445話「火星総力戦⑯ 未来のオレTUEEE!」
ショトケイキが“希望の羅針盤”を手に駆け寄ってきた。
「どうした?」
「はいナ! ……とりあえず第三の能力を使う事もあり得るかと思ったんですナ」
「だ、第三の能力!?」
ショトケイキはスペリオルクラスの『運命導師』で、神器である“運命の羅針盤”を所有する。
これはオレの『鍵祈手』の“運命の鍵”と同等のもの。
第一の能力は周囲の人々の希望を集めて、未来まで『現状を打開しうる者』を検索して現代に召喚ができる。
第二の能力は地形を滑る感じで瞬間移動が可能。これは時空間魔法と同等。
そして第三の能力は……?
「対象者に、その者のあり得るであろう未来の生き霊を憑依させる事ができますナ」
「生き霊……?」
「はいナ! あなたの未来から生き霊を呼び出して、あなたに憑依させる特殊スキルですナ」
オレは疑問に持った。
「それはいいけどさ、どうせなら第一の能力でそこまでの未来のオレでやればよかったんじゃ?」
「できない理由がありますナ。なんとなくですが、現存の宇宙から存在消滅してますナ。おそらく別世界へ移動したものと思われますナ」
「ああ、そっか……」
オレは一年後、卒業したら異世界へ旅立つんだっけな。
だから宇宙には存在しなくなる為、召喚が不可能になるって事か。
逆に言えば夢を叶えたとも取れる。
「だけど第三の能力はそれに縛られる事なく、対象者の未来を召喚できますナ」
オレはすぐさま四首領との会合で耳にした事を思い返す。
《ダウート殿の言う通り今は話にならんが、今から七年後か九年後もすれば四首領クラスに成長するわね。もちろん鍛錬を怠らなければね。確かに次世代の超新星よ》
《直に戦った経験じゃァ……六年後だァ……》
エレサとダウートの言葉にヘインもヤミザキも頷く。
この推測が正しいのなら、オレは六年後に四首領クラスに強くなるって事だ。
「その未来を検索できるか?」
「ううんナ! なんとなく潜在力を察する程度なので分からないですナ」
「じゃあ六年後のオレの生き霊を召喚してくれ! ここぞという時の為に!」
「はいナ!」
これは賭けに等しい。
六年後のオレが本当に四首領クラスになっているかどうかは自分も分からない。
サボってて強さ変わってねぇかも知れないし……。
ちょい自信ないかな…………。
という事を事前に話し合っていたぞ。
まさかの事態、“火空王”イーグルイがダイレクトでオレを狙いすまして奇襲してきたのだ。
まず軍勢を倒しきってから、ボスが出てきて袋叩きするのが定番だった。
しかしイーグルイは別格。ちゃんとこっちの弱点を見つけて、準備が整わない内に撃滅する気でいるのだ。
このままではオレは殺される。
そうなるとナノマギア・ワクチンが機能不全になって、火闘神マルスのナノマギア・オリジンに対抗ができなくなって詰む。
それだけは絶対避けなければならない。
「憑依合体!!!」
手を掲げながらオレが叫び、ショトケイキが“希望の羅針盤”を掲げて能力発動!
その刹那、閃光が溢れる。カッ!
イーグルイの突進により、爆発球が巨大に膨らんで周囲に凄まじい余波を広げていった。
「うわァ!!!」「ぐおおおおッ!!」「グッ!!」
フクダリウス、マジンガ、マイシも押し寄せてきた衝撃波の津波に煽られていく。
ゾンビ兵や闘士も巻き込まれて「うわああああ!!!」と宙へ舞っていく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
四首領たちはムッと振り向くと、地平線から爆発球が覗いてきた。
地響きと烈風が遅れてブオッと届いてくる。
「……大丈夫かの?」
「信じるしかねェなァ」
「そうね」
「元より失敗は覚悟しているが、ナッセならやってくれるだろう……」
ヘイン、ダウート、エレサ、ヤミザキは信じて見守るしかない。
煙幕が地面を流れていく。シュウウウウウ……!
屈んでいたヤマミは見開いていた。
《ふうっ、なんとか間に合ったな》
オレは妖精王化して太陽の剣でイーグルイの巨大なクチバシをしっかり受け止めていた。
破片を舞わせて足元がズゴッと窪んでいく。
へたり込んでいるサラクとミキオ、ウギンも見開いていた。不思議な現象に戸惑わずにいられない。
「バカな……い!? きさまも四首領だったかいッ!?」
「奇襲は間違ってなかったぞ! やっべぇ!」
「くッ!!」
イーグルイは素早く飛び退き、滞空する。
オレは鋭い視線で見据える。そして背後に背が高くなった青年のナッセが薄ら浮かんでいた。
そう、ショトケイキの“希望の羅針盤”による第三能力で、六年後のオレの生き霊を自身に憑依させたのだ。
《とうとう過去のオレに憑依する時期が来たか》
「すまん。力を借りるぞ。未来のオレ」
《変な気分だけど、もうでぇじょうぶだ。こっち最悪の女傑王ピポポクィン撃破してるからな》
「最悪の女傑王ピポポクィン……?」
《こっちの話だ。こいつも四首領クラスだったからな。だから今回もやれっぞ》
六年後のオレと会話すんの変な気分だけど、頼もしいぞ。
「一体、何が起きているというのだい……!?」
状況が飲み込めないイーグルイは戸惑っているようだぞ。
まさか渾身の奇襲すらも、ナッセが受け止めきっていたのだ。有り得ない。
さっきまでとは威圧感が別人のように違う。
「きさま一体何者だい……?」
「未来っても自分自身だからな。同じ体だし憑依一〇〇%状態だぞ」
「憑依ひゃく……? なに言ってんだい……??」
イーグルイは怪訝に表情を険しくする。
「シャーマンキ○グじゃないでしょが」
「たはは……」
ヤマミにジト目で突っ込まれて苦笑い。でもやってみたかった。
六年後のオレが虚像として背後に浮かんでいるのはシャーマ○キングっぽい描写だけど勘弁なー。
あれカッコイイもん。
「これでオレも四首領クラスだぞ!!」
キッと鋭い視線に引き締め、ボウッとフォースを全身から噴き上げて銀髪がロングに舞い上がる。
さらに「おおおおおおおッ!!」と気合いを発して凄まじい烈風が吹き荒れて、煙幕が押し退けられた。ズアッ!
フクダリウスもマジンガもマイシも、ビリビリ響く圧倒的な威圧に見開く。
太陽の剣を構えて、気力充実とイーグルイへ戦意を放つ。
「威力値九〇万級……! そうか……きさま力を隠していたかい……!!」
「へへ、かもな……」
するとイーグルイは両翼を羽ばたかせ、羽毛の矢を周囲に散らばらせて切っ先をオレたちに向けた。
四方八方から襲いかかれては防ぐ間もないと思ったのだろう。
しかも威力は一発一発が要塞破壊クラスと見える。
「所詮は剣!! たかが威力値九〇万程度で防ぎきれるかいッ!!!」
鋭い視線のイーグルイが叫び、一斉に羽毛の矢がマッハで殺到してきた。
オレは太陽の剣を下段に構えた。スッ!
「死ねいッ!! キラーバード・フェザーレインッ!!」
徹底的な弾幕が容赦なくドドドドドドドッと集中砲火で絶え間なく繰り返され続けた。
しかもイーグルイは絶えず羽毛を撒き散らして、散弾を補充している。
これにより半永久的に集中砲火を繰り返す事ができて、いかなる防御も貫き通せるのだ。
それに一〇〇万オーバーにも満たぬ半端な強さでは到底防げるものではない。
ズオウッ!!!
尋常じゃない威力での集中砲火により、大噴火のように衝撃波が高々と噴き上げてキノコ雲が昇っていく。
台風のように吹き荒れた凄まじい烈風でゾンビ兵が粉のように吹き飛ばされていく。
闘士も「うわああああッ!!」と大小の破片に打たれて吹っ飛ばされていった。
山脈でも全部消し飛ぶレベルの破壊力だ。
マジンガ、フクダリウス、マイシは腕で顔をかばって「うぐううッ」とこらえるのが精一杯だ。
「あ、あんな奴と……戦うのはダウートと同様……無謀だったか!」
「信じられん……!! これでは勝てんではないか……」
「チッ!」
マジンガとフクダリウスは戦々恐々し、マイシは苛立ち紛れに舌打ち。
どう見たって束になって戦って勝てるレベルじゃない。イーグルイを袋叩きどころか逆に殲滅させられるのがオチだとも言える。
以前、雷闘神と風闘神が召喚したアーティファクト天空竜に打ち勝った事など些細な事でしかない。
「こ……これが……本物の四首領クラスの……!」
ジャオウですら青ざめる。
モエキも震えて戦意喪失しかけている模様。
「ぬ!?」
立ち込める煙幕がもうもうとしているが、イーグルイは仕留めたと手応えを感じなかった。
まだ気配を感じる。
これまでのナッセなら赤子の手をひねるように叩き潰せていた。
《もうしまいか?》
煙幕が晴れてオレが余裕の笑みを見せた。シュウウオオオ……!
「バカな……い!? 結界でも張ったのかい……!!?」
《剣戟による絶対防御ってトコか》
オレの足元を起点に、ショトケイキやヤマミたちがいる範囲の円は依然と無事。
しかしその外周は地盤が砕かれて抉られてしまった大きなクレーターがあらわになった。
そう、あの絶え間のない集中砲火を完全に防ぎ切ったのだ。
「なんか未来のオレすげぇ!!」
未来の自分自身に感激するしかねぇ。ヤマミはジト目で呆れる。
ある意味【第二部】のナッセとコラボしてるようなものですねw




