450話「火星総力戦㉑ 永遠を終わらせる亡霊……!」
ようやく追い詰めたマルスに、まさか全盛期の現代マルスが現れてきて融合してくるぞ!?
威力値一〇〇〇万もの現代マルスが万全で、しかも融合したとなれば更に強くなる!
やっべぇ状況だ!!
「ふははははははははははははッ!! これで終わりだなッ!! きさまら無駄骨、ご苦労だったなァ────!!!」
悪辣に嘲ってくる現代マルス。
まさかナノマギア・アブソリュートは過去へ遡れる力を持っているのか?
これじゃ、手の打ちようがねぇぞ……。
「もうダメだお────────ッ!!!」
勇者ナッセは頭を抱えて絶叫。魔法少女リョーコ「もう詰んだじゃんー!」と同様に頭を抱えた。
フクダリウスもマジンガも「むうっ!」と悔しげに呻く。
コハクも苦い顔で、どうするべきか考えあぐねても良い案は浮かばない。
「ちょっとー!! せっかく追い詰めたのにー!!」
「もうヤバいッ!! 全滅するしかないッ!!」
リョーコもエレナも愕然とし、モエキは絶望顔で「みんな死ぬしかないじゃない!! あなたも私もっ!!」と涙を流してる。
誰もが頭を抱えるしかない。
ボッ!!
しかし、二人のマルスが融合したそばから消滅していく。
現代マルスは見開き「何だッ!? 何が……??」と焦燥を帯びて、融合するそばから消滅していくではないか?
「なっ、なんだァ────!!? 離れなければッ!! 今すぐにッ!!」
切羽詰まった現代マルスは離れようとするが、マルスはガシッと掴んで逃さないようにする。
「き、き、きさまァ────ッ!!? なんのつもりだァ────ッ!!!」
「もういい……」
「いいから離せ──────ッ!!」
「もういいんだよ……! もうこれで……」
疲れた顔のマルスはギュッと胴体に抱きつく。
抱きつかれて現代マルスは汗いっぱい滲んで必死にもがき続けるしかない。
五領主はなぜか「うごごごご……!」と苦しみ悶えて体がグニャグニャ歪んでいく。
「あ、そうだったナ! 同一人物が会うとヤバい事になるって、これの事だったんですナ!」
「「「えええッッ!!?」」」
ショトケイキが思い出したように言ってきて、マイシたちはビックリしながら注視した。
話を聞くに、同一人物同士が会うと対消滅するらしい。
オレはびっくりして自分を指差す。
「え? オレも未来のオレと合体してるんですけど!!?」
「ううナ! ワタシの能力で生き霊を召喚して憑依させる効果だから例外ですナ」
「そうなのか?」
「うナ!」
ショトケイキはコクコク頷く。
どうやら第三能力に限っては当てはまらないので、対消滅は起こらないらしいな。
しかし自力で過去へ遡ってきたマルスは別……。
「これ以上、生き存えたって……俺はもう…………」
「や、やめろッ!! やめろおおォ──────ッッ!!!!」
観念したマルスは現代マルスを抱いたまま離さない。
融合した部分から対消滅が加速していって、存在消滅は免れない。どんなにもがこうとも一度くっついた以上は逃れられない。
「一体どうなってんだぞ??」
《やはりブラックホールみたいな現象になってるな》
「え?」
未来のオレは量子世界を見透かす事ができるようで、時空の強烈な歪みで同一人物がくっついてしまったが故に特異点を中心にグニャ────ッと黒く深く底知れない穴を作ってしまった。
しかも厄介な黒いキューブがマルスをまとわりついて穴へと引っ張ろうとしている。
そう、マルスはブラックホールへ入ったのと同じ状態になっているのだ。
「とっくに父と母もアレスも……この世にいないんだ…………」
「やめろおおおおおおおおおおお────────────ッッ!!!!」
全てを失ったマルスは観念して、未来のマルスをも道連れにしようとしている。
逆に現代マルスは必死に永遠へしがみつきたいと絶叫を繰り返す。
「マルス……! おめぇ…………」
「ナッセ、ようやく分かったよ……。もう遅すぎた事だがな……」
マルスは悲しげな目を向けてきた。
「自ら……家族を殺してしまったんだな…………。そうと気づかず……今まで家族ごっこしてたなんてな…………」
ナノマギア・オリジンが完成してから家族は喜びに打ち震えていた。
さっそく体に注入して力が沸いてきた。
……しかしいつからか食事も睡眠も必要としなくなり、この時は永遠の命を得た副作用かと思っていた。
たぶんだが薄々気づいていたのかもしれない。
だが、失敗だと認めるにも等しくて必死に否定して家族ごっこをせざるを得なかった。
なぜなら一族総出で代々研究してきたものを否定するにも等しいからだ。
そんなもの認められる選択肢などなかった。
騙し騙し、そう言い聞かせて思い込むしかなかったんだ……。
「済まなかったな……。だが、こうしておまえらと戦って、ようやく悟れたよ……。そして諦めがついた…………。俺たちってナノマギア・オリジンによる亡霊なのだな……」
「やめろ……! やめろよォ……ッ!! おまえまで消えるぞおおおッ……!!」
「いいんだ。永遠に亡霊として彷徨うぐらいなら、いっそ消えた方がマシよ…………。俺も……おまえも…………」
「う……うあぁ……ッ!!」
観念したマルスは疲れた笑顔で、絶望する現代マルスを抱きしめたままだ。
対消滅は腰を過ぎて肩にも及んでいく。
ついでに五領主はグニャグニャに歪みきって原型を留めなくなっていた。
「おおおぉぉ……おぉ……ぉぉぉ…………」
次第にグズグズとひしゃげて跡形もなく消えていく。シュウウ……!
「お、俺はァ────ッ、未来永劫ッ、永遠に存在していたいんだァァ────ッ!!!」
「いいや……もはや俺にとって……未来など、どうでもいいんだ……」
醜く永遠にしがみつく未来の自分自身に、マルスは愛想が尽きて一切の全てを諦めた。
「さぁ共に消えよう…………」
「あああああああああああぁぁぁ────────────ッッ!!!!」
そして、あの世で父と母とアレスに会いに逝こうではないか…………。
ガオンッ!!!!
二人のマルスは空間に勢いよく呑まれるように完全完璧完封消え去った。
そしてウソのように静まり返ってしまう。
オレは儚げな顔で青空を見上げた。
「あの世でゆっくりな……」
マルスの家族とか事情とか、あんましらねぇけどな。
けどな、さっきまで激怒して自暴自棄になってたから、よほど大事だったんだなぁとしみじみ分かる。
現代のマルスがポカやらかす事によって、逆に諦めがついたって事か。
正直、来てくれんかったらジリ貧のまま死闘してたトコだしなぁ……。
しかしまさか自力で遡ってくるなんてすげぇな。
どこともしれない奇妙な世界……。
青く澄み切った空。足元は雲海で、モヤモヤ白いのが立ち込めてて下半身が霞む。
しかしマルスは淡々と歩んでいた。
《……マルス!》
薄ら人影が見えてきて、マルスは徐々に見開いていく。
懐かしい父と母、そして弟のアレス。手を振ってくれている。じんわり心が温かくなってくる。
《おかえり》
《待ってたわよ》
《兄者……お疲れだったな! だけどもう一緒に休もう!》
紛れもなく会いたかった両親と弟に感慨深くなってきた。
永遠の命なんか、もう要らない。
ただ温かい家族と一緒に暮らしていきたかったんだ……。それが本当の願い……。
《ああ、ただいま》
マルスは晴れ晴れとした気持ちでフェニックスの両翼を伸ばし、父母と弟とともに眩く輝く世界へと目指していく。
これほど安らかに逝けるのならば、永遠と未来は不要だったのだ……。
ありがとう……ナッセ…………。




