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472話「ヤマミのお母さんは魔女だった!?」

 ふう……の後、ヤマミと一緒にラブホのベッドでぐっすり寝ていた……。

 心地よく意識が沈み、朧げながらも時間の経過を体感しつつ夢の世界へ入っていった。

 気づけば雲海の孤島にいたぞ。


「え……? ここは??」

「ナッセ??」

「ヤマミ? まさか本物……?」

「ええ」


 まさか一緒に夢の世界へ?


「それよりも……奇妙なところだな」

「うん……」


 キョロキョロ見渡しても、青空と泡を吹く雲海しかない。

 そして踏みしめているのはネモフィラいっぱいの孤島。

 後ろへ振り返ればデカい灯台が聳えている。


「行ってみる?」

「つーか、ここしかねぇからな……」

「うん」


 ヤマミと手を繋いで灯台の大きな扉へ向かうと、勝手に開いてくる。

 誰かいるのか、とヤマミと顔を見合わせていく。

 入るとタイルが敷き詰められた広い空間。見事になにもない。壁伝いに螺旋階段があるだけだ。


「上には何があるんだろうな」

「さぁ?」


 二人で螺旋階段へ踏み入れて、登っていく。等間隔に窓があって日差しがこもれ出ている。

 太陽もないのに明るい青空の世界とか、まるでこの世じゃないみたい……。

 まさか死んだとかないよな??

 特に疲れる事もなく螺旋階段を登りきると、等間隔に柱が建っていて青空と雲海がパノラマで見渡せる部屋に出た。

 灯台のように明かりを放つレンズとかはない。


「あなたは……?」


 一人、床まで長い黒髪の女が背中を向いて佇んでいた。

 くるりと振り向いてきて、オレたちは見開いた。なんとヤマミと同じ目をした背の高い美女だった。

 大人びた雰囲気で妖艶な笑みが艶かしい。


「招待して済みませんねぇ」


 オフショルダーの黒いローブで床まで届いている。

 スラリとした体型で、胸はヤマミより大きい。胸の谷間が窺える。


「あなたは……?」


 ヤマミは怪訝な目で細めていく。

 それにも関わらず黒髪の女はくすくすと笑う。クッキーやアリエルと同じ魔女って事か。


「大きくなったわね。ヤマミ」

「え……? まさか……母さん!?」

「そ、当たり」


 にっこり微笑むヤマミの母さん。

 まさかの彼女の母さんと出会ってしまって、思わず緊張しちゃうぞ。


「表向きは夕夏(ユウカ)シエンミ。実態は魔女。知ってる人は黒の魔女って言うわね」

「な、なぁ? ヤマミのお母さん……ヤミザキの家でいなかったっけ?」

「いない」


 ヤマミは首を振る。

 そういえば母を見た事がなかったかな、と改めて見て思う。


「私と妹のマミエを産んでから亡くなったと聞かされた。記憶は朧げだけど母なのは間違いない」

「最初から父とは二子を生む約束してて、それが済めば自由になるという条件付きでね」

「ヤミザキと……?」

「お父さんと!?」


 いつの間にか丸テーブルがあって、椅子が三つ。その一つに母が座り込んだ。

 クッキーのように無かったものを有りにした?


「……まぁ、ヤマミを産んでおくと奇妙な因果が生まれるの分かってたから、敢えて父と出会ったのよね」

「しかし母さんが魔女とはおどろぇたな……。ウニ魔女クッキーさま知ってっかな?」

「知ってる。二回顔を合わせたわねぇ」


 丸テーブルの上に砂時計に張り付けられたオレとヤマミのフィギュアが置いてある……?

 砂っていうよりは液体で、上に液体が残っているのに落ちてくる様子がない。


「それはなんなの?」


 シエンミはクスリと笑い、ヤマミのフィギュアを手に取る。

 上から下へ撫でるようにサッと手を振ると、上に残っていた液体が下へ流れていく。


 ズオッ!!!


 なんとヤマミから凄まじい威圧が溢れてくる。

 肌にビリビリと感じるほどだ。

 今度は逆に上へ撫でると、液体が上へ戻っていって威圧が収まっていく。


「成長のダムみたいなものね。分かりやすいでしょ?」

「オレとヤマミの……?」

「レベルアップを止めてたわけ?」


 シエンミはにっこり笑う。

 彼女は語った。裏で強さのバランスを操っていたらしい。

 オレたちが並行世界(パラレルワールド)を渡り続けて積み重なっていった成長で、そのまま放っておくと体が耐え切れなくなるので()()めていたらしい。

 そして驚く事に並行世界(パラレルワールド)を認識できていたという。


「今のでちょうどいいと思って、ずっとこんな感じね」


 安定して十万パワーが思い通りに振るえるから、しばらく固定してたらしい。


「ちぇ……何度か四首領(ヨンドン)と戦ってたのに」

「あら? 一時的に上げてた時はあったわよ? 気づかなかったかしら?」

「「え!?」」


 オレとヤマミは目を丸くした。


「さすがに父と戦うの無茶だったからね。手負いとは言え、絶対勝てないからコッソリ上げて善戦させてたのよね」

「じ、じゃあダウートん時も!?」

「最終決戦の最初の方ね。アクトが戦えるまでに」


 そういや不自然にダウートと拮抗するかのように戦えてたっけ。

 主人公補正とかみたいなノリで、なんとか戦えるみたいな感じだったけど……そうだったのか。

 でなければ一撃で沈んでた。


「道理で体が妙に軽い感じはしてた」

「ずっと見てたの?」

「当たり前でしょ。可愛い娘とその素敵なカレシだもの」


 ふふん、と楽しげに笑う。

 思わずオレは赤面する。ずっと見られてたのかな……と恥ずかしく思う。

 あんな事やこんな事も……。つーかさっきまでしてたじゃん。


「現時点で一〇万以上はまだ難しいからね。体が耐えられるように鍛錬を続けて欲しい。あなたたちは異常に成長が早いから自壊して、ここへ来てしまう。異世界へ行けなくなったら困るでしょ?」

「ここって?」

三途界域(アケロン・エリア)……、この世とあの世の中間。ここへ来たらもう戻れないからね」

「「え?」」

「大丈夫よ。今は私の権能で招待しただけだから」


 一瞬ヒヤッとしたぞ。


「あなたたち強くなりすぎると、体壊すし自惚れたりするかもだからね」

「ヤミザキを倒してから、妙に成長しねぇなと思ってたら()()められてたのか……?」

「早い話がインフレしないように止めてたって話ね」メタァ!


 ヤマミのメタいツッコミに母はにっこり。

 あの【第一部】だって、どんどんインフレしてたからな。見境もなくインフレしまくったら四首領(ヨンドン)(笑)とかになると困るから……。メタァ!

 なので小話編は【第二部】の為にインフレを止めていたのだ。メタタァ!

 まぁ【第二部】もだいぶアレになったがな……。メタタタァ!


「わ、分かったぞ……。鍛錬は続けるぞ」

「是非そうしてね。耐えられるレベルまで()()めた分が自然に流れ込むから」


 チラッと見るとマイシ、リョーコなど知ってる人のフィギュアまで並んでいた。

 いつの間にか現れてたから、シエンミの権能かなと思う。


「久しぶりに話せて良かったわ。可愛い娘と素敵なカレシさんと」

「あ、ああ……」

「全く」


 ずっと見守ってたけど、久しぶりに会ってみて話してみたかったって事かな?

 するとスゥ──────ッと白んでいって見えなくなってしまう。



「はっ!?」


 オレは飛び起きた。ヤマミも起き上がってくる。

 気づけばもう翌朝だ。カーテン越しから日差しが明るく照らしてきていた。


「ヤマミのお母さん……?」

「え、ええ……魔女だとは思わなかったけど……」

「今も見てるんかな?」

「たぶんね」


 天井を見上げても、なにも見えない。


「……昨日のエッチも見られてた事に」

「バカ! 言わないで」


 ヤマミは赤面し、そそくさとベッドから這い出てササッと着ていく。

 オレはヤマミの母が脳裏に浮かび、その微笑みが眩しく見えた。


「認めてくれたって事かな……?」


 カレシとして?

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