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勇者の魔法使い ─自力で行う異世界転移─  作者: 篳篥
第2章 テンザン大迷宮にて
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第36話 試練の間 ④


 精神的に果てしない疲労感を与えるアルの試練を超えると、その次に待つのはリリアナの試練だ。


《パズルを完成させて リリアナ・フォーガモット》


 リリアナの試練の部屋は、久々に極めてシンプル。だだっ広い正方形の部屋に入り口・出口となる2つの扉、出口の扉の横に金属板。そしてその金属板とは反対側の扉横には、縦横15マスの巨大なスライディングブロックパズル。


「この試練は俺がやる。いいよね?」


 振り返って確認を取るが、誰も否やは無いようだった。


「でも大丈夫? このパズル、真っ白で正解が解らないけれど……」


 リズの言う通り、眼前にあるパズルは一面真っ白だった。世の中には白いジグソーパズルというものもあるらしいけど、あれは真っ白でも形で正誤が判別できる。しかしスライディングブロックパズルが真っ白では、どうすれば正解なのか解らないだろう。

 だが。


「問題無い……ちょっと見てて」


 試しにパズルのブロックを1つ動かすと、パズル枠の上部に数字が点った。初めは[30:00]だったのが、一秒ごとに減って行く。


「制限時間は30分ってことかい?」


 ジルベルトの問いかけには無言の首肯を返し、そのままパズルを弄る……と、あるブロックがある位置に嵌った瞬間、そのブロックに模様が現れた。


「わ! 何か出て来た! ……そっか、正解の位置に嵌ると模様が出て来るんだ」


 驚いたような声を出すターシャ。驚いたようなというか、事実、驚いているんだろう。

 そしてこのパズルの仕掛けは彼女の言う通り……さてさて、今回はどんな模様が現れるだろうな? これもパクの試練と同じく、いくつかの候補の中からその時々でランダムに選択されるから、どんなのが出て来るかは俺にも解らないんだよね。

 ちなみにこのパズルを1度解けて扉を開けることが出来たら、次にその扉を閉めた時にオートで再びバラされる。そのバラされ方もランダム設定だ。


「トーマ、本当に大丈夫? この試練、試練そのものは単純みたいだけど、時間制限があるんでしょ? 手伝いましょうか?」


「大丈夫。問題無い」


 ブロックを動かす手は止めず、返答する。そしてこれもまた事実である。

 それはパズルが得意だから……では無い。


(え~っと、これはこっち……こっちはこう……あぁ、この流れだ)


 このパズルも実際に作成したのは、他ならぬ俺とダイゴである。つまり、これにあらゆる魔法付与を施したのが俺。そして俺は、集中すれば魔法式を直接視ることが出来るという特技を持つ。

 なのでこのパズルもよぅく目を凝らして見れば、パズルに刻まれた魔法式が解き方を教えてくれるのだ。実際にここでこう動かせとかそういう指示が出ているわけでは無い。ただ、どのブロックをどのマスに配置すれば模様が現れるのかが解るのである。

 俺にしか使えない少し……いや、果てしなくズルい反則技だが、今回は見逃して欲しい。ごめんな、リリアナ。


 そうして流れるようにブロックを動かしていると、やがて今回の模様が判別できるようになってきた。これは……あーあ。


「よ……っし。完成」


 最後のブロックを所定のマスへとスライドさせ、1枚画が完成した。それと同時に扉からカチッという開錠音が聞こえ、そのすぐ後にはどこからともなくファンファーレが鳴り響いた。


<おっめでとう! 次へ進んでいいよ! そしてご愁傷様!>


 ここまでの中でも最も若々しい、少女の声が室内に響く。しかし一同はそのリリアナの声よりもむしろ、現れた1枚画に気を取られているらしい。


「これは……まるでそこに人がいるかのように精巧な絵だな」


 ノルイが感心してしげしげと呟くが、それは正確では無い。何故なら、今このパズルの模様として現れたのは絵では無く、写真だからだ。

 しかしノルイが感心するのも仕方が無い。この世界には写真は存在していないから……ってちょっと待て、800年近く経ってもまだ無いのか。まぁ、多少ならば映像を見せる魔法もあるし、そこまで切羽詰まって必要とはしていないからなのかもしれない。


 ちなみにこのパズルに使っている写真は、姉貴の提供だ。姉貴は召喚された当時、スマホを身に付けていたのである。

 しかしこの世界では充電できないためにずっと死蔵していたらしいのだが、ダイゴが改造して魔力で動くようにしてからはカメラや計算機として活用していた。


 そして今回の写真はというと。


「でもこの絵……この人、男の人、よね?」


 困惑したようにリズが首を捻るのも無理は無い。そこに映っているのは、ドレス姿の3人。しかしその内の1人は、どこからどう見てもガタイの良いおっさんなのである。他の2人が豊満な美女と可愛らしい幼女であるから、そのおっさんの異質さがより際立つ。美女と幼女は満面の笑顔で、この世の終わりかのような顔をしたおっさんの両腕にしがみ付いている。


「まぁ……そうだな」


 何と言っていいか解らず、俺はそれだけを返した。


 この写真に映っているのは、ドラグネスとナナエスの夫婦に彼らの娘であるミオ――グラドの伯母に当たる――だ。つまりは家族写真なのだが……その内容が、ね。

 赤いスレンダーなドレスを身に纏ったナナエスと、たっぷりとしたレースが付いたふわふわなピンクのドレスを着たミオはいい。むしろ眼福だ。

 しかし、バラをモチーフとした青いドレスを着たドラグネスがな……ここまで来るともはや視覚の暴力というか。


 この試練の間は挑戦者のメンタルを折る方向へと特化した傾向を持つ。そしてこのリリアナの試練は、試練そのものは見ての通りただのパズルだ。しかしその試練にクリアした時ランダムに現れる写真には、全て『世界の運命』のメンバーの何かしらの黒歴史が写っている。そして今回の不運はドラグネスだったというわけだ。

 これはアレだな……ミオにせがまれてドレスパーティやった時のだな。そう、ドレスパーティ。写真には写ってないけど、この時俺たちは全員ドレス着てたんだよ……あの時は死にたいぐらい恥ずかしかったのに、今となってはもうただただ懐かしいなぁ。


 それにしても、今回出て来るのが俺の恥ずかしい写真じゃ無くて良かった。こちとら600才も超えてるジジイだし、ちょっと恥ずかしい写真程度なら見られても別に構わないけど。でも説明するのが面倒臭いもんなぁ。


 そして『探究者シーカー』達は、もうこの写真について深く考えないように決めたらしい。下手に突けば藪蛇になると思ったんだろう。賢明な判断だ。



====================



 次の試練の部屋に入ると、まず目についたのは巨大な2体のゴーレムだった。そいつらは微動だにせず、扉の両脇に佇んでいる。


「ここで待っててくれ。この試練はあのゴーレムを倒すことだから」


 それだけ言い置いて、俺は駆けだした。部屋の中央に到達した頃、ゴーレムズの目に光が点り、ゆっくりと動き出した。


「動き出す前に、だな。【凍結フリーズ】」


 走りながら魔法を発動する。瞬間、完全に覚醒しきる前にゴーレムズは凍り付いてその動きを止めた。

 簡単に出来るようになったもんだ。昔はもっと苦戦したもんだけど。


<試練クリアだ。おめでとう>


 ゴーレムズが完全に停止したからだろう。とてもダンディな声でアナウンスが流れた。ファンファーレは無い。質実剛健だった奴らしい試練の部屋だ。


「もういいぞ。おいで」


 振り返って『探究者シーカー』達を呼ぶと、彼らは皆一様に『信じられない!』と言わんばかりの顔をしていた。


「嘘でしょ……ここの試練、ゴーレムを倒すだけ……?」


「何だ、このまともな試練は……」


「もしかしてこの後、どんでん返しがあるんじゃ……」


「あり得るわね……」


「………………」


「お前ら言いたい放題だな」


 警戒心バリバリの面持ちのままこちらへやって来る面々に、俺は思わずツッコんだ。

 けどまぁ……この試練は7つ目か。ここまでの試練は一癖も二癖もありそうな物ばかり。警戒もしたくなるだろう。

 しかし俺はそれに肩を竦めた。


「ハァ……ここの試練を考えたのは真面目な奴だったってことなんじゃないの?」


 扉に到達すると、この部屋でもまたその横に金属板があった。


《健闘を祈る ドラグネス・ジバック》


 この試練はドラグネスが考えたもの。内容はゴーレム2体と戦って勝つことのみ。本当にそれだけ。あいつクソ真面目だったからなぁ……仲間内でも、時にはオカンとか呼ばれていたし。何故かオトンでは無くオカン。お遊びでも悪ふざけは中々出来なかったらしい。



====================



 8つ目の試練の部屋に入り、リズはまたもや興奮を隠せないような様子になった。


「見て! またニッポン語よ!」


 金属板を目にするなり、彼女はそれに駆け寄って行った。この部屋はこれまでの部屋より少しばかり小ぶりで、障害物も特に無い。そのため次へと続く扉に真っ直ぐ歩いて行くと、それはすぐさま目に入ったのだ。

 ここの金属板にはこう記されている。


《鍵を撃ち落とせ 鈴代愛莉》


 今回のこれは文章がコーラル語、署名が日本語になっている。


「《鈴》、《代》、《愛》、《莉》……全部カン字ね。でも、見たこと無い字ばかり。あ、でも……《愛》はどこかで見た事あるような……何だったかしら?」


 俺も日本語が読めるのを知っているはずなのに聞いてこないってことは、自分で考えたいのだろうか。


「でも、ニッポン語で署名してあるってことは、錬金王様と同じニッポン出身者なんじゃないの? だったらこれ、きっと大賢者様よ!」


 ノルイはどこかウキウキとした様子で語るターシャを見、その次の一瞬だけチラリと俺を見た。これってもう、かなり勘付かれている気がする。


「……考察したいのならしててよ。その間に俺は試練をクリアするから」


「試練、か。鍵を撃ち落とせって書いてあるね。それはひょっとして、これでかい?」


 金属板の下に作られた窪みに置かれた品を見つつ、ジルベルトが聞いてきた。俺はソレを手に取りつつ、頷く。


「そ。ということで、行ってくるよ……あぁでもお前ら、考察している時間、あるかな?」


 ソレ……一丁の銃を手に、俺は試練に挑む。


 ここの試練を考えたのは姉貴だ。そして姉貴が使う得物は銃だった。銃と言ってもあちらの世界で一般的な銃とは違う。魔法を撃ち出す魔銃である。

 魔銃には、魔法玉の如く弾に魔法を込める魔法弾方式と、銃そのものに魔法式を刻んで特定の魔法を撃ち出す魔法銃方式がある。今回、この試練のために用意された銃は魔法銃だ。これには【風弾】の魔法式が付与エンチャントされており、引き金を引けば【風弾】が放たれる。


 余談だが、銃をメインウェポンにする者は少ない。魔法弾タイプなら弾が使い捨てなためコストが嵩む。一方で魔法銃タイプの銃は付与エンチャントが複雑なため絶対数が少ない上に、一丁の銃で決まった魔法しか撃ち出せない。どれだけ頑張っても、魔法銃に付与エンチャント出来る魔法は3つ程度なのだ。

 なので銃をメインにしていた姉貴は相当珍しい部類なのだが……錬金・錬成に秀でたダイゴと魔法付与に秀でた俺が常に傍にいたという事情を鑑みれば、そう可笑しいことでも無いだろう。

 閑話休題。


 用意された魔法銃を手に取ると、試練はスタートだ。それに伴って、頭上から色とりどりの大量の紙吹雪が降ってくる。しかもただ降るだけではなく、室内に極微弱な柔らかな風を循環させてひらりひらりと舞い踊らせる。その光景は酷く幻想的だ。

 正直、とてもあの薔薇の刑という罰ゲームを考えやがった女と同一人物が考えた試練だとは思えない。


 まぁ、それはそれとして。


 大量の紙吹雪の中には1つだけ、擬態した鍵が混じっている。その擬態はこの魔法銃で撃たないと解けない。制限時間は15分。そのタイマーは魔法銃に設置されており、すでに起動している。

 この試練、見た目は華やかで綺麗だけれど実は結構えげつない。というのも、そもそも擬態した鍵がどこにあるのかが不明だ。しかも銃を持ったからと言って、見付けた鍵を百発百中で撃ち抜けるわけでも無い。


 だが。


「俺には問題ナッシング、なんだよ」


 紙吹雪は大量に舞っているが、その中に鍵はたった1つだけ。そしてその1つは魔法によって擬態しているため、魔法式で丸わかりなのだ。すぐに見付け、ソレ目掛けて【飛翔】する。


 改めて間近で見てみると、その紙――鍵が擬態中――には、1輪の花が刻印されている。申し訳程度の目印ってわけだ。

 目印の花……姉貴の名前、愛莉の『莉』から取って、ジャスミンが。


「まぁ、相手が悪かったね」


 この試練はこの魔法銃で紙吹雪に擬態した鍵を撃ち抜く事。その際、両者の距離は問題とされない。

 俺は姉貴と違い、射撃の腕前はそう高くない。扱えないわけでは無いが、精々が素人に毛が生えた程度のレベルだ。なので地面から頭上の紙吹雪を狙うのは骨だが、こうして俺の方も飛んで銃口を密着させれば、何の問題も無い。

 『ジャスミン』を撃ち抜くのは少々気が引ける部分が無いでも無いが、これは所詮その花の模様が描かれた物体に過ぎない。さして躊躇することも無く引き金を引くと、パァンという小気味いい銃声が響いた。そして直後、擬態が解けた鍵がその自重で落下する。今吹いている細やかな風では、本性を現した金属製の鍵を浮かせることなど出来ようはずも無い。

 カランという音を立てて床に落下したアンティーク調の装飾が施された鍵を、俺も降りて拾い上げる。


 姉貴の試練。突破までの所要時間、およそ15秒。『探究者シーカー』達に考察をする時間は与えてやれなかったな。


<おめでとう! 最高記録よ!>


 そしてこれまで通り、試練クリアによってアナウンスが流れる……懐かしい、姉貴の声だ。それにしても今回、最高記録だったのか。


<残りはあと少し! 頑張ってねぇ~!>


 俺は極めて近い肉親の声に少しばかり感傷を覚えていたが、このアナウンスは『探究者シーカー』達には衝撃だったようだ。


「嘘……何で、女の人の声がするの? だってこれ、ニッポン語の署名で……じゃあこの試練を残したのはニッポン人の大賢者様じゃないの?」


「あ」


 身を震わせるターシャの隣で、リズはポンと手を打った。


「そうか、思い出したわ! 《愛》って字、どこかで見た事あるような気がしたのよ! そうよ、あれって確か《アイ》って読むんだわ!」


 ……個人的に、どこでその字を見たのかが非常に気になる。まさかリリアナの手記の中じゃないだろうな? あの子のダイゴへの愛を綴りまくった中にあったとかじゃないよな?


「それじゃあもしかして《鈴代愛莉》とは……聖女アイリス様のことかな? この試練の間とやらが本当にかつての勇者様御一行が1人に付き1つの試練を考えて作った物だとしたら、ここまでで名前が出ていないのは大賢者トーマス様、聖女アイリス様、竜妃ナナエス様だけだしね」


 自身の顎に指を添えつつ、ジルベルトは考え込む。それにドグナムも相槌を打つ。


「そう、かもしれねェな……もしもトーマス教の言う通り、大賢者様と聖女様が結ばれたってンなら、聖女様も大賢者様の故郷に合わせた署名を残していても可笑しくは無ェし……」


 あ、そういう考え方もあるのか。しかし、なぁ。


「それはどうかな?」


 手にした鍵をくるくると弄びながら、俺は口を挟んだ。


「あ? 何が言いてェ?」


「そもそも、勇者一行の中に日本人が大賢者と錬金王の2人しかいないだなんて、どうして言い切れる?」


 そう言うと、その発想は無かった、とばかりに身を見開く一同。

 無理も無い、とは思う。第一、かつて姉貴の死後にそのように情報操作を行ったのは他でも無い俺たちなのだから……色々と事情があったんだよ。


「それにその『大賢者と聖女が結ばれた』ってのも、俺に言わせりゃちゃんちゃら可笑しいよ」


 鼻で笑ってそうぼやけば、これに食って掛かって来たのはドグナムでは無くターシャだった。やっぱりこの子はトーマス教徒なんだな、と確信した。


「ちょっと! 何てことを言うの!? トーマス教の教え、大賢者様の神託を何だと思ってるのよ!?」


 何だと思ってる、ねぇ。


「大賢者が偉業を成したのは事実だから、崇められるのも無理は無いと思うよ。それがトーマス教という宗教に発展したのも……まぁ、仕方が無いとは思う。でも」


 そこで1度言葉を切ってターシャをひたと見据えると、彼女は一瞬だけ怯んだ。


「その神託ってのは、心底バカらしいと思ってるよ」


 その一言に、ターシャは切れた。さっき怯んだのも忘れ去るほどの凄まじい怒りだったらしい。


「何ですって!? あんた、何てことッ!!」


「ターシャ、落ち着いて! トーマ、あなたもよ! 流石にそれは言い過ぎだわ!」


 俺達の間に滑り込んで必死にターシャを宥めようとするリズの言う通り、確かに俺は言い過ぎなんだろう。さっきの俺の一言は、敬虔な教徒を相手にしたならば口にしてはならない侮辱なのだから。

 けれどトーマス教、これの神託だけは流石に許容できない。何しろ大賢者……俺が告げたという体で成されているのだから。

 ましてや封印云々はまだしも、大賢者と聖女……つまり俺と姉貴が結ばれたなんて、冗談じゃない。そもそも俺たちがくっ付くことはあり得ないし、姉貴にはアルがいるし、俺には…………。


 興奮しきっているターシャはリズ一人では抑えきれないらしく、ジルベルトとドグナムも彼女を宥めに行っている。しかしターシャ、いくら俺が酷い暴言を吐いたからって、切れすぎじゃなかろうか。これはあれか、彼女は敬虔とか熱心とかを通り越して、狂信的な部類か? うわぁ。


「トーマス教の神託は、バカらしいか?」


 そんな中でただ1人ターシャの元に向かわなかったノルイが、俺をひたと見据えていた。俺もまた、彼をまっすぐ見返す。


「あぁ、バカらし過ぎて情けなくなってくるね……これ、今はまだターシャには内緒な?」


 3人がかりで宥められてようやく落ち着いてきたらしいターシャには聞こえないように、声量はかなり抑えた。しかしノルイが聞き取るには十分だったようで、彼は深々と溜息を吐いていた。


「この試練とやらを、最後までクリアしきったら」


 一言一言を考えながら口を開くかのように、ノルイはゆっくりとした口調で話しだした。


「そうしたら、答えが出るのかもしれないな。トーマス教の神託がお前の言う通りにバカらしいものなのか、そうでは無いのか……もしも俺の勘が正しければ……確かにお前にとって、トーマス教の神託はバカらしいのだろうさ」


 あぁ、彼はもう本当に気付いている。どうしてだろう、少し嬉しいような気すらしてくるのは。


「そうだね。その答えは間違いなく出るよ。あぁでも、今はターシャに謝っておこうかな?」


 何だかんだ言っても、人の信仰をバカにするのは良くない。俺も少々、大人げなかったからね。

 残る試練は2つ。とはいえその内の1つは藤真本人のものなので、実質残り1つですが。


 ちなみにこの試練の間の話、かつての勇者一行の少し踏み込んだ紹介も兼ねています。彼らの諸々は色々と物語の根幹部分に関わってきますので。

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