲労が激しく表情が曇っている。
必死にもがいているカタマデは海へ飛び込んでドボーンと飛沫を吹き上げた。
それでもまとわりつく炎は消えず、溺れるようにカタマデは海面でもがき苦しむ。
「あああああああああああああッッ!!!」
バシャバシャバシャッ!!
「へへっ……ザマァみろ……!」
「このやろおおおおおおっ……!!!!」
カタマデはサラクを睨んで叫ぶ。
燃え盛る赤紫の業火をまとったまま、サラクへ掴みかからんとする。
しかし最後の力を振り絞ったサラクは槍を構えて、渾身の一刺しを放った。
ドッッ!!!
なんとカタマデの腹へ突いた瞬間、爆破が巻き起こったぞ。
これは『炸裂』による威力拡張の基本スキルだ。マイシがよく多用する。
「ぐは……ッ!!」
ハイレグが燃やし尽くされて全裸になったせいもあってか、ダメージが通ったようだ。
白目でカタマデは砂浜へ沈み、轟々燃やし尽くされてドンと棺桶化した。
サラクはハァハァ息を切らして、よろめきながら立ち上がった。
《次鋒『古鏡サラク』選手の勝ち!!》
見ていたミキオは複雑な顔で傾けた。
「うーん、勝ってくれたのは嬉しいけどね……」
オレもフクダリウスも神妙な顔をする。
サラクはカッカしたまま後先考えずに大技を放って辛勝。このまま普通にやりあってたら勝てなかったかもしれないが、一年生としては課題は多い。
今回はたまたま勝ったからいいが、毎回こうだと失敗しかねない。
《ミズギキーター学院の次鋒『引煮ヤセホソ』選手、前へ!》
味方から「がんばれー!!」「相手はもう虫の息だぞ!」と声援を受けて、ビキニを着た痩せぎす男が歩き出していく。タレ目で目尻に隈がある。
一見すればハイレグ男より弱そうに見える。
ハイレグのカタマデは「すまねぇ! やられちまった!」と頭を下げた。
「ふん、いい! こっちで取り返してやる! 安心して見てろ!」
拳を鳴らしたまま、仮想世界へ転送していった。
「ちっ! 勝ち抜き戦だったか! いいよ、やろうか!」
「ふん!」
息を切らしているサラクに、ビキニを着た痩せた男は仏頂面で向かい合う。
ヤセホソは掌を向けるとヴンッと大きな火炎球の『衛星』が生み出される。それは火炎弾をばらまいて斉射してきた。
「ファイヤーブレイズブレッド!!」
「くっ!!」
サラクは横へ飛び、そこへ火炎弾が穿って爆破の連鎖した。
しかし流れるように火炎弾の弾幕が追ってきて、そのままサラクをドガガガンと爆破の連鎖で包んだ。
ドン、と棺桶化の爆発音が聞こえた。
《次鋒『引煮ヤセホソ』選手の勝ち!!》
項垂れたサラクは皮肉るように笑んで「ザマァないぜ……」と戻ってきた。
まさか魔道士とはなー。
ミキオとサラクはしょぼんと座り込む。
《アニマンガー学院の中堅『藻乃柿エガラ』選手、前へ!》
「は、はいっ!」
緊張したままのエガラは立ち上がり、ビクビクしながら前に出て転送されていった。
敵チームは「はははっ! なんだコイツ!」「これなら勝てる!」「あとはフクダリウスとナッセだけだぜ!」と希望を見出しているみたいだった。
まぁ……、そう見られんのも仕方ねぇか。
ヤセホソは両手を挙げて、二つの火炎球を生み出す。
「言っとくが容赦しないぜ!! 次はあのフクダリウスだからな!」
「はい! よろしくお願いします!!」
エガラはペコリと頭を下げる。
そんで両手を広げて漏れ出た渦巻く炎が四羽のハヤブサを象っていく。
今まで見せなかった新しい技なのか!?
「火ハヤブサ行きます!! えーい!!」
一斉に飛び出した四羽の火ハヤブサがビュンビュン襲いかかってきて、ヤセホソは「いっ!?」と見開く。
速い!!
ドガガガガアッ!!!!
容赦のない爆破の連鎖が広がって、見ていた敵チームぽかんと口を開けた。
案の定ヤセホソは爆破四散して棺桶化した。
「あんなんでも威力値五万だからな~」
オレは苦笑いする。
ミキオとサラクはなぜかムスッとした。同じ一年生なのに……。




