468話「大魔剣ウェクサ編⑭ 金星の昼夜は長い……」
大乱闘があった翌日、アレクシことロックマンは正座させられて俯いていた。
ヤマミは腕を組んで冷めた目で見下ろす。
「なに勝手抜け出して、余計なトラブル起こしてんの!?」
うーん。アレクシなりに、なんとかしようとしてたんかな……? 庇うか。
「いや、ダブエクシとかもそうだが、オカマサとドラゴリラが乱入してきたせいもあるし……」
「バカね。アレクシが返り討ちにあったら大魔剣の生け贄にされてたトコよ?」
「う、まぁ……」
アレクシ単独でやってたら狂信者に狩られてた恐れもあるしな。
たまたま兄のダブエクシと出くわし、オカマサとドラゴリラこと電魔剣サダソドと火魔斧フアックレイが乱入してきたから、事なきを得ただけに過ぎない。
一応ヤマミの小人がロックマンについてたんだけど、オレたちは聖剣団と色々話ししてた最中だしな。
何事もなくて良かった……。
「ともかく覇魔剣ダイスドナが父で、破魔剣ダブエクシが兄だろ?」
「う、うん! 驚きましたよー!!」
「人間の頭に刺してる時点で極悪ブキなんでしょうが、弟のアレクシは無関係なブキとして平穏に暮らさせたかったって事よね……」
「なんとかできませんか!?」
アレクシはガバッとオレに縋り付いてくる。
ロックマンの頭上に刺しているアレクシ本体……。そしていざとなれば写し身の光の剣を生成して戦える才能がある。
ダブエクシの話が本当なら、生成する技術は相当困難らしい。
「要するに大魔剣ウェクサを倒せりゃいいんだっけか?」
「ええっ!? 四〇〇〇年前から生きてた不死身の大魔剣ですよっ!?」
「元凶なんでしょ? そいつさえ倒せれば終わりじゃない?」
「カンタンに言わないでくださいよ~!」
オレはふと思った。金星のブキは、通常の金属で作られた武器よか頑丈っぽい。
「なぁ、ブキ族ってどんくらい生きるんだ??」
「え? う~ん、そうですね~。地球時間にしたら四〇〇年ですかね?」
「すごっ!?」
「えー!」
オレもヤマミも驚く。
「あ、ちなみにボクは六〇歳です。まだまだ若いですが!」
オレたちより年上やんけ! つかそれだと人に例えると十五歳ぐらい??
武器そっくりのブキだから、そりゃ長生きしそうではあるが……。
金星人の寿命パネェ!
「父は一四〇歳で、兄貴は八四歳のはずです!」
「おどろぇた…………長生きすんのな」
「いえ! 地球と違って金星は一年が短いですからね!」
「それ抜きでも、やっぱ長生きしすぎだろ」
金星の一年は二二五日、実は自転が二四三日で一日よりも早い奇妙な環境だ。
どっちを基準に日数の目安にしてるか分かんねぇな。
単純計算、金星人の寿命は四〇〇年でもあり、四〇〇日でもあるわけだろ?
「まぁ地球の昼夜が早すぎるからねぇ~。いつ寝ていいか分からんのです」
「……ブキ族も寝れるのか?? ずっと起きっぱだったが?」
「当たり前じゃないですか! 夜はちゃんと寝ますよ? 我々ブキ族はロックマンや地面に刺して寝るんです。昼は地球時間で言えば約四ヶ月近くですかね」
「その計算だと金星の昼は一二〇日未満か?」
「起きてる時間はヒト族と同様もっと長いですからね~。地球の昼夜早すぎて困惑してたくらいですし」
そもそもカラダの作りがまるで違うから、極端な一日による寝起きの時間が長くても問題ないかもしれない。
つーか半年寝て、半年起きるようなもんか。
「ふあ~あ……」
「どうした? まさか眠いのか?」
「全く地球ってば、金星の昼夜と違って分かりにくいから寝起きのタイミング測れないんですよね~」
アレクシは動きが緩慢になっていって、ロックマンが腰を下ろしていく。
「待て待てっ!! ここで寝るなっつーに!!」
「うう……寝過ごしたかもしれません……、もう眠気が限界突破してますぅ~……」
なんかウトウトしてきてる!
「待て! 答えろ! どんくらい寝るんだ!?」
「むにゃ……」
「最低でも五〇日以上は寝るんじゃないかしら……?」
「えぇ……」
アレクシ横になって動かなくなり、熟睡してるのが分かる。スヤァ……。
「ああ、もうそんな時間だったか。眠いわけだ」
「そうね……おやすみ……」
「僕も…………」
氷魔鎚アスマハーと岩魔杖アンドースと闇魔弓ダクボーウも寝た。
「済まん……これ以上は起きてられない……スヤァ……」
「お、おいおい!?」
獄魔剣ヘルビルまで寝た。
こうして見ると意志を持たない武器にも見えちまう。全く微動だにしない。
オレたちは呆然するしかない。
睡眠は生物の生態上、避けられないものである。
永遠に起きていられる生物はいないんじゃないか?
「「はっ!!」」
オレとヤマミはバックに電撃が走るほど閃いた。
恐る恐る顔を見合わせていく。
「……もしかしたら大魔剣ウェクサも??」
「ありえるんじゃない?」
一方、大魔剣ウェクサとその狂信者が隠れ家にしている洞窟内……。
覇魔剣ダイスドナは真剣な目で、整列している狂信者に向かい合っていた。
「もうそろそろ就寝の時間だ。各自、夜ふかしせず体を休めておけ! 器も厳重に保存しておくのも忘れるな!」
「「「「ハハッ!!!!」」」」
狂信者たちは頭を下げ、ぞろぞろとグループごとに各自の穴蔵へ戻っていった。
それぞれ人間に寄生したまま横になり、ビキビキと直方体の水晶で覆い、更に封印式の『刻印』がズズズズ……と走っていく。
そして静寂……。まるで水晶の棺がびっしり並べられているかのようだ。
ちゃんと寝たか見回りが済むと、二人は大魔剣の前に戻ってくる。
覇魔剣ダイスドナはため息をついた。
「ダブエクシ! おまえのおかげで任務を断念せざるを得なかったんだぞ!」
「す、すみません……。弟がいるとは思わなくて」
「まぁいい。アレクシの事は起きた後で考えよう。今は寝るがいい。朝は早いぞ」
「……はい!」
覇魔剣ダイスドナと破魔剣ダブエクシは大魔剣ウェクサへ向き直る。
「大魔剣ウェクサさま……、これより睡眠の時間をとります」
《うむ……。よかろう。だが起きたら迅速に作戦を実行せよ! 我が復活は目前なのだからなッ!!》
「肝に銘じておきます」
二人は丁重に跪いた。
《それでは我も眠るとしよう……。スヤァ……》
「「おやすみなさいませ……大魔剣さま」」
《ZZZ……》
覇魔剣ダイスドナは不敵な笑みを浮かべる。
「フフフ……、晩が明けた時こそ大魔剣ウェクサは復活するであろう! 地球人どもよ震えて待つがいい! ほんの一晩だけの命にすぎんがな!」




