464話「大魔剣ウェクサ編⑩ 追っ手どもを返り討ち!」
マンションへ帰った時、部屋でくつろいでいるアレクシに獄魔剣ヘルビルを直接見せて、本物の極悪ブキ武団がいる事を教えたら「ぎょえ~~~~!!」とロックマンごと驚かれたぞ。
「だっ、大魔剣ウェクサ……ッ!? 大昔の伝説ではなかったんですか~~!?」
「伝説ではない。だが他のブキを吸収して命を延ばす力を秘めているのだ。例え宝玉を割られたとしても、粉々に砕かれても、長い時間をかけて蘇られるのだ……」
鈴の効果がまだ残っているらしい獄魔剣ヘルビルはそう語ってくれた。
いつかは極悪ブキへ戻るんだろうが、吐かせるだけ吐かせておきたいので口封じはオフのまま。
「組織の構成員が思ったより多い。例のなんちゃって武団よか凶悪だ」
「ああ……。しかも感知タイプが三本ほど、サーチタイプが一本、だからこちらの聖剣魔剣の位置を把握できる。どこへ逃げても必ず突き止めてしまうのだ」
「感知タイプのブキはどんなものなの?」
「半径三キロを『察知』できる邪翼剣ネルピトフ。私にも付けられた『刻印』で位置を把握できる魔鎖鎌アンロメダ。敵愾心があるかどうか分かってしまう戯魔鞭クロモリウィ。サーチのヤツは特定のモノを媒介にして距離制限なく映像として映し出せる魔晶玉ウナイバラ……、それらがある限り我らはこれまでの困難を越えてきたのだ」
獄魔剣ヘルビルにも『刻印』があるから、敵にはバレてる!?
「ここも分かっちまうのか!?」
「ああ……、直に襲撃が来ると思う。気をつけるんだな」
「大丈夫よ。私が消したもの」
「え!?」「ええ!?」「えっ!?」
ヤマミが獄魔剣ヘルビルを指差している。
「妙な『刻印』があったから、とりあえず消しておいたわ」
「ああそっか。ヤミザキの『刻印』を消したのと同じように!?」
「そ」
ヤマミが片目ウィンクしてくる。
「……だが、この私をみすみす生かすヤツらではない。きさまらへの襲撃が失敗し、ブキも回収できなかった無能を見逃すほど優しくない」
「いつかは襲撃が来るって事か……」
「そうだ。ハンマー、杖、弓がサーチされてるから、どの道避けられん」
「ピンポイントで襲撃してきたものね」
「いかに英雄ナッセといえども、気を抜けば殺される。ヤツらは手段を選ばん」
オレは目をつむって一キロほどの『察知』を広げた。
大勢の人々は無視。こいつら頭に刺してるフードの男とその殺気を目安に探す。
ビシッと指差す。
「オレを正面として十時の方向から狂信者が六人向かってきてる。屋根伝いに飛び移って移動中。いずれも手練の連中だぞ」
「きさまも感知タイプだったのか……!」
「えええっ!? マジでヤバいのくるんですか~~!?」
アレクシはビビってる。魔剣武団を一人で捕まえに地球へ来た度胸はどこいったんだよ。
とはいえ本物の凶悪ブキ武団は金星でも恐れられている。
さっき獄魔剣ヘルビルが自白したように、きっちり組織が機能してる連中だ。
「アレクシはここにいろ。オレたちは外へ出る。マンションで暴れられるワケにはいかんからな」
「はいい~!! いい剣してますう~~!!」
オレとヤマミは立ち上がり、ビビってるアレクシを尻目に部屋を出た。
マンションから出て、被害が出ないような場所へ歩いていく。
近くの川辺が広そうだ。
「付いてきてる?」
「ああ、全員こっちに方向を変えてきたぞ。やっぱ狙いこっちか」
「私の『刻印』がない以上、やはりハンマー、杖、弓を対象にして追っかけているらしいな」
獄魔剣ヘルビル自身もそうだったように、紛い物の武団でも生け贄にできるから追っかけている可能性あるな。
最初の襲撃だって「そいつを渡せ」って要求してきたし。
恐らくだが、獄魔剣ヘルビルと惨魔剣ジドブェノが返り討ちにあうほどのハンマー、杖、弓って認識かもしれん。
オレは獄魔剣ヘルビルを懐に戻し、ハンマーを手に取る。
「氷魔鎚アスマハー頼むぞ」
「えっ!? なんで?? 獄魔剣ヘルビルで戦うのではないのか?」
「……最初はそのつもりだったんだが、まだヤツらを欺いておきたいからな」
「私も岩魔杖アンドースで戦うわ」
「ヤマミさん、よろしくね……」
ヤマミに杖がお辞儀する。それを見てハンマーもグッと引き締めた気がした。
「わ、分かった……。ナッセさん、頼みます」
「ああ」
ハンマーはオレの武器として覚悟を決めてくれたようだ。
ヤマミの杖も同じく。
「そこの二本、待て!!」
広い川辺で、蛇行する道と草原が広がっているところで足を止めた。
六人のフード男がザッと目の前に立ちはだかった。
「もはや逃げられんぞっ!!」
「我々が追いかけている事に気づいていたか?」
「ああ。追ってくるのは分かっていたぞ。だが、この魔剣武団ウェクサを舐めるなよ! 小物集団!」
「ちょっ、挑発しちゃった……」
ハンマーを突き出して強気に出たら、ボソッとビビリ声が漏れた。
「そう、今度はあなたたちの番よ……。大魔剣ウェクサの動向など分かってたんだから」
ヤマミも杖をかざして、岩魔杖アンドースのフリしている。
「ほう、なかなか強い体を得たようだな。だからか、返り討ちにできたのは……」
「小物集団がここまでやるとは、ヤツら侮ったか?」
「信じられんな。あの獄魔剣ヘルビルと惨魔剣ジドブェノが敗れるとはな」
「刺客として確実に始末してきた、あの獄魔剣ヘルビルと惨魔剣ジドブェノが小物集団ごときにやられるとはな」
「どの道、きさまらは生け贄になってもらう!」
「今度はこの人数だ! きさまらエセ魔剣武団ごときが勝てると思うな!」
あ、こいつらナッセを知らねぇな。
まぁ獄魔剣ヘルビルと惨魔剣ジドブェノも知らずに襲撃してたし、そこまで情報ねぇんだな。
「フン、この魔剣武団ウェクサが狂信者どもに負けるとでも?」
「いい体を持っただけでいい気になるな!! ガキどもッ!! この凶魔大剣マスビッグさまが始末してやるぞッ!!」
ばさっとフードが剥がれて、大剣を頭に刺しているツーブロックの褐色大男が漆黒の大剣を生成して襲いかかってくる。
まずはお手並み拝見と大剣を振り下ろしてくるのを“油断”と見た。
オレはカッと眼光を煌めかす。
「スパァークッ!!!」
開幕で渾身の横薙ぎの大技を放ち、大剣を粉々に砕く。
いきなりの強襲にマスビッグは見開く。
すかさず前蹴りで大男を倒してから、再びハンマーを振り下ろして頭上の大剣を砕く。
「ガッ!」
「次、どいつだ!?」
突然の速攻瞬殺に五人のフード男はうろたえる。
すると地響きが起きて、足元の地面から岩の手が生えてきてフード男をガッシリ掴む。
なんとヤマミが杖をかざして力を発揮したからだ。
「く、このッ!」
「てめぇ!」
「動けぬ!? なぜこんな力がッ!?」
「ま、ま、待てッ!!」
「行くぞー!! 流星進撃!! 二〇連星ッ!!!」
ハンマーで流星のような一瞬連撃でフード男四人を打ちのめし、頭上のブキ四本を次々粉砕する。
流れるように魔剣の宝玉が粉々に飛び散っていく。
「くっ、クソッ!!」
最後のフード男だけ残し、ヤマミの黒いトゲが動きを封じる。
「ぬっ!? き、きさまらーッ!?」
「おめぇで最後だ。白状してもらおうか……」
「逃がさないわよ」
「くッ!!」
やはり頭上からスポンとレイピアが抜けて、空へ逃げていくのでオレは飛び上がって捕まえた。
刀身を曲げて顔を突き刺さんとするところを噛み付いてバキャンと砕く。
着地したら、ヤマミがすかさず呪縛の『刻印』を付加した。
「さて、自己紹介してもらおうか? 小物さんよ」
「ぐぬうううッ……! 魔剣武団ウェクサを名乗った小物集団だと思っていたが、こんな恐ろしいヤツがいたとは……!」
レイピアさんは思わぬ返り討ちに驚愕しつつ、屈辱に悔しがっている。
動きを封じられて喋るしかできないとなれば、なおさらだ。
「道理で獄魔剣ヘルビルと惨魔剣ジドブェノがやられたワケだ……」
「この氷魔鎚アスマハーを舐めるから、こういう目に遭うんだ」
「くそ! ただの万引きの常習犯に過ぎないと判明していたのに、小物と見せかける為のブラフだったかッ!」
いや待て待て! 氷魔鎚アスマハーって万引きの常習犯なん??
ハンマーをジト目で見やるとビクッと竦んだのが見えた。冷や汗タラタラだ。
「ああ、そうだ。その方が誰も小物だと思ってくれっからな」
「そこの岩魔杖アンドースも多くのオスブキを騙して貢がせてきた単なる悪女だったが、どこぞのスパイだったか? 手際がプロのそれだったぞ……」
ヤマミもジト目で杖を見やる。ブルッと震えて「サーセン」とボソ声出した。
こいつら本当に小悪党だったんかよ。
新参者として魔剣武団ウェクサに入っていたが、見限られたのもムリねぇな。
「この氷魔鎚アスマハーは万引きなんてくだらねぇ事したくなかったさ……。だがそれも魔剣武団ウェクサへ潜入したかったから、敢えてそうしたのだ。案の定、おまえらが釣れたワケだがな」
「そうね。私も大した犯罪を犯さず、魔剣武団ウェクサへ入り込めたからね。あんたら大魔剣ウェクサ狂信者が釣れると思ったけど、思いのほか効果てきめんね」
「「えっ!?」」
「ぐ……くく……きさまらぁ……! この死相殺剣デイピアスさまを謀るとは……!」
氷魔鎚アスマハーと岩魔杖アンドースは目を点にしたかのように呆然してる。
ずっとダンマリの闇魔弓ダクボーウは冷や汗タラタラだ。




