448話「火星総力戦⑲ 火闘神マルス!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!
噴き上げられる激流の中から、ついに火闘神マルスが姿を現した。
赤髪ボサボサで長身のイケメン。ハイライトが宿らぬ赤き目。ムキムキの半裸で白い衣服が下半身を覆う。まるで天上の神が降臨してきたかのような出で立ちだ。
オレ、ヘイン、ダウート、エレサ、ヤミザキはキッと鋭く見据えた。
「「「ここで終わらせてやるぞッ!!!」」」ド ン!!
四首領とオレ、そしてマルスは同時に吠えた!
互いの尋常じゃない濃密度の威圧がぶつかり合って、大地を大きく震わせ、オリンポス山に亀裂が走っていって大小の破片が浮き上がっていく!
にらみ合いで火花が散るかのように、稲妻がバチバチッとそこらじゅうで迸っていく!
「四首領……、いや五首領とでもいうべきか!? よくも……我が敬愛する両親と弟のアレスをよくも消し去ってくれたなああああ────────ッッ!!!!」
口を大きく開けて、血眼で怒号を吠えた!?
とてつもない激怒が嵐を呼び、マルスを中心に烈風が吹き荒れて破片と煙幕を押し流していく!
オレたちにもビリビリと全身を衝撃が貫いていく!
「って、おいおい!? 見捨てたんじゃなかったんかよッ!?」
「誰がだッ!!?」
こちらへ鋭く睨みながら叫ぶ。大気が破裂してパァンッと耳に劈く。
これ、まるで本当に親が殺されて怒ってねぇか!?
「だって親が殺されても静かだったじゃないか!? ピンチだったのに全然助けに来なかったじゃないかーッ!?」
太陽の剣で切っ先を向けてそう言う。
火闘神マルスはギリギリ歯軋りして、凄まじい形相で「ヴヴヴ……」怒りで唸ってるぞ!?
腸煮えくり返ってるのは明白で、到底芝居とは思えない!?
「そうしたかったさ……! 本当に……火星支配を放り出して飛び出したかったさ……!!」
ビリビリと全身に響く威圧がさらに増していく!?
悔恨、自己嫌悪、仇への憎悪……ありとあらゆる怒りが混ざって感情がグチャグチャになっているのが感じ取れる!
到底これは「悪い要因を敵に押し付けて、自らの正義と正当性を誇示して叩く」ではないッ!
「そもそも我が家系で代々研究してきたのも……、歴史で度重なる戦争に対して我が一族が永遠に生き残れるようにと願った為である! そしてナノマギア・オリジンを完成させる事で願いが成就できたのだッ!」
地球で頂点となっていたネアンデル人は悍ましい戦争によって自ら争いあって、失うものが多かった。
血なまぐさい歴史を繰り返した事はオレたちの歴史も同じ。
だからこそそんな戦争の歴史に終止符を打つべき、ナノマギア・オリジンを開発してたらしい。
「ほう? 我が一族の為にナノマギア・オリジンによる支配が必要じゃと!?」
「無論だ!」
ヘインにマルスは当然だと返す。
「あァ……それは叶ったとして……地球を離れて火星へ移住とはどういう事だァ?」
「我がナノマギア・オリジンを盗用し悪用する輩が独り占めをする為に争いあって、地球が未曾有の壊滅的打撃を受けた!!」
訝しげなダウートにマルスは拳を震わせて返す。
「皮肉なものね……。自ら開発したナノマギア・オリジンで争いを呼び、そして今でも起こしているんだものね」
「だからこそ、我が一族は火星へ移住しなければならなくなったのだッ! それなのに、きさまらが勝手に荒らし回ってくれやがったなあああッ!!」
冷静なエレサにマルスは感情的に返した。
その後で地球で闇闘神シュージンの手によってグランドルフたちが封印されてしまった。
そうなってるとは知らず、マルスは火星で五領主と一緒に支配を目論もうとした。
……そういう解釈でいいのか?
「だが、それは亡霊化するだけに過ぎぬと自覚はしておらんか?」
怪訝に思ったヤミザキの言葉に、マルスは押し黙った。
そう、ナノマギア・オリジンによって共通化され、永遠の命を得た。しかしそれはゾンビ化にも等しい。
あくまで寄生主のデータを再現しているだけで実際には生きていない。
生者に擬態しているだけなのだ。
従ってマルスの両親も弟もとっくに死んでて、それに擬態して活動しているに過ぎない……。
「フフフ、ハハハ、ハァーッハッハッハッハッハッハ!!!」
何を思ったのか、マルスが狂ったように大笑いしてきたぞ!?
「何がおかしいんだぞ!? やっぱ家族なんてどうでもいいと思ってんのかよ!?」
「黙らんかーッ!!!!」
今度は激怒で吠えた!
逆鱗に触れたかのようにビキビキ血管を浮かばせて歯軋りしていく!
「知るか!! 知るものかッ!!! 俺の父と母とアレスの魂は……宿っているのだッ!!! それを、それを……跡形もなく消し飛ばしやがってええええッ!!!!」
ナノマギア・オリジンの欠陥を必死に否定し、胸中を掻き毟るように吐き出す。
例え亡霊化に薄々気づいても気づかないフリして、我が家族には魂が宿って生きているのだと信じたかったようだ。
そうしなければ堪えられなかったようにも取れる。
「我がナノマギア・オリジンは完璧ッ!! 欠陥などあろうはずがないッ!!」
意固地と吠え、背中から燃え盛る両翼を生やしていく。ゴゴゴゴ……!!!
まさしくフェニックスの化身とも見て取れる風貌になっていくぞ。
「これからアブソリュートを作ろうとしてんのに説得力ねぇッ!!」
「もはやどうでもいい!! もはやッ!! 我が父も母も……アレスもいなければッ……新開発もなにもかも意味を成さねえええええッ!!!」
涙ぐんで「おおおおおおおおお!!!!」と吠えてる。
自暴自棄になっているみてぇだ。
ともあれマルスにとって大切な人はいたみたいだ。もはや返す事も何もできない。
そもそも最初っからゾンビ化しているのであれば意味を成していない。
「未来のオレ、行くぞ!!」
《ああ!!》
背後に未来のオレが浮かび、いざ戦いへと決意を固める。
できる事はマルスを葬り去って、家族の下へ還す事ぐらいしかない。
「火星全てを吸い尽くしてでも、きさまらを蹂躙してやるぞおおおおおおおッ!!!!」
地響きが大きくなり、地表から凄まじいエネルギーの奔流がマルスへと収束されていく。
四首領もオレもおののくしかない。ビリビリッ!!
急激に莫大な威圧が膨らんでいって、天上の神かと思わせられるほどに力を増していくぞ。
三〇〇万……五五〇万……七六〇万……八八〇万……一〇〇〇万!!!
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!!
火星自体が震え上がり、海が荒れ狂い、大気が乱気流で荒れ狂って、住む者全てを恐怖に震え上がらせていく。
オレは目を細め、ひっそり命令を送った。ナノマギア・ワクチンにな。
ビキィ!!
「ぐ!?」
内側からの激痛にマルスは見開いた。
引き裂かれそうな激痛が全身に広がっていって破裂しそうな感覚に襲われる。
「ぐあああああああああああああああああああああああああああッ!!!」
マルスはあまりの激痛で絶叫し、その場で転がって悶えていく。
急いで火星にエネルギーを返さなければと必死に逆流させていくと、激痛が収まっていった。
汗ビッショリでハァハァハァ激しい息を切らす。
「……マルス! あまりにも不相応な力を得ようとすれば、その体が耐え切れない事だって予想つけなかったのかよ?」
「ぐぐ……ぐッ!!」
マルスは震えながらぎこちなくこちらへ睨んでくる。
ようやく立ち上がるも息を切らし前屈み気味だ。ハアッハアッハアッ!
まぁ、敢えてワクチンに「吸収したエネルギーで反作用させてマルスの体に激痛を与えてくれ」って命じたからな。
そうと知らないマルスは単に反動が来たと勘違いしているだろう。
現代ではしっかり火星を支配して、一〇〇〇万もの威力値を発揮してたからな。
それされちゃ勝ち目ないんでチート使わせてもらった。
「な……なぜだ……!? なぜ火星のパワーをモノにできない……!?」
「チートでズルはできねぇんだろ? それに火星人にナノマギア・オリジンが通用しないなら、火星にだって同じ事が起こってもおかしくねぇだろ?」
わざとミスリードを言って、勘違いさせておく。
ナノマギア・オリジンで火星は支配できないと思ってくれれば、こっちのもんだからな。
「ち……ちくしょう…………! ちくしょう……! ちくしょおおおおおおおおお……!!!!!」
頭に血がのぼったマルスは悔しさのあまりに叫び続け、最後に「かあっ!!!」と力を入れてくる。
体が丸々筋肉に膨れ上がってバチバチッと弾けるオーラを噴き上げていく!!
「き……きさまらなんかに…………きさまらなんかに、我ら一族の悲願を崩されるはずがないんだああ……!!」
「ありゃあ…………」
オレは面食らう。
逆上するあまり、パワーに全振りの最強形態に変身しちまったぞ。




