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勇者の魔法使い ─自力で行う異世界転移─  作者: 篳篥
第2章 テンザン大迷宮にて
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第37話 試練の間 ⑤

 本日2度目の更新です。


 さて、いよいよ残る試練は1つ。え、2つじゃないのかって? うん、でもその内の1つは俺の試練だからさ、ちょっとハブった。あの試練、あって無いようなものだしなぁ……。


「ここでお知らせがあります」


 姉貴の試練の部屋から出て通路を歩く途中、俺はそう切り出した。その際、ターシャには完全に無視されたがしょうがないだろう。これに関しては完全に、先ほど大人げない対応をしてしまった俺の責任だ。


「次の9つ目の試練なんだけどな、これは俺にとって鬼門なんだ。正直に言って、1発でクリアできる自信が無い」


 その宣告に、一同は身を固くする。うん、罰ゲームは嫌だよな。


「でも安心してくれ。次の部屋での試練は、罰ゲームを受けるのはあくまでも失敗した人だけだ。同行者まで一蓮托生に巻き込まれるって事は無い」


 そう言いつつ辿り着いた扉を開けると、その先に広がっていた光景に皆は一瞬だけ身構えた……が、すぐにその緊張は解かれることとなる。


「な、何だこりゃあ!?」


 困惑を隠せない様子のドグナム。しかし声を出したのが彼だけだというだけで、困惑しているのは他の全員が同じ。


 9つ目の試練の部屋には、大量の人影があったのだ。しかしそれらの中に生きているモノは1つとしてない。その様に、ジルベントは感心の溜息を吐いていた。


「圧巻だねぇ……こんな人形ドールの群れは見たことが無いよ」


 そう、そこにある人影は全て人形のモノ。

 これまで通って来た試練の部屋の中でもとりわけ広いその部屋は、いくつものテーブルとそこに着席した人形達で犇き合っていた。人はたくさんいるのに何故か賑わいは無いカジノ、とでも言えば解り易いだろうか。

 人形達は全てが一般的なヒューマンの成人男性程度の体格と、黒塗りののっぺらぼうの顔を持っている。着ている服は皆揃いで、シャツとスラックスというラフなものだ……白状すると、この大量の人形を用意するに当たって顔や服装にまで凝るのが面倒くさかったが故の手抜きである。

 ひとまずそれらの人形達には目もくれず、出口に当たる扉へと向かった。その横の壁には最早お馴染みとなった金属板も嵌め込まれている。


《運も実力の内! ゲームに勝て! ナナエス・ジバック  PS.道化師の鼻を押してね♡》


 金属板はお馴染みだが、PSついしんが付け加えられているのは初めてだ。

 ここに書かれた『道化師』とは金属板の横――扉とは逆隣り――に突っ立っている、ホワイトフェイスの人形のことだ。カラフルで奇抜な衣装を纏い、白塗りの顔の中で唯一真っ赤な鼻が際立って目立つ。そしてその道化師人形の前には小さなテーブルが設置されており、その上にはルーレットが置かれていた。しかしそのルーレットは一般の物とは違い、数字も文字も何も書かれていない。


「この部屋は、竜妃ナナエス様の試練……じゃあやっぱり、さっきの試練は聖女アイリス様だったのね」


 今は試練そのものよりもそっちの疑問の方が気がかりだったのか、リズは得心がいったという風に頷いていた。


「まぁ、そういう事だね。それじゃあここに書いてある通り、こいつの鼻を押してみるよ」


 言ってそのまま道化師人形の鼻を押すと、それによって道化師人形の仕掛けが作動する。道化師人形は滑らかな動きで目の前のルーレットに置かれていた小さな白い玉を手に取ると、そのままルーレットを回した。そして手に持った玉を回るルーレットに投入する。

 あぁ、この瞬間が1番緊張する。どうか、俺でもクリア出来そうなのに止まってくれ。

 玉はやがてカランという音と共に、1つのマスに落ちた。そして次の瞬間、その玉が落ちたマスの下部が半回転し、裏面を見せる。そこにはこう記されていた……将棋、と。


「将棋かよ……」


 内心で呻いた。あまり得意では無いやつに当たってしまったらしい。


『キャハハ、将棋だよ~ん!』


 道化師人形の口から、合成されたような音声が流れる。それと同時、部屋中に数多並べられたテーブルの内の1つに、まるでスポットライトでもあるかのように頭上から一際強い光が降り注いだ。あそこに行け、ということだ。


「ハァ……しょうがないなぁ」


 決まってしまったものは仕方が無い。俺は渋々とそこまで己の体を引き摺って行く。心なしか、気が重くなったせいで体まで重くなってしまったように感じる。


「トーマ、これは僕の予想なのだけれど」


 指定されたテーブルへと向かう途中、ジルベルトがそう前置きをして口を開いた。


「あのプレートに記された文章からして、ここの試練はゲームとやらに勝てばクリア。そうだね?」


 その通りなので、黙って首肯を返した。すると彼はそのまま続ける。


「そして『運も実力の内』ということは、ゲームの内容はあのルーレットで決める。そしてこの部屋にあるたくさんのテーブルは、その全てがそれぞれ別のゲーム用……違うかい?」


「そうだよ、大当たり。つまりあの道化師人形は、言ってみればディーラーってとこかな?」


 ナナエスってば、博打好きだったからなぁ。負けっ放しのギャンブラーでは無かったからまだマシだけど。けどあのナナエスの夫だったからこそ、ドラグネスはあんなに真面目になったのかもしれない……あ、だからドラグネスはしっかり者のオカン役だったのか。今になって気付いたわ。

 話している間に指定のテーブルに辿り着き、俺はそこにいた人形の正面の席に座る。卓上には、駒が綺麗に並べられた将棋盤がデンと置かれている。


「将棋、ね。その昔、ニッポン人が持ち込んだゲーム……これのおかげでいくつかのカン字の意味がハッキリしてるのよね」


 まぁ、駒に思いっきり『王将』とか『飛車』とか『桂馬』とか色々書かれてるもんね。リズが将棋のルールまで把握しているかは知らないけれど、その駒に書かれた文字の意味ぐらいは知っているだろう。

 将棋に限った話では無いが、かつて日本人はいくつかの遊戯をこの世界に持ち込んだ。簡単な盤と駒さえあればすぐに再現できる将棋も、その内の1つだった……ルールの説明には少し時間が掛かったようだけれど。そして以後、こうしたテーブルゲームはじわじわと広がって行ったのである。


『オネガイシマス』


 そうこうしている内に、対戦相手の人形が一礼した。俺もそれに倣い、一礼を返す。


「お願いします」


 そうして対局は始まった。先攻はあちら……おい、ハンデくれよ。そうでなければせめて振り駒してくれないか? くれないんだよなぁ。

 しかも容赦なく初手2六歩だし。だったらこっちの返しは8四歩だ!


 互いに一手ずつ指していると、少ししてからリズ・ノルイから感嘆の声が上がった。


「凄い……この人形、ちゃんと指してるわ」


「むしろ有利に盤面を進めているな」


 どうやらこの中で将棋のルールを把握しているのはこの2人らしい。将棋のルールを完全に理解しているわけでは無くとも、今のこの状況がどういう意味かは解るらしいジルベルトが、小さく呻く。


「成る程。人形との対戦なら簡単に勝てるんじゃないかと思ってたけど、どうやらそうは行きそうにないらしいねぇ。流石は勇者様御一行。素晴らしい自動人形オートマタを用意している」


 正しくは対戦では無く対局だが、そういう細かい指摘は今は置いておこう。


 この世界には、人形ドールというマジックアイテムが存在する。動かせる人形がこれに分類され、その中でもまた2種類に大別できる。


 1つ目は誰かが遠隔ないし直接的に魔力で操作する傀儡人形マリオネット

 この傀儡人形マリオネットだが、魔法付与が施されているか否かで希少性が変わってくる。例を挙げれば、ただ動かせるだけの傀儡人形マリオネットよりもそれに火魔法を付与エンチャントされている方が希少で高価、というわけだ。


 そして2つ目が、操作を必要とせずに自動で動く自動人形オートマタ自動人形オートマタの方が傀儡人形マリオネットよりも更に珍しい。

 自動人形オートマタ傀儡人形マリオネットと同じく魔法付与が施されている方が希少なのだが、自動人形オートマタはそれとはまた別の点で大きく変わっている事がある。


 あれ? そういえば今のこの時代ではその辺、どうなってるんだろう?


「なぁ、ちょっと聞きたいんだけど」


 視線は盤上から外さずに背後へと問いかける。


自立思考型自動人形フリーオートマタ計算型自動人形プログラミングオートマタって、今の時代ではどういう扱いなんだ?」


 計算型自動人形プログラミングオートマタとは、今俺が対局している将棋人形や先ほどの道化師人形ディーラーを指す。予め定められた事のみを遂行する人形だ。逆に言うと、それ以外の事は出来ない。例えばこの将棋人形は将棋を指せても囲碁は打てないし、あの道化師人形ディーラーはルーレットと簡単な案内は出来ても将棋は指せない。


 反対に自立思考型自動人形フリーオートマタは、文字通りに自ら思考して大抵の事が出来る。意思を持った人形なのである。それはそう、日本人なら誰でも知ってる未来の子守りロボットのようなものとでも言えばいいだろうか。


 そしてかつて……約800年前、俺がこの世界を去った当時。

 あの頃、計算型自動人形プログラミングオートマタは世界中を探せば多少は存在したものの、自立思考型自動人形フリーオートマタは殆ど存在しなかった。

 何故か? 作り手がいなかったからである。

 そもそも世界で初めて自立思考型自動人形フリーオートマタを作ったのは誰あろう、ダイゴとアルと俺なのだ。


 何故そんな物を作り出したのかといえば、根本的な原因は俺に掛けられた不老不死の呪いだろう。

 『支配』を倒した後、俺達はその呪いを解くための方法を探した。あの当時はまだ、探せば見つかるかもしれないという希望があったのだ。そして世界中を巡ったのだが……その最中、姉貴とアルが結婚して、ジャスミンが生まれた。

 幼い娘がいるのだから定住して子育てに専念すればいいものを、アルは俺達の旅に同行して世界中を巡った。流石に姉貴はアルの故郷のルルス村で留守番をしていたが。

 姉貴も姉貴で、そんな旦那を責めるどころか応援する始末。弟としては、嬉しくなかったと言えば嘘になる。しかし個人としては心苦しかった。

 なのでダイゴと相談した結果、アルがいない間も姉貴をサポートしてジャスミンの遊び相手・守役となる存在が在れば少しは気が楽になるのではないか、という結論に至ったのだ。

 そうしてダイゴが器を造り、俺が魔法付与を施して中身を造り、話を聞きつけたアルも手を加えた結果創造されたのが、世界最初で最古の自立思考型自動人形フリーオートマタ。ちなみにその子はジャスミンの3才の誕生日に彼女へとプレゼントされました。


 つまり、自立思考型自動人形フリーオートマタを作ろうと思ったらダイゴレベルの錬金・錬成技術と俺レベルの魔法付与技術が必要不可欠なのである。

 ダイゴの技術はいっそ変態的なレベルで神懸かっていたし、俺が自立思考をさせるために付与エンチャントした魔法には消失魔法ロストマジックもいくつかあったからね……もうその時点で、同じような物を作るのは難しい。

 人の歴史は長い。その中でダイゴと同等以上の錬金術師が現れる可能性も、俺と同等以上のエンチャンターが現れる可能性も、充分にあるだろう。しかしその両方が同時期に存在し、かつ協力し合うということはそうそうあるまい。


 その最初の自立思考型自動人形フリーオートマタを作った暫く後に『厄災』が現れ、俺達はその時の経験を生かして複数の自立思考型自動人形フリーオートマタを造った。

 何しろ急激な侵略で人口が激減したため、避難生活を送るにしても復興するにしても、とにかく人手が必要だったのだ。その際、魔力を動力源とし疲れも感じない自立思考型自動人形フリーオートマタは最高の人材(?)だった。

 とはいえ急ごしらえだったため、最初にジャスミンにプレゼントしたやつほど精巧では無かったけれど。

 この時期の自立思考型自動人形フリーオートマタは、最初期型と呼ばれていた。


 そして更に後、俺と『厄災』のガチバトルの結果、俺が死んだという事になった。自立思考型自動人形フリーオートマタがダイゴと俺によって造られていたのは周知の事実だったため、こうなるともうそれまで通りに自立思考型自動人形フリーオートマタを作成することは出来ない。それによって俺の生存が疑われるかもしれないからだ。

 しかし、復興のための人手は必要だった。

 なので俺は、かなりレベルを落とした自立思考型自動人形フリーオートマタを作る事にした。器はそれまで通りダイゴが造り、しかし中身は俺に指導を受けたリリアナが造ったということにして新たな自立思考型自動人形フリーオートマタを作成したのである。ちなみにリリアナは自立思考型自動人形フリーオートマタを造るために必要不可欠な魔法の内の1つをどうしても習得できなかったため、実際には創造できない。

 この時期の自立思考型自動人形フリーオートマタは、旧型と呼ばれていた。


 そしてそして、その更に後。ダイゴの死後の事。

 器となる人形の制作は数多の工房が行い、その内で自立思考型自動人形フリーオートマタとするための魔法付与に耐え得る質の人形のみをリリアナが受け取り、それをこっそりと俺に流して付与エンチャントを施す、という流れが作られた。

 ちなみにこの時期の自立思考型自動人形フリーオートマタ作成は、収入源の1つでもあった。それ以前は復興だなんだって色々あったから、ほぼボランティアでやってたけど。

 この時期の自立思考型自動人形フリーオートマタは、新型と呼ばれていた。


 纏めると、自立思考型自動人形フリーオートマタの数は多い順に、新型→旧型→最初期型。

 しかしその性能は最初期型→旧型→新型と落ちて行った。しかも各世代の差は結構大きい。


 そしてここまで説明すれば解るだろうが、777年前までに造られた自立思考型自動人形フリーオートマタは全て、中身は俺が造った物なのだ。

 この間、少なくとも俺の知る限りでは他の作り手はいない。

 何しろその付与エンチャントに必要な魔法は、リリアナですら全てを習得する事は出来ていなかったぐらいに高度なモノばかり。故に、それだけでまず難しい。

 そしてもしそれが出来るようなエンチャンターがいれば、間違いなく世界中に名を轟かせていたはずだ。それぐらいの大事である。しかしそれは無かった。

 勿論、裏世界にこっそりとそんな人材がいた可能性はあるので、断言は出来ないが。


 しかしあれから、約800年。もしかしたら新たに造られた自立思考型自動人形フリーオートマタがいるかもしれない……そんな俺の考えは、半分当たって半分外れていた。


自立思考型自動人形フリーオートマタね……それはもう、殆ど稼動していないわ。最新型のはまだ何台か動いてるって話だけど」


「最新型?」


「ええ。自立思考型自動人形フリーオートマタって、型分けされてるでしょ?」


 そうして俺も知る最初期型・旧型・新型について説明されたが、それにはまだ続きがあった。


「今から800年ぐらい前かしら? リリアナ様が、もう全盛期を過ぎて疲れたから自立思考型自動人形フリーオートマタの作成は停止するって公表したのよ」


 実際はそれはリリアナの問題では無く、俺が帰還して作り手がいなくなったからだろう。


「でもそれから200年ぐらい経ってから、また自立思考型自動人形フリーオートマタの注文を受注し始めたの。それから晩年までの約200年、少しずつだけれど活動なさったわ。最盛期を過ぎたと公言していらしただけあって、その性能は以前の物よりも劣ってしまっていたらしいけれど。この時期の自立思考型自動人形フリーオートマタが最新型と呼ばれているのよ」


「……あぁそうか、そういう事」


 成る程。つまりリリアナはその後も研鑽を積み、必要な魔法の全てを習得したのだろう。そしてまた自立思考型自動人形フリーオートマタを造り始めた、と。そういう事なんだろう。


「今では最初期型・旧型・新型の自立思考型自動人形フリーオートマタは壊れたり消失してしまっていたりしていて、博物館なんかでしか見る事が出来ないわ。動けるのはさっきも言った通り、最初期型だけ。しかもそれも最後の方に造られた一部だけだと聞くわね」


「その、大賢者とリリ……大魔導以外に、自立思考型自動人形フリーオートマタを造れた奴はいないのか?」

 

「いないわね。というか、錬金王様レベルの人形を造れた人もいないわ。だから自立思考型自動人形フリーオートマタは、世界遺産レベルのお宝なのよ。現代で自動人形オートマタといえば、専ら計算型自動人形プログラミングオートマタの事ね」


 800年の間に誰も出来なかったのか……と思わないでも無いけど、あれを造るには消失魔法ロストマジックを複数組み合わせる必要があると考えると、仕方が無いのかもしれない。

 むしろ最初に自立思考型自動人形フリーオートマタを考案した時の俺のテンションの方が可笑しかったのかもな……だって俺の姪っ子超可愛かったんだもん……喜んでほしかったんだもん……。


「その計算型自動人形プログラミングオートマタも、そうそうある物じゃないけどねぇ。そう考えると、この部屋の景色は圧巻だよ」


 改めて室内を見渡し、ジルベルトは吐息を吐く。その言葉にノルイが反応した。


「いや待て。もしかすればこの先、最初期型の自立思考型自動人形フリーオートマタが拝める可能性もあるのではないか?」


 その意見に、皆は息を飲んだ。しかしここが勇者一行の作った空間であると踏まえれば、あり得ない話では無いだろう。自立思考型自動人形フリーオートマタは世界遺産レベルのお宝と言っていたし、ならばそれがあるかもしれないと思えばハッとするのは当然かもしれない。


 ただ、な。


「ゴメン。この先にはまだ進めなさそうだ」


「え?」


『王手 デス』


 俺、対局に負けました。ぐすん。


『キャハハ! 罰ゲーム! 罰ゲ~ム~!!』


 道化師人形ディーラーの声が元の位置から聞こえ、覚悟を決める。


「じゃ、ちょっと行ってくるよ」


 その瞬間、ガコンとい音と共に俺の座っていたイスの真下の床が開き、俺は落下した。



====================



 落ちた先に待ち受けていた罰ゲームは悪夢の刑だった。あの罰ゲームはパクの考えたやつだ。

 恐ろしくえげつない罰ゲームでな……対象者の辛い記憶を幻で再生させるというものだ。精神魔法がいくつか掛け合わされている。

 俺も当然、嫌な記憶を見せられた。これでも長生きしてるから、辛い経験なんて沢山ある。その内の1つだ。詳細は語りたくない。


 その後また試練の部屋に戻り、試練を受ける。1度クリア、もしくは罰ゲームを受けると、その都度ルーレットで次に行うゲームを決めなければならない。


 そして……うん。ここから先は巻いてお送り致します。


[丁半]

「丁!」


『半 デス』


「何……だと」


ガコン


何故2分の1の賭けに負けるのか。



[麻雀]

『ロン』


「と、トリプル役満……だと?」


ガコン


 よく考えるとこの部屋のルール上、実質3対1になる麻雀って挑戦者が滅茶苦茶不利だったんじゃね?



[チェス]

『チェックメイト』


「…………」


ガコン


 解ってた……将棋で負けた時点で予想はしてたさ。



[花札]

「よし、猪鹿蝶! こいこい!」


『五光 花見デ一杯 月見デ一杯 アガリマス』


「………………」


ガコン


 欲張らずに上がってときゃ良かった……。



[囲碁]

「よし……2目勝った……!」


『コミ6目半 ワタシ ノ 4目半勝チ デス』


ガコン


 コミ忘れてたよ、こんちくしょう!!



[ジャンケン]

「最初はグー! ジャンケンポン!」


『ポン! ワタシ ノ カチ デス』


ガコン


 もうどうすればいいの……?



[ババ抜き]

『アガリ デス』


「く、まだまだ」


『アガリ デス』


「ま、まだまだ……」


『アガリ デス』


「…………」


ガコン


 だから何故3対1なのか。



====================



 もう何度負けて、その度に罰ゲームを受けた事か……終わるのを待っている『探究者シーカー』達の視線に段々と哀れみが混ざって行っている。

 そして遂に、痺れを切らしたリズが申し出た。


「トーマ。私がこの試練に挑戦しましょうか?」


 次を譲ると、リズはルーレットで当たったリバーシを苦戦しながらも1度でクリアした。


<おめでとう! さぁ、次はいよいよ最後の試練よ!>


 流れるナナエスのアナウンスが酷く空しく響いた。


「開いたわね。それじゃ行きましょうか……トーマ?」


 リズに促されたが、ちょっと待て。

 いいのか? ここで引き下がって。俺は元々、1人でこの試練を全てクリアするつもりだった。このナナエスの試練が俺にとって最大の難所であることは初めから解っていたが、だからといってこの結果に納得してもいいのか?

 いいわけが無い!


「皆ゴメン、先に行っててくれないか?」


「は?」


 俺は【収納】空間から5人分の食事を取り出し、最も近くにいたドグナムに手渡した。


「俺、もう少し頑張ってみる。その間お前たちは、次の部屋で休憩していてくれ。次の……最後の部屋は、何もしなければ罰ゲームが発動することも無いから」


 俺が考えて俺が作った試練だ。どういう物かはよく知っている。


「頑張ってみるって、あなた、今まで何度も負けたじゃない」


 リズは困惑しているみたいだが、大丈夫。


「もう待てないって思ったら、呼びに来てくれ。あの扉は戻る分には簡単に開けることが出来るから。それに何となくだけど、次は行けそうな気がするんだ」


「待ちなさいトーマ、今のあなたはとても危険だわ。以前賭場で見かけた、次こそは次こそはと賭け続けて遂に一文無しになったギャンブラーと同じ目をしているわよ」


 気のせいだよ、気のせい。


「とにかく、行ってくれ。そうでないと新たにルーレットを回すことが出来ない」


 暫く睨み合ったが、俺に引く気が無いのが伝わったんだろう。リズは深々と溜息を吐いて妥協した。


「いいわ、私達も休憩は欲しいと思っていたし……じゃ、また後で迎えに来るわね」


「ああ。その必要は無いように頑張るよ」


 扉を潜って先行させた『探究者シーカー』達を見送り、俺は再びルーレットを回す。今度はポーカーが当たった。


 そして始まったポーカー。手札は♡7、♠7、♣7、♡3、♢2。2枚を交換して……よし! いや待て、まだポーカーフェイスだ、ポーカーフェイス。


「俺は7のフォーカード! どうだ!」


 よし、これなら……!


『ロイヤルストレートフラッシュ デス』


「どういう……ことだ……」


ガコン


 何故スペードのA、K、Q、J、10が奴の手札に揃うのか。

 残りの試練は藤真のものだけなので、試練の間編は事実上ここで終了です。

 次回は先行したシーカー達の場面から始まります。

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