474話「地区予選 夏季大会『甲子園』開催!」
二〇一〇年七月三日────……!
ついに夏季大会!
学院限定のクラシック大会『仮想対戦・甲子園』が開かれたぞ!
貸し切りされた仮想対戦センターの大広間で開会式が執り行われた。
オレたちはフクダリウスを筆頭に整列して開会式の挨拶などを聞いていた。他の学院のメンバーも同じく整列している。
優勝候補のレキセーンモサ学院もエンターコミック学院もいるぞ。
「始まるぞ……」
「うん」
ヤマミも強張ったまま頷いてくる。やはりオレも同じく緊張している。
アニメのコスプレしてるチーム、魔法少女(男も含む)だけのチーム、イケメンアイドル系チーム、どう見ても出る大会間違えてないかと思う決闘者チーム、いかにもな黒い三角帽子とローブを着た魔法使いチーム……、大阪府内の専門学院が集っている。
それぞれ真剣な面持ちで整列しているぞ。
恐らく甲子園を目指す創作士どもだ。面構えが違う。
トーナメントの組み合わせを決める為のくじ引きが始まった。
各々の代表となるキャプテンが並んでくじを引いていく。フクダリウスはごつい腕で箱に突っ込む。
すると他の学院メンバーがどよめく。
なんか、戦々恐々してる雰囲気だぞ……。
「アニマンガー学院に当たらないでくれ!」
「頼む!! 来ないでくれ!!」
「……まずいな! まだ……準備が足りない!」
「どこに当たるかは運次第……ッ!」
あれ? オレたちと対戦したくない雰囲気……?
なんかまるで恐れられているよーな。
「えっ!?」
「うわあああああああ!!?」
「マジかよー!!」
フクダリウスが引き当てたクジの数字に、絶叫じみた声が上がっていく。
オレたちと当たったチームが項垂れて泣き始めた。
「あああ……もう終わりだぁ……!」
「おしまいだ!!」
「くっ! 今年は諦めるしか!!」
「……だが、あいつらは今年で最後だ! 来年頑張ろう!!」
「そうだな!!」
「「「おおおおおーっっ!!!」」」
そんな様子に、オレたちは汗を垂らす。ちょっと引く。
ヤマミもジト目で呆れてるぞ。
「私たち、全国大会まで行って優勝してるからね」
「優勝候補だから恐れられているって事か……」
「うん。去年の仮想対戦・明治魔導聖域を見てたらムリもないんじゃない? あなた星獣とか出してたし」
「あー……」
決勝戦で大判振る舞いと星獣召喚してぶっぱしたっけ。
全国大会の一回戦で連覇優勝校を判定勝ちとはいえ、実力で破ってたしな。
「少年漫画の大会編だと、圧倒的な強豪チームに主人公たちが恐れる展開あるけど、今回は逆か……」
「あんたそんな基準で見てたの」
「まぁ、好きで読んでるしな」
「全く……」
無事開会式が終わり、一回戦が始まったぞ!
仮想対戦・明治魔導聖域がチーム戦なら、仮想対戦・甲子園は団体戦だぞ。
なので先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の五人で出て、相手と一人ずつ対戦して勝ち抜いていくという試合方式だ。
最初に当たった学院は『ミズギキーター学院』だぞ。
開会式のクジ引きでオレたちに当たって、絶叫して諦めてたチームだ。
なんと女水着を着た半裸の変態どもだ。
恐らく前々から着慣れてきている者どもだ。面構えが違う。
オレたちは五人並んで、向こうの五人と互い対峙し合う。ザッ!
アニマンガー学院側!!
大将『城路ナッセ』
副将『武劉フクダリウス』
中堅『藻乃柿エガラ』
次鋒『古鏡サラク』
先鋒『清香ミキオ』
ミズギキーター学院側!!
大将『湾泌イース』
副将『協栄ハサム』
中堅『巣食瑞ムメコ』
次鋒『引煮ヤセホソ』
先鋒『葉入具カタマデ』
このメンバーに、他の観戦客は騒然とした。どよどよ……。
なんせアニマンガー学院側に一年生メンバーが含まれていたのだ。
二年生がオレとフクダリウスだけという構成。
「いいのかぞ?」
「うむ」
大将に据えられたオレは汗をかく。フクダリウスは平然と頷く。
……というのも、オレたちが一年生の時は二年生だけで勝手に『仮想対戦・甲子園』へ挑んで初戦敗退したという事態があったからだ。
もしオレたちが参加していたら、結果はだいぶ変わっていただろう。
「えー! ふっざけんじゃないわよー!」
「そうそうッ!」
当時はリョーコとエレナを始め、一部の生徒が不満漏らしてたからな。
というワケで、今年の夏季大会に一年生メンバーを入れる方針になった。
「オレが先鋒でも良かったんだがな」
「そうすると一瞬で試合終わる。それでは一年生の為にならんだろう。我慢してくれ」
腕を組んだままオレは退屈そうに首を傾げた。
フクダリウスいわく、一年生にも参加させて夏季大会を体験させたい。
それが彼らにとっていい勉強になる。
仮に二年生だけで固めた場合、全国大会までストレート優勝してしまうだろう、との事。
《では一回戦、試合開始ですっ!! 互いに先鋒前へ!!》
宣言と共に、先鋒の二人は仮想世界へ転送する魔法陣が光り出してシュパーン!
なんと海辺!? 広い砂地に小波が押し寄せる片方の海!
まさに相手チームにとって自然な環境だ。
《始め!!》
「おしッ!!!」
先鋒として出たミキオはブッキーを手に剣を生成した。
相手はカタマデ。大柄な筋肉質の男。ハイレグを股から肩まで着ているという変態な格好。
「さぁ一年生ちゃん! 安心したぜ~? でも最後にナッセとフクダリウスいるから、悪いが一気に片付けてもらうよ~」
身構えるミキオに対して、悠々と歩いてくるカタマデ。
てっきり二年生だけで固めてくると思って諦めるしかなかったが、二人しかいないならなんとかなると思ってきたのだ。
一年生を蹴散らして、五人総出でナッセとフクダリウスを叩くつもりだ。
「なめないでくれる!? こっちだって火星とか行ったりして強くなってきたからね! ブルーポンド・レインニードル!!」
ミキオは水玉の『衛星』から無数の水トゲを斉射。
カタマデはニッと笑い、アクロバットな動きでひょいひょいかわしていく。砂辺に被弾して水飛沫が四方八方に飛び散る。
「さやああああああああッ!!!」
ミキオはカタマデへ斬りかかる。カタマデは「おっと!」と右腕をかざして受け止めた。
素手なのに硬い、とミキオは苦い顔。
「ハイレグ水着は特殊なオーダーメイドでね、見た目に反して強固なバリアが体表を覆うんだ。鋼鉄の全身鎧を着込んでいるようなものかな?」
「くっ!!」
続いてミキオは激しい剣戟を繰り出し、それをカタマデは徒手空拳で弾いていく。
ガギッガギッ、硬いものをぶつけ合ってるような音がする。
つまり、ただの変態ではない。特殊な水着を着る事で強固な防御力を誇り、尚且つ体術による堅強な打撃を可能とするみたいだ。
「とうっ!!」
カタマデが飛び膝蹴りを喰らわし、ミキオは顎を突かれて吹っ飛ぶ。
宙返りして受身を取って剣をかざす。巨大な水玉が浮かぶ。
「ブルーポンド・ウォータースプラッシュ!!」
水玉の『衛星』をそのまま射出して、カタマデに被弾して大規模に爆ぜて水飛沫が飛び散った。ドパアアアンッ!!
しかしおちょくるようにカタマデは「はーい!」と両足を交差させて、両手を反らさせてバレエみたいなポーズを取って無傷をアピール。
まるでギニ○ー特戦隊のリ○ームみてぇだ。
「へっへっへ! 一年生は大した事がないようだぜ!!」
「くっ! 舐めないでよね!!」
気丈にミキオは身構える。カタマデは力の差を見せつけるように全身からオーラを噴き上げて大地を爆発させて飛び出す。
凄まじいオーラ頭突きがミキオをガツンと吹き飛ばす。
ミキオは数メートル吹っ飛んで砂浜を数度バウンドして、ズザザザッと横たわる。
「うぐ……!」
「おうおう! 割としぶどいなー! とっとと終わらせようか!?」
「さやあああああッ!!!」
奮起して剣戟を繰り出すミキオに、カタマデは余裕な感じで捌ききっていく。
ガガッガガッガガッガッガッガガガッガガッガガガッガッガガガッ!!
激しい攻防の応酬が続いた後、カタマデがフックでミキオを殴り飛ばし、血飛沫が舞う。
さらに追い討ちとカタマデの飛び蹴りがミキオの腹に炸裂して吹っ飛ばす。
「ぐっ!」
モニターで見ていたサラクが「アイツ……!」と怒りを滲ませる。
オレは切羽詰まった顔をする。
「思ったより強ぇえんだな……負けるぞ」
だが、これはれきっとした公式試合。別に侵略してくる敵ではない。




