446話「火星総力戦⑰ 現実と夢!」
“火空王”イーグルイは他の五領主と違って、敵のアキレス腱を見抜き急襲をしかけた。
これでナッセが抹殺されれば、ナノマギア・ワクチンが機能不全に陥って詰む。
しかし間一髪。ショトケイキの“希望の羅針盤”による第三能力が発動された。
それによって対象者の六年後の生き霊が召喚された。
「憑依合体!!」
ノリでナッセがそう叫び、その生き霊を自分の体へ憑依させたのだ。
それにより、四首領クラスの強さを持つナッセが降臨────。
そんでイーグルイのやべぇ絨毯爆撃を、オレは絶対防御で防ぎきってしまった。
「未来のオレすげぇ!! 敵の弾幕を全部弾いたぞ!!」
《粘りを極めた絶対防御だ。数メートルの『察知』を広げ、無心で待ち構えて瞬間的に反応して電速レベルの太刀筋で弾き続ける術理。徹底すれば砂粒の一つすら通さない。だが油断は禁物だな》
「あ、ああ……」
現在の少年っぽいナッセの背後に、背の高い青年のナッセが虚像として浮かび上がっている。
イーグルイはとてつもない脅威だと戦慄。
「ならば危険人物は排除するのみッ!! フォーメーションEッ!!! 行けいッ!!」
「「「ハハッ!!」」」
イーグルイは昂ぶるように号令し、それに反応した闘神が一斉に飛び上がった。
交戦していたフクダリウス、マジンガ、マイシは目を丸くした。
さらに基地で控えていた二人の闘神までもが一緒に飛び立った。空中で五人囲むように並ぶ。
風闘神オローラ、雷闘神レイボー、光闘神フッレア、水闘神ダクフィラメ、宇闘神スピキュルはそれぞれ胸元で魔法陣が浮かび上がる。
オレは見上げて、なにか奇妙な予感がした。
《封印術の類だな。五人の闘神を生け贄に、対象を亜空間結界に閉じ込めるつもりだ》
「え? なんで分かるの!?」
《幻獣界の図書館で読み漁れば分かる。いずれこのヤバさを知る。とにかくアレは初見殺しだから、事前に破るぞ》
「ああ!!」
オレは太陽の剣に光魔法を宿した。
五人の闘神が自らの命を懸けて、オレを包囲せんと急降下してくる。
「「「我が敵ッ!! この命を懸けて覚悟せよッ!!!」」」
《それは残念!! サンライト・フォール!!! 五連星ッ!!!》
振り上げた太陽の剣を垂直に地面にまで振り下ろす。
すると離れた間合いで流星のような軌跡が五筋煌めいて、五人の闘神を縦に裂く。
ズザンッ!!!!
裂かれた五人の闘神も、号令したイーグルイも見開いて絶句するしかない!
一瞬にして裂かれたのかい!? バカな有り得ないッ!!
「ガッ!?」
「うぐおお!?」
「ば、バカなッ!」
「ガギッ!!」
「無念……ぐふッ!!」
五人の闘神は白目になって空中で爆破四散した。ドガドガガアアッ!!!
フクダリウス、マジンガ、マイシはポカンと呆然するしかない。
さっきまで互角に戦ってた、あの歴戦の闘神を一撃で屠ってしまった事が未だ信じられない。
「ま、間違いない……!! 野郎……! 威力値以上のなにかを秘めてやがるのかい……!?」
イーグルイは戦慄してワナワナ震えるしかない。
あの封印術を仕掛ける際、迎撃されないように瞬間的に威力値一〇〇万を防ぐほどの絶対的バリアを纏うのだい。生半可に撃ち落とす事は不可能だい。
それを打ち破る攻撃力かい……。
たかが九〇万と侮ったが違う。実質的に一五〇万クラスではないかと認めたくないが、そうとしか思えない。
それだけ修羅場をくぐっており、熟練した剣技を備えているだろうい。
「きさま……、一体どんな戦場をくぐり抜けたのかい……!?」
《ちょい大災厄の二人に絡まれたかな。色々ヤベー状況になったんで、どっちも一歩間違えたら存在してなかったかなと》
「だ、大災厄二人……?」
《いずれ歩む道だ。その先はお前自身で確かめてくれ》
未来のオレ、一体何があったんだってばよ!?
大災厄の円環王って二人いたのか? つーかすごく気になるんだけど!!?
「ナッセとか言ったかい!?」
「んん?」
「……なぜそこまで我らに逆らい、生きながらえようとするのかいッ!?」
イーグルイは殺意みなぎるオーラを滲ませ、大気を震わせていく。
オレは毅然と見据える。
「あったりまえだろ!! これから憧れの異世界へ行くんだからな!! ここで死ぬわけにはいけねぇ!!」
《フッ》
未だ見た事のない未知の世界を、この目で見てみたい。
その為にも殺伐した夢のない社会世界を抜けてまで、ここまで来れたんだ。
「異世界……だい!? 現実を見ぬガキみたいな絵空事をほざくかいッ!」
「ところがどっこい、洞窟を抜けて実際にこの目で見たからな! 今は学院に通ってるから卒業までお預してんだぞ!」
「ふ、ふざけてるのかい……!! 我は火闘神マルスさまを守る為に徹底とした防衛を胸にして生き続けてきたんだい!! それをきさまのようなガキが自分のくだらぬ夢の為に崩すというのかいーッ!!!」
頭に血がのぼったイーグルイはメコメコと姿を変えていく。
両腕が鷹の爪を鋭く研ぎ澄まさせ、人型へと戦闘向きに変形させ、背中には鋭く硬質的な翼に煌く。
《来るぞ!!》
「おう!!」
その先の夢を叶える為に、オレはキッと身構えた。
大気を震わせて、旋風を纏いながら超高速でイーグルイは突進して鋭い爪による高速ラッシュを繰り出した。
こっちも気合いを吠えて太陽の剣を振るい、全てを捌ききる勢いで踏ん張る。
「おおおおおおおッ!!!」
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!
数百数千もの攻防の応酬が秒間に繰り広げられて、火花が激しく連鎖して弾けていく。
ズゴゴッと足元の地盤が広範囲に砕け、旋風が広がって土砂を巻き上げていった。
憤怒のままに隙間のない苛烈な攻撃を繰り出すイーグルイと、一寸の隙も見せない徹底とした粘りで捌ききるオレの激しい激戦が天地を揺るがすほどに余波が荒れ狂った。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!
絶えず吹き荒れる煙幕と烈風に、マイシたちは腕で顔をかばいながら踏ん張る。
「ぐっ!!」
「うううッ!!」
加勢すらできないほどに、隔てるほどのレベル差に誰もが絶句するしかない。
イーグルイとナッセはそれほどまでに天上の戦いを繰り返しているのだ。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!
「ぬううッ!!?」
イーグルイは攻めきれぬと焦りを滲ませていく。
相手が苦手だと思う攻撃の筋を試しながら繰り出しているというのに、ナッセはそれを埋めてくる。
まるで苦手な型が存在しないかのように見えた。
どこを攻めても見えない結界に遮られているかと思うほど完璧だ。
「ぬうううおおおおおあああああああああああああッッ!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!
それでも火闘神マルスを守る最後の砦と意地を張るしかない。
全身全霊でナッセを粉砕せんと力を尽くすつもりだ。
「もうおまえの型は大体見切った!」
「ぬッ!?」
「そろそろ、こっから攻めるぞ!!」
「できるのかいッ!?」
《サンライト・スラッシュッ!!》
猛攻を防ぎながら光を煌めかす横薙ぎを放つ。それはタカの鋭い爪を砕き、さらに胴体へ軌跡が抉った。
「がああッ!?」
《今度はこっちの番だ! 行くぞッ!!》
遠距離の斬撃を繰り出す。イーグルイは危険を感じ、サッと両腕を交差させた。
《ライズーッ!!!》
オレは空振りするように剣を振り上げると、数メートル離れた位置で軌跡が上空へ向かって描いてイーグルイの両腕を弾き飛ばす。破片が散らばる。絶句するイーグルイ。
続いて追撃と縦横無尽に必殺技の軌跡が幾重と交錯し、イーグルイは四方八方から斬り刻まれていく。
フォール、スラッシュ、ライズ、スパークを織り交ぜた強烈な連続攻撃だ!
回避も防御もままならず、なすがままに踊らされる!!
「ぐがはッ!!!」
ボロボロに切り裂かれて苦悶に吐血し、すっ飛んで基地へ突っ込んでズドドドド……と一直線に煙幕を噴き上げて、ズズゥンと高々と噴き上げた。
呆然と口を開けるフクダリウス、マジンガ。
マイシはワナワナ震える。
「あ、あれが……未来のナッセだというのかし……!! くそったれし……!」
六年後のナッセは四首領と同等以上。それが信じられず嫉妬が湧き上がる。
先を越されたと自分自身に怒りすら湧き上がって歯軋り……。
ガレキからガラガラと破片をよかして、血塗れのイーグルイは呻きながら立ち上がる。
分かっていた。ヤツに勝てない事ぐらい……。
どういう理屈か知らないが未来の自分自身を顕現化している。それが本当なら……!
「ヤツは夢を叶える未来まで生き抜くという現実かいッ!!」
つまり我らは敗れるという運命かい……。
信じがたいが、受け入れるしかない現実。
だがしかし現実通りに敗れるわけにはいかぬ。意地でもナッセだけを粉砕しなければ、火闘神マルスさまに未来はない。
「グオオオオオオオオオオ──────ッ!!!!」
最後の力を振り絞って、イーグルイは基地を粉砕して天高く飛び上がっていく。
命をも投げ打つ全身全霊の電速級超高速特攻で粉砕し切るしかない。
「ナッセェェ──────ッッ!!! 我が命を賭した最後の攻撃を受けてみるがいい──────ッッ!!!」
カッと見開いて、マッハを一〇〇〇超えるほどの超加速を発動して、凄まじい旋風を纏いながら閃光がごとしの特攻をしかける。
それに対してオレは太陽の剣を正眼に構えたまま鋭く見据える。
「グオオオオオオ────────────ッッ!!!」
限界を超えるほどの加速を繰り返し、大気との摩擦により超高熱プラズマを引き起こしながら、稲妻が迸っていく。それだけで滅亡兵器クラスの威力だと分かる。大陸に大きな穴が開くぞ。
それだけイーグルイの命を賭けた特攻が天地を震わせる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
オレはそれでも毅然と見据え、背後で未来のオレが浮かぶ。




