453話「散髪屋いらず!? 不気味に変化しない髪」
二〇一〇年、六月二十三日、オレたちはいつもののようにアニマンガー学院へ通学していた。
「おーっす。おはよ!」
オレはヤマミと一緒に教室へ入って、リョーコとエレナが「おはよー!」と返す。
フクダリウスも「ああ。おはよう」と優しい顔でにっこり。
「エレナ切ったの?」
「あ、うんッ! 長くなってたからッ」
エレナの肩より長く伸びていたロングヘアーがショートヘアになってた。
ついでに前髪も眉のところまで伸びてたのが、デコあらわのベリショになってて、実はそういうのが好きだと今更知った。
リョーコはおかっぱだが、後ろの方がやや伸びてるので「切ろうかなー」と髪をいじる。
するとコハクがキリッとしながらやってきた。
「そういえばナッセとヤマミは全く変わりませんね。いつも自分で処理してるんですか?」
「あ……」
オレは銀髪を撫でて、思い当たった。
ヒゲは永久に生えないから、と思ってたけど……。
「私はそのまま。ずっと切ってないわね」
ヤマミがそう答えてきたもんだから、リョーコとエレナは「えええッ!!?」とオーバーリアクションで驚いてきた。
コハクは僅かに驚きを見せ、落ち着いて「ふむ」と頷く。
「そういやオレも切ってねぇな」
「ドラゴンもそうだが、妖精王も同じかし……」
「あ、マイシ!」
ふてぶてしく机に組んだ足を乗せてマイシは仏頂面で見てきた。
「どうやらあたしたちはエルフと同じように、頭髪が不気味に変化したりしないし……」
ベ○ータみてぇな事を言い出してきたぞ。似てるもんな。
ってかエルフも変化しないん?
「そうですね。特に妖精王はエルフの上位互換の種族ですから、肉体に及ぼす影響は大きいようです」
「肉体……?」
「上位生命体は精神体がメインですので、精神世界と繋がりが普通よりも深いので生態に影響が出てます。エルフが長寿なのもそれが理由なのですから」キリッ!
コハクは博識なので、キリッとした顔は合うんだが……。
「って事はナッセ長生きすんのー!?」
驚いたリョーコがオレを指さす。ヤマミはジト目で「私もだけどね」と突っ込む。
「直接的な肉体損傷がない限り、エルフのように長生きしますね。他に妖精王になった個体があまりいないので、どれくらい生きるのかは分かりませんがね」キリッ!
「そかー、レアな種族ってたもんな」
「ナッセと私で二人だから、あんまり自覚してなかったけれども」
「いいなーッ! 長く若い体で生きていられるの羨ましッ!」
オレはジト目でため息をつく。
「おめぇたちがオレたちより先に死んでしまうの見るのも嫌だぞ……」
「寿命の格差ってやつね」
「少なくとも、先に死なれて戦えなくなる事だけは避けられるワケだし」
マイシはニヤリと笑んできて、オレは思わず身震いする。
どこぞの戦闘民族かよと何度突っ込んだのやら。
「僕は陽快なので、キミたちと一緒ですね」キリッ!
コハクは笑顔でキリッしてる。やっぱイケメンだなぁ。
リョーコ、エレナ、フクダリウス、ノーヴェン、ミコト、コマエモン、スミレ、モリッカなどは普通の人間なので八〇年生きれるかどうかって感じか。
できればみんな一緒が良かったかな……。
「おーい! 授業始めるぞー!」
先生が歩いてきて、騒がしかった一同はそれぞれ席へ戻っていった。
授業が終わって帰宅時間……。夕日まで少し時間あるな。
例のごとく、退屈な授業はスキップして物語が進む仕様ェ……。メタァ!
「暑くなってきたなぁ」
「そうね」
じっと見ていると、ヤマミは「なに?」と聞いてくる。
「いや、髪の毛の話してただろ?」
「それがなに?」
「……不気味に変化しないって事は、色んな髪型にできねぇって事かなーって」
ヤマミが短く切ってショートヘア、おかっぱ、ベリショに整える事ができなくなる。
ポニーテール、ツインテール、三つ編みは結べばいいだけだからな。
ヤマミと一緒に歩きながら話を交わす。
「思ったんだけど切ったら生えないって事かしら?」
「いや……、戦いとかで髪を切られたりとかあったんだけど、元通りの長さに生えてたから無いかな?」
「あるていど髪型が決まってるって事ね」
「かもな」
つまりオレも丸坊主にしても、また普段の髪型にまで伸びちまうか。
試そうとは思わんけどな。
「そういえば天王星のアナザーマイシは妖精王だったわね……。そいつもこっちのマイシとほとんど変わらない髪型だったわね」
「そういやそうだな。色は違ってたけどさ……」
「男マイシの方は逆立ってたね」
「……だな」
すると、ダンッと何者かが阻むように降りてきたぞ。
燃えるような色の逆立った赤髪。不敵な面構え。ズボンと一体化している赤いタンクトップとで細身ながらも鍛えられた筋肉が窺える。
「よう……」
「お、男マイシッ!?」
「そういう呼び方するな! 女のマイシが基本みたいな言い方しやがって!」
額に血管浮かばせて、ガッツポーズのように握った拳を上げてくる。
「すまねぇ……。でも同じマイシなんだろ? どう呼びゃいいんかな?」
「ち……マイシでいいだろ! あんなのと一緒にするな!!」
相変わらず不機嫌だな。
しかし逆立ってるの本当にベジー○みたいだなぞ。
「っていうか、なんの用で来たんだ?」
「オレの地球は滅んで帰るところがない……。それは聞いたな?」
「あ、ああ……」
こいつは聖愛が存在する世界から来たアナザーだ。
あっちの世界じゃオレは死んでるってたっけ? まさか……!?
ニヤ……と男マイシは笑む。
「きさまも殺されて決着がつかないままだ。だから違う世界のきさまで決着つけてやりたくてな……」
「あー……、やっぱか」
「今すぐ勝負しやがれ!!」
そう言うと、男マイシはドウッと燃え上がるフォースを噴き上げ、全身を包むドラゴンに象っていった。
しかも更に連なるウロコ状のスパークが激しく迸っている。
膨れ上がった威圧で、周囲を揺るがし、台風のように烈風が吹き荒れて大小の破片を押し流していく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
「死ね!!」
「ちょっ!! ここ都市だろっ!! 場所移さねぇと!!」
するとオレとヤマミの間を通り過ぎてマイシが飛び出し、刀を降ってきたぞ。男マイシは「てめえ!!」と刀をかざして受け止めた。
ガッ!!!
周囲に衝撃波が吹き荒れて、建物を震わせ、煙幕が地面スレスレと放射状に流されていった。
人々は驚き戸惑って悲鳴が上がっていく。
「何勝手に獲物取ってるし!? ナッセに勝つのはあたしだしっ!!」
「女のきさまなんぞ知るかっ!! どけ!!」
するとトン、と緩やかに妖精王マイシが降りてきた。
「「うっ!!」」
水色のセミロングに薄水色のポンチョと足まで長い裾のドレス、後ろには二本の帯がたゆたう。
そして足元からはポコポコと沸騰するように青スミレみたいな花畑が咲き乱れ続けている。
冷淡な視線が二人のマイシを差す。
「……周りに迷惑ですし。それに同じわたしで争うのは本意ではないし。望むなら……」
「ちっ! オレは行く!」
冷凍停止化で凍らされてはたまらんと、男マイシはフォースを纏って飛んでいった。
女マイシは見上げて見送った。
こちらを見るなり「ちっ、邪魔が入ったし……。じゃあな」と歩き去っていった。
オレはふうと安堵したぞ。しかし氷雪マイシは二人と違って穏健派か。
「助かったぞー。ありがとな妖精王マイシ」
「……邪魔したし。ではごきげんよう」
丁重に会釈すると、フワッと浮き上がってどっかへ飛んでいった。
「同じマイシでも三者三様ね……」
「だなぞ」
男マイシは逆立った赤髪。妖精王マイシは水色のセミロングで色違い。
火竜王だから赤髪になってたとかねーよな……。
オレは光属性の妖精王だから銀髪で、ヤマミは闇属性だから黒髪とかベタな理由じゃないよな?
「属性で髪の色変わるんかな?」
「さぁ……?」
これ当たったりしてな……? いや、まさかな?




