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470話「邪険モリッカの警告という名のフラグ」

 またもや相談喫茶店……。

 ゲンナリしているオレとヤマミはため息をついていた。ハァ……。


「手間を取らせて済まない」


 相手は邪険モリッカ。超ピーチに変身するやつ。

 飄々(ひょうひょう)しているモリッカとは別人だと思うくらい、殺気を漲らせたような鋭い目つきをしている。

 雰囲気からして人を殺めたのが窺える。平たく言えば殺人鬼。

 彼がなにかしでかさないかと、フクダリウスが監視役として同席している。


「一年生ならいざ知らず、まさか別世界のモリッカが相談しに来るなんてな」

「……最初会ったばかりだったなら、こんな事は無駄と思ってただろう」

「それでなに?」


 腕を組んだヤマミは目を細める。


「地底世界や火星でも一緒に協力してたからこそだ。僕はかつて殺人鬼で、隠れ蓑として教師をやっていた。聖愛(セイハート)戦争が始まってからは血も涙もない奪い合いが行われていた」

「……そっちのオレもその戦いをしてたっけ? そんで死んだ」

「ああ。甘い男だった。だが同時に激情家でもあった。僕が生徒たちを生け贄に捧げようとすると知って激怒して戦いになった」


 オレもそういうのになったらそりゃ怒るか。

 フクダリウスは神妙な顔で黙っている。何か言いたげなのは窺えるが……。


「ここに来るまでは偽善者で愚かなヤツとしか見ていなかった」


 邪険モリッカは鋭くオレを見据えてくる。


「だが、四首領(ヨンドン)にも一目置かれるほどの存在。その上、未来のおまえを見せられては僕もさすがに認めるしかない」

「何が言いてぇんだ? 相談しに来たんだろ?」

「今のおまえにさえ僕は勝てんだろう」


 観念したように目を瞑る邪険モリッカ。


「そこで敢えて質問したい」

「なんだよ?」

「おまえほどの才能と力があるなら、何かを支配したいとか、欲を満たしたいとか考えたりしないのか?」


 邪険モリッカが鋭く切り込むような質問をしてくる。


「……支配?」

「権力を持つとか、気に入った女を服従させるとか、な」

「ええっ!? そんなん考えてねぇよ!」


 両手を振って否定する。

 それでも邪険モリッカはズイと前屈みになる。


「それだけの力があるのだ。威力値十万で、しかも妖精王に変身できる。その上、未だ伸び代がある。大抵のやつは勝てん」

「そういやそうか?」

「おまえは自分で過小評価しているかもしれないが、自覚しろ。それだけの力があるのだ」

「まぁ……自分でもそこそこ強いかなとは思ってるけど……」


 これ相談か? なんか面接しているみてぇだ。

 邪険モリッカは一応教師やってたらしいし、それっぽい事もできるか。


「まったく無欲なヤツめ。普通の人と変わらんではないか」

「いや、欲はあるぞ」


 オレがキッと引き締めると、邪険モリッカは「ほう?」と眉をはねてくる。


「今は在学中だからこれだけど、憧れた異世界へ行くのがオレの欲だ!」

「私と一緒にね」


 すかさずヤマミが付け足す。


「異世界で何をするんだ? 支配して新たな国を作るのか? それともハーレムでも作るか?」

「そんなん興味ねぇよ。……未知の世界ってワクワクしねぇか? オレは見た事もない世界へ踏み入れて、知らないものを知っていきたい」

「子どもみたいだな」

「よく言われるよ。でも好奇心は抑えられねぇからな」


 それが夢だと誇って言える。

 例え子どもじみた夢と言われようとも、知らない世界をこの目でこの耳で見聞していきたいんだ。

 漫画やアニメの世界でしかないファンタジー的な世界を、この足で踏み入れたい。

 その為にも、この並行世界(パラレルワールド)まではるばるやってきたんだからな。


「その目、純粋すぎるな……。(よこしま)など窺えない透き通った心が想像できる」

「エッチなのには興味あるけどな……」

「どうせイチャラブ的な純愛エッチに決まっている。緊縛したり殴ったり糞をかけたりするとかディープなのは嫌なんだろう?」

「うへぇ……。見透かされてら…………」


 本当はロリコンだけど、まぁイチャラブ系しか考えてねぇし。


(よこしま)な念を含むヤマミがいるからこそ、二人でバランスが成り立っているというわけか」

「一言多いわよ」


 ヤマミがギロッと睨む。


「もはや僕はおまえを愚か者と見ない。一人前の立派な創作士(クリエイター)だ」


 邪険モリッカは見下すとかバカにしたりとかじゃなく、対等の鋭い目でオレを見ている。

 何を思って、わざわざこんな事を言ってきたかしらねーけどさ……。

 あっちでそっちのオレと(いさか)いあったから、色々思う事があるかもしれない。


「それとヤマミに聞きたい事がある」

「なに?」

「……例の『復讐者(アヴェンジャー)』と一緒にいたりとかないか?」

「ないわよ」


 ヤマミは冷めた目で答える。

 何言ってるか知らんけど、向こうのヤマミには仲間がいるって事か??


「その『復讐者(アヴェンジャー)』は誰なの?」

「ここのヤマミはだいぶ違うようだな。違いがあるとすればナッセに傾倒しているぐらいか」

「答える気はないと解釈していいかしら?」

「落ち着け。僕の知っているヤマミは『復讐者(アヴェンジャー)』を絶対服従させて共に戦っていた」


 あー、サーヴァント従えて戦争してる物語に酷似してるな。

 聖愛(セイハート)戦争とか言ってたぐらいだし。


「もしかしたら生きているかもしれない」


 オレとヤマミは僅かに見開く。

 腕を組んで黙ったままのフクダリウスも気になってチラッと見やる。


「消滅したが、四首領(ヨンドン)叡智(えいち)”ノーヴェンが生きていたのは聞いている。ならば僕らの世界のヤマミも生存している可能性があってもおかしくない。気をつけろ」

「「え?」」


 邪険モリッカはますます鋭い目を見せる。


「利害が一致して日輪ナッセと協力する事もあったが、基本敵だ。特に『復讐者(アヴェンジャー)』はおまえを殺そうとしていた」

「え……!?」


 ざわ……緊迫する。

 思わずヤマミを見やると、ジト目で見てきた。そりゃ敵対するワケねーもん。


「理由はなんだよ?」

「僕はあくまで奪い合いの一人でしかないから事情は知らんが、ヤマミの『復讐者(アヴェンジャー)』はおまえを目の敵にしているようだった。日輪ナッセ本人も理由が分からなかったようだがな」

「ワケ分かんねぇ……」

「もはや聖愛(セイハート)戦争はないようだから、そんな事はないかもしれんが」


 聖愛(セイハート)の奪い合いさえなければ、殺し合う必要はない。

 もしヤマミと『復讐者(アヴェンジャー)』が生きていたとしても、オレを殺す理由はないはずである。


「で、相談はないの?」


 呆れたヤマミがジト目で鋭く言う。


「ああ。話をしに来ただけだ。警告もした。僕はもう無益な殺人はしない」

「有益であっても殺すな」


 フクダリウスが呆れながら突っ込む。

 とりあえずパフェとか注文したやつを黙々と頂いて、解散したぞ。

 邪険モリッカはブラックコーヒーを一〇〇杯も頂いてて、フクダリウスに呆れられていた。

 あの様子だと邪険モリッカは敵対してこないだろう。


 オレとヤマミはマンションへ帰るてがら、橙に滲む空を見上げる。


「なんかフラグ立ててる気がする」

「まぁ、いつものの事だけどね……」


 ヤマミはヤマミで、向こうの自分がいずれ出てくるのではないかと神妙な顔をしている。

 だって日輪ナッセはリョーコと恋仲っぽいし、気にもなるよな。


「全ての並行世界(パラレルワールド)でナッセとヤマミがくっつくべきだわ……」ブツブツ……。


 ボソ呟いてたのを聞いてしまい、青ざめて聞かないフリする事にした。

 独占欲やばい。

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