447話「火星総力戦⑱ 結界全壊ッ!!」
イーグルイは限界を超えるほどの加速を繰り返し、大気との摩擦により超高熱プラズマを引き起こしながら、稲妻が迸っていく。
それだけ命を賭けた特攻でナッセへとぶちかまさんとするのだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
「きさまの夢もッ、未来もッ、この一撃で消し飛ぶんだあああいッッ!!!」
《悪いが未来の行く末は、このナッセの意志で決まる! さぁ行くぞッ!!》
「おお!! 行くぞーッ!!!」
未来のオレと意志を一致させ、戦意を爆発させるようにカッと見開く!
《三大奥義が一つ『超越到達の領域』!!》
刹那、“超越の輪”が世界へ拡大していく!!
それは世界の諸行無常を全て堰き止め、天の川が横切る夜景へと変えた! そしてその間に一撃必殺を幾重も繰り出す!!
《光輝・流星進撃!! 二十連星ッ!!》
イーグルイの目には同時に二十撃の剣閃が煌めいて見えた!
それは頭上、首、右肩、左肩、腹、右脇、左脇、右腰、左腰、右上腕、左上腕、右前腕、左前腕、右手、左手、右太もも、左太もも、右スネ、左スネ、背中それぞれを的確に打ち砕く!
ドッッ!!!
同時ゆえに衝撃音は一つ!!
イーグルイは超高速でオレを通り過ぎ、遅れて発生した衝撃波の連鎖によって激しくジグザグ屈折しながら踊り舞う。
気づけばボロボロに破片を散らしながら無残に宙を舞うイーグルイは絶句するしかない。
想像以上にナッセが強すぎて一矢すら報えない。
「が……ッ!!」
火闘神マルスさまッ! 役立てず申し訳ない…………!! 許してくれい…………!
願くば……マルスさまだけでも、幸多き未来へいって欲しい…………!!
「み、見事だい……ッ! こ……この“火空王”イーグルイを破るか……い、ぐがはッ!」
無念と吐血し、イーグルイは爆散して粉々に吹き飛ぶ。ドガアアッ!!
振り返ってその最期を見届けた。
そしてクール風に落ち着いていたオレは次第に未来のオレの虚像へ目を輝かせた。
「なに? 今の奥義!? めっちゃTUEEEEEEんですけど!?」
《いつかは極める事になる》
「今、真似できないかな……?」
《ムリだろ》
未来のオレに否定された。なにげにショック。
憑依合体している間だけ限定的に使える奥義であって、素のオレじゃムリっぽいな。
とはいえ、ダクライやダウートやヤミザキと同じような三大奥義をいつか会得できると思うと夢が膨らむ。
「ナッセェ!!」
ヤマミが駆けつけてきた。
サラクとミキオ、ウギンも戸惑っている顔をしている。
「未来のナッセが憑依してるって事??」
「そうみたい」
「うナ! ショトケイキの“運命の羅針盤”による第三能力ですナ」
オレの背後からひょっこりショトケイキが顔を出す。
するとツカツカとマイシがやってくる。
「おい! なんであたしにもやらなかったし!? 今すぐできねぇかしッ!!」
「ごめんナー! 対象は一人のみの能力ですナ!」
「ふざけるなし!!」
「ナッセ、リョーコ、マイシ、マジンガには目星つけてたんですナ! でもワクチンを持っているナッセを優先するべきと思っただけですナ!」
マイシはチッと苛立ち紛れにそっぽを向く。
一応選択肢に入ってたから、これ以上文句は言えなかったぽい。
「「えー!? なんであたしも入ってんのー!?」」
リョーコと魔法少女リョーコが一斉に自分を指さして叫んでくる。
「ううんナ。そっちのリョーコですナ」
普通のリョーコへ指差したもんだから、魔法少女リョーコはショトケイキの肩を掴んで「なんでなのよー!!」と思い切って揺らす。
でもショトケイキの判断は間違ってなかった。
間違いなくイーグルイはオレを狙ってたし、ほっといたら詰むしなぁ……。
「さて、残すは火闘神マルスだけだが……」
「どうしたの?」
「……たぶん大きな戦いになりそうだぞ」
オレが危惧しているのをヤマミは察した。
恐らく火星中に戦いの余波が及びかねない。
「火星の地殻にワクチン入れてっから、それでシェルター作っておこう」
「そうね」
護神たちの協力もあって、火星各国にシェルターを建造できた。
そして、これから起こる事を文字と放送で知らせておいた。おかげで、つつがなく火星人の避難を済ませる事ができた。
「よし、これならでぇじょうぶだ。なんとかなる」
「あんた悟空か。全く懲りないわね」
ヤマミがジト目で呆れる。
《へっはっはっは!! 無事終わったようじゃな》
《そろそろ和気藹々はこんくらいにしとけァ……》
《そうよ。まずは基地が覆い隠していた結界装置を破壊しないとね》
《ナッセ! 同時攻撃を頼むぞ!》
ヘイン、ダウート、エレサ、ヤミザキから連絡が来て、オレは頷く。
ガレキとなって散乱している基地へ踏み入れると、絶壁と言わんばかりに張り巡らされた結界の前にオーブを咥えた円錐があった。
近づくと、バチバチッと激しい電撃障壁が阻んできた。
「こんなもの消し去ってやるしッ!! 火竜王の炸裂剣ッ!!!」」
苛立ったマイシが渾身のひと振りで爆裂を巻き起こす。ドガアッ!
しかし依然と電撃の障壁が崩れもしない事に見開く。
「な……、なんと!? あのマイシの攻撃力でも破れないのか!?」
フクダリウスは面食らう。マジンガは苦い顔をする。
つまり、例えそのままイーグルイを破ったとしても誰ひとり結界を解けない事を意味する。
ヤマミが黒い小人を放って、黒炎で焼き尽くそうとするが弾け散った。
「ただの電撃障壁じゃないわ……」
「やっぱ四首領クラスのオレがやるしかねぇ!」
《だな》
未来のオレが背後に浮かんだまま歩む。太陽の剣を生成する。
マイシはチッと不機嫌だ。
《ナッセ、準備はいいだろうなァ!?》
《行くわよ!!》
まだかと急かすダウートと同時攻撃を促すエレサに「今行く!」と返した。
四首領とオレは渾身の力を込めて、一撃を放つ。
「撃てェ!!」
「我が神の鉄槌で金輪際吹き飛べ!! 如意金箍棒!!」
「はあああああああッ!!!」
「夕夏明王・降魔滅殺剣ッ!!!」
「サンライト・スパァ────クッ!!!!」
ヘインの衛生砲が、ダウートの如意棒が、エレサの聖なる正拳が、ヤミザキの文殊利剣が、オレの太陽の剣が同時に炸裂!!
ズガアアッ!!!
大地を大きく揺るがし、衝撃波の津波が高々と吹き上げられ、上空の雲が裂かれる!
電撃障壁が砕け、オーブを抱える円錐までも木っ端微塵に粉砕!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………ッ!!!
振動音を鳴り響かせながら、ついに結界が薄らと消えゆく!
そして巨大なオリンポス山の山頂には立派な城が聳えているのが見えた。
あそこに火闘神マルスが鎮座しているのだろう。
「いよいよ最終決戦だ!! 行くぞッ!!」
オレたちは緊迫しながら、進軍を開始した。
一方で一人佇む火闘神マルスは王座で不気味に落ち着いていた。
「五領主をも破り、ここまで牙を突き立てに来るか……!」
はらわた煮えくり返るほどの激怒を腹に宿しながら、マルスは立ち上がった。
敬愛していた両親を侮辱された上に殺され、大事な弟を失い、筆頭戦力である五領主までもが敗れた。
「イーグルイ……。おまえまで敗れるとは…………、さぞや無念だったろうな」
本当は最後まで忠誠を誓って守ってくれたイーグルイには信頼を寄せていた。
そしてその戦闘力と戦略に一目置いていた。
まさか敗れるとは思わなかったが、それでも今の状況が悪夢のようで信じられない。
「おのれ……!! 希望の勇者どもがァ……!!」
血眼でギリギリ歯軋りして、全身から憎悪が滲み出てくる。
ナノマギア・オリジンで火星を支配し終えた今、その暴威をありのままに解放してやろうと激情をあらわにした。
「思う存分、蹂躙してやるぞおおおおおおッッ!!!!!」
ドグアッ!!!!
凄まじいオーラが爆発的に吹き荒れて、居城を木っ端微塵に吹き飛ばした。
まるでオリンポス山が噴火したように膨大なオーラが噴き上げられて、大震撼が地表を伝わってオレたちに畏怖を叩きつけてくる。
四首領も表情を険しくして、汗がほおを伝う。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!
噴き上げられる激流の中から、ついに火闘神マルスが姿を現した。
赤髪ボサボサで長身のイケメン。ハイライトが宿らぬ赤き目。ムキムキの半裸で白い衣服が下半身を覆う。まるで天上の神が降臨してきたかのような出で立ちだ。
オレ、ヘイン、ダウート、エレサ、ヤミザキはキッと鋭く見据えた。
「「「ここで終わらせてやるぞッ!!!」」」ド ン!!
四首領とオレ、そしてマルスは同時に吠えた!




