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勇者の魔法使い ─自力で行う異世界転移─  作者: 篳篥
第2章 テンザン大迷宮にて
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第25話 探究者たち

「そうね、それじゃあ私達の事情も話しておきましょうか」


 かしこまった様子でスッと前に出て口を開いたのはエリザベス。


「私はエリザベス・ストーク。まずはこの冒険者パーティ『探究者シーカー』のリーダーとして、改めてお礼を言わせてもらうわ」


 そうして深々と頭を下げる……あれ?


「リーダー?」


 ついさっきまで集団を代表して俺と問答していたジルベルトと、リーダーを名乗った彼女の間で視線を彷徨わせる。するとエリザベスが苦笑した。


「このパーティは元々、私が結成したの。でも私達の中で1番強いのはジルだから、戦闘中とかはどうしても彼を中心にしちゃって……情けないリーダーよね。負担を掛けちゃって」


 成る程、と納得した。特に今回の場合は、ジルベルトだけが僅かとはいえ事前に俺と接触があった、というのもあるだろう。


 それに、パーティのリーダーと最強は必ずしも一致するというわけでは無い。それは俺もよく知っている。何故なら、他ならぬ俺達『世界の運命』がそうだったからだ。


 『世界の運命』の結成当時は……というかその後も長い間、俺達の中で最強なのはクリスだったがしかし、パーティのリーダーは結成時からずっとアルだった。

 というのも、根が脳筋のクリスは『皆を纏める』だとか『チームの方針を決める』だとか、そういう事に絶望的に向いていなかったのだ。逆にアルはそういったリーダーシップが高かった。だから戦闘時はクリスを中心としつつパーティそのもののリーダーはアル、そういう形が自然と出来上がっていた。

 2人と同じ最初期メンバーの俺はどういうポジだったのかって? ……最弱のお荷物だよ、言わせんな。アルがいなくなった後はリーダーを引き継いだけどさ。


 まぁとにかくそういうわけで、彼ら『探究者シーカー』の有り方も別に可笑しい事は何も無い。


「……情けないとは思わないよ。さっきも彼女のフォローにすぐに行ってたしね」


 彼女、の所でさっきまで泣き崩れていたターシャを見る。もう涙は引っ込んでいるようだ。

 メンバーをフォローし、そして仲間の死を嘆きつつも折れない姿はリーダーに相応しいと思う。


「それで? エリザベス達は何でここに? 78階層の罠の事、知らなかったわけじゃないだろ?」


 迷宮探索者の殆どは自身が発見した罠や出現モンスターなどの情報をギルドへと報告し、その上げられた迷宮情報は迷宮便覧に纏められる。宝箱の位置などは秘匿する者も多いが。これも迷宮便覧が定期的に改訂される理由の1つだ。


 そしてあの地下78階層までは冒険者が稀に来るため罠を見る機会もある。例えば、パーティの数名が引っ掛かったのを部屋の外で待っていたメンバーが目撃した、とかね。

 なのでテンザン大迷宮の迷宮情報には、地下78階層に宝箱を囮にした落とし穴のトラップがある、とちゃんと載っているのだ。引っ掛かってしまった者はまず助からないため、その先がモンスターゾーンに繋がっている事までは載っていないけど。


 命に関わることでもあるから、迷宮探索前に迷宮情報を確認しておくのは冒険者の中じゃ常識だ。しかも改訂を1度経ると新たな情報が加わっているなんて事もザラなので、迷宮に入る前は毎回確認する人も多い。

 ちょっとした経験値稼ぎに浅層を徘徊する程度だったならそうでも無いかもしれないが、こんな深部にまで潜って来た彼らがそれを怠っているはずが無いだろう。


 そう思っての発言だったが、それにエリザベスは苦り切ったような顔をした。


「リズでいいわ。ええ、確かに知ってたわよ。実物を見たのは初めてだけど、見た瞬間にあれがそうなんだろうって解った。でも……裏切られたのよ、私達」


 そう言ってエリザベス……リズは頭上を見上げた。その視線はまるでその先にいる誰かを射抜いているかのように憎々しげに歪められている。


「私達『探究者シーカー』は8人組みのパーティでね。いつもは遺跡とかを巡ってある事を調べているんだけど」


「あぁ、それで探究者を名乗ってるのか」


 ポツリと口を挟むと、そうよ、と頷かれた。


「ちょっと前に面白い遺跡を見付けてね。最近はそこばっかり調べてたんだけど、それだけじゃ体も鈍るし、単調だし。だから気晴らしと経験値稼ぎを兼ねて、このテンザン大迷宮に潜ろうって話になったの。その遺跡の近くには他の迷宮もあったけど、どれも小迷宮で簡単そうだったからここまで足を伸ばしてね」


 確かに、メンバーの殆どがレベル300を超えている彼らだ。小迷宮では、大多数が簡単に突破できるだろう。


「初めは30階層ぐらいまで行ったら戻って来るつもりだったのよ。軽い気持ちで始めた大迷宮探索だったし、解放祭も近かったし。でも潜り始めて少しした頃、休憩中に出くわした他のパーティと意気投合してね。今となっては何が切っ掛けだったのかも覚えてないけど、私達はそのまま彼らと行動を共にすることにした」


 まぁ、迷宮内で出くわしたパーティと偶々意気投合するのも、そのまま行動を共にするのも珍しい話では……うん? 他のパーティ?


「彼らも結構腕利きでね、攻略は面白いぐらい順調に進められたわ。初めは解放祭が始まる前には地上に戻るつもりでいたけど、探索に夢中になってたら引き返しても間に合わないような日付になってた。けど解放祭はどうしても見たいって程じゃ無かったし、どうせならこのまま行ける所まで行ってみようかなって思ったの。でも戻るべきだったって、今になって後悔してる」


 リズは唇を引き結び、上げていた視線をこちらに戻した。


「そして地下78階層にまで到達して、あの部屋を見付けたわ。さっきも言ったけど、あれが迷宮情報に載ってたトラップだってことはすぐに解った。でも罠さえ発動させなければ大丈夫だって事も知ってたから、ちょっと見てみようと思って部屋に入って……それが間違いだった。あの部屋に入った直後、急にあいつらが私達を拘束してきて、持っていた収納袋を奪われたわ」


 収納袋は魔法が使えない人でも【収納】が使えるようにと開発されたマジックアイテムだ。


「けど、拘束されたって……お前らが? 俺が言っても微妙に聞こえるかもしれないけど、確かにお前らは相当強い部類に入ると思うよ。それがそんなに簡単に拘束されたのか? そんな事が出来る実力を持った連中なら、もっと早い段階で本性現してると思うけど?」


「……ごめんなさい」


 蚊の飛ぶような消え入りそうな声が何所からか聞こえた。何所からか、とは言っても、女性の声だったからターシャなんだろうけど。


「ごめんなさい……私、私が……さっさと捕まっちゃったから、皆まで……」


 全身を震わせながら自分を抱き込むターシャ。

 成る程、彼女を人質にされたってことか。ターシャは身体能力は低い――あくまでもレベルを鑑みたらであるが――ようだし、有り得る話だ。

 有り得る話だ……けど、ねぇ?


「落ち着いて、ターシャ。あなたを責めてるわけじゃ無いわ。……とにかくそんなわけで、私達は拘束されて持ち物を奪われ、そしてあの部屋に放置されたの」


「? 放置? じゃあどうしてトラップが作動したんだ? 作動条件も知ってたんだろ?」


「あいつらの中に、土魔法の使い手がいたのよ。それでゴーレムを作り出して、あの台座の上に乗せた。そして彼らが部屋を出た直後にゴーレムを動かしてトラップを発動させる……悔しいけど、全ての行動に躊躇も無駄も無かった。つまりあいつらはあの場で突発的に思い立ったんじゃなくて、初めから私達を嵌めるつもりだったのよ! それに気付けなかった自分が1番許せない!!」


 リズの声は段々と大きくなっていった。最後なんてもう、血を吐くような叫びと言ってもいいかもしれない。しかしやがて、ガクリと肩を落とした。


「仲間の中に、【浮遊】が使える魔法使いがいてね。ポラウっていう、エルフの女の子だったんだけど。落とし穴から落ちた後、彼女の【浮遊】で支えられながらゆっくりと下へ向かったわ。上からは天井が落ちて来てしまって戻れなかったから、下に行くしか無かった。けれど穴は深かったでしょ? やっと辿り着いた時には彼女はもう魔力切れを起こしていた……ううん、本当はとっくに魔力切れになってたのよ。それを回復薬で無理矢理回復させながら無理矢理絞り出して。だから下に着いた時には限界を超えていて、そのまま倒れ込んでしまった。私たちが彼女を心配して駆け寄っている間にあの召喚魔法陣が発動した」


 そうか……それじゃやっぱり、最初に死んだ1人ってのは。


 「驚いている間にもスカルソルジャーはどんどん増えて行って、私達は咄嗟に応援したんだけど、ポラウは動けなくて……間に合わなかったわ。そのまま態勢を立て直せなくて分断されていって……後は解るでしょ?」


 確かに解る。


「そこに俺が落ちて来たってわけか」


 それにしても、そのポラウって子が死んだのは残念だ。いや、他に死んだ2人が可哀そうじゃないとかそういう事では無く、魔法使いとしてな。8人のパーティメンバー全員を【浮遊】で支えながら、あの数㎞に及ぶ穴を降りる。大した魔力コントロール能力と根性の持ち主じゃないか。後で埋葬する時に黙祷を捧げよう。


「ちょっと確認したいんだけどさ。そのお前らを嵌めたパーティってのは、男4人女2人に6人組み?」


「!? 知ってるの!?」


 あぁ、やっぱりそうなのか。


「78階層に降りてすぐの所で見かけたよ。向こうは俺に気付いてなかったけど」


 あいつらかぁ。ちゃんと顔見とけば良かったかも。


「もう1つ確認させて欲しい。そのポラウって子は、回復薬で魔力を回復させたって言ってたよな? ってことは、盗られたのはその収納袋だけなのか? 他のアイテムや装備品は?」


「え? えぇ、私は収納袋だけ……アイテムは全部収納袋に入れてたけど、装備品は何も」


「俺もだ。装備もアイテムも何とも無い」


「俺も」


「わ、私も……」


 俺の2つ目の質問に、彼らは順繰りに答えた。最後にまだ動けないノルイを見ると、彼も首を横に振った。盗られていないらしい。

 成る程……つまり。


「お前らさぁ。正直、もの凄く面倒な事に巻き込まれてるかもしれないぞ?」


「え?」


 リズは目を見開いた。リズだけじゃない、他の全員もだ。面倒、というのがどういう事か解ってないらしい。


「俺がそいつらを見かけた時、こんな会話をしていた」



 『よし、もう戻るぞ。これで任務は完了だ』


 『ちょっと可哀そうな気もするけどね』


 『知った事か。それより気を抜くな、ここからまた地上まで長い道のりになるんだぞ』



「そいつらがお前らを最初から騙すつもりだったのには同意だけど、ただの物取りじゃない。誰かに頼まれてたんだ。つまり出会う前から狙われてたってこと」


 それがどういうことか……説明せずとも彼らにも解ったらしい。

 やられた事からして、そいつらが受けていた任務の真実として有力なのは『探究者シーカー』の暗殺、或いはリズの収納袋の強奪。もしかしたら両方かもしれない。


 暗殺としては、大迷宮内で罠に嵌めるというのは良い手だ。

 そもそも彼ら自身が強いため、普通に暗殺しようと思ったら相当の労力を必要とするだろう。それに話題にもなるに違いない。

 しかしどんなに優れた冒険者パーティでも大迷宮の探索中に命を落とすことはままあるから、彼らがそうなっても不審に思われることはあるまい。

 この階層まで降りれば他の目撃者もまずおらず――今回は俺がいたわけだが、これは特殊なケースだろう――、しかもあのトラップは目撃者はいても生還者は報告されていない。あえて報告していない人物は歴史上に若干名いたが。


 収納袋に関しては、暗殺ついでに所持品を奪うつもりだったのなら他の奴らも奪われてないと可笑しい。

 しかし収納袋は確かに高価ではあるが、決して他では手に入らないような伝説のアイテムというわけじゃない。つまり狙いは収納袋そのものでは無く、収納袋の中に入っていた物。


「な? 面倒な事態だろ? そいつらがただの強盗ならお前らが生還後に訴えれば終わりだった。迷宮内の事は自己責任とはいえ、ここまでくると悪質すぎてギルドの掟に触れる可能性が高いからね。それで解決出来たと思う。でも任務となると、そいつらはただの駒だ。原因を突き止めて黒幕を排除しない限り、また狙われることになる」


 俺からして見れば、結局は他人事である。しかし当事者である彼らは、揃って呻いた。そりゃそうだろう、ここまで手の込んだ事を仕出かされたのだから。


「……何か、人の恨みを買うようなことした? もしくは収納袋の中にトンでもないお宝を入れてたとか?」


 とはいえ、パッと見て少し喋った感じでは、彼らは故意にそこまで強い悪意を受けるような人達とは思えない。過失ならあるかもしれないが。


「恨み辛みを、全く買ってないとは言い切れないけど……でも、心当たりは無いわ。収納袋に入れてたお宝は……リヴァイアサンの素材と魔石……それと、手記かしら? それ以外は他でも手に入るようなのだけだし」


「リヴァイアサン? S級モンスターじゃないの。討伐したの?」


 S級モンスターと一口に言っても、それはピンキリだ。何故ならA級の枠を超えるモンスターは全てS級に分類されるため、A級に限りなく近いモンスターから神話級のモンスターまで揃っているのである。

 その中でリヴァイアサンは強力な部類に入る。どれくらいかというと、小柄な個体でもS級に分類されるぐらいには。しかも海中に生息しているため、そもそも出会うこと自体が稀だ。

 そんなリヴァイアサンの素材と魔石。そりゃあお宝と言っても良いだろう。


「ええ。運が良かったのよ。さっき、私達が面白い遺跡を見付けてそれを調べてるって話したわよね?」


「あー、うん。そうだったね」


「それ、海中遺跡なの。不思議な巡り合わせでね。最初は海賊の多い海域で商船の護衛任務を受けてたんだけど、現れたのは海賊じゃなくてリヴァイアサン! 驚いたわよ、その辺りはモンスターが滅多に出ない海域としても有名だったから……だからこそ、海賊が蔓延ってたんだけどね。そのリヴァイアサンは特に大きな個体で、普通なら存在が確認されたら災害認定されて緊急討伐隊が組まれるようなものだった」


「あの時の絶望感は……今回の絶望感にも匹敵したな」


 ドグナムの目は軽く死んでいた。それにターシャがコクコクと頷く。無理も無い。相手が大型のリヴァイアサンだったというなら、そうもなるだろう。


「正直言って、とてもじゃないけど私達では倒せないと思ったわ」


「でも、倒せた。そのリヴァイアサンは普通じゃ無かったから?」


「そうよ。そいつ、確認された時点でひどく弱っていたの。おかげで私達は何とか倒すことが出来たわ。でも何でリヴァイアサンが弱っていたのか気になって海中を探ってみたら、その遺跡を見付けた」


 リズは思い出しているのだろう、遠い目になっている……もしかしたら、亡くした3人の仲間のことも思い出しているのかもしれない。その当時はいたはずだし。


「その遺跡は規模としてはそれほど大きな物じゃ無かったわ。大昔に人魚族の誰かの棲家だったのかしら、って程度で。でもそこに施されていた仕掛けが凄かった。見たことが無いくらいに強力なモンスター避けの結界……【破魔結界】が張られていてね。それを見て、色々理解したわ」


 言いながら少しずつ興奮して行く様子は、成る程探究者と呼ぶに相応しいように見えた。


「その周辺でモンスターが滅多に出ないのは、【破魔結界】が強力過ぎて周囲にも影響が出てたから。リヴァイアサンは強力な個体だったからこそあそこまで辿り着けて、でも多分【破魔結界】と直接接触してしまって弱っていたのよ」


「大型のリヴァイアサンが弱る程の【破魔結界】?」


 【破魔結界】は確かにリズの言う通り、モンスター避けの結界だ。上級聖魔法である。しかしモンスターが強力になればなるほど、破られ得る。

 大型のリヴァイアサンが破れないような【破魔結界】なんて、まず無いはずだ。凄い使い手が現れてたんだなぁ。だってそんなのを張れる人材なんて、姉貴と俺以外に見た事も聞いた事も無か……った…………うん?


「あの、つかぬ事をお聞きしますが?」


「何で急に敬語になったんだい?」


 それまでは黙っていたジルベルトだったが、流石に気になったのかツッコんできた。


「ごめん、変な気分になって……改めて聞きたいんだけど、その遺跡があったのってゴト島の近く?」


 ゴト島はテンザン大迷宮のある白大陸、そこから西に5㎞ほど行った所にポツンと浮かぶ小さな島だ。そしてその島の近くには確かに、モンスターのあまり出ない海域があると噂されてきた。海賊が出るという噂は、昔は無かったけど。


「ええ、そうよ。やっぱり知ってたかしら? 有名だものね」


「そうだね、有名だからね……有名になってなくても知ってたけど」


 最後にボソッと付け足したが、それは彼らには聞こえなかったらしい。


「それでその遺跡の中にも入ってみたわ。海水が中に入って来ないようにも魔法が掛けられていて……いるのね、あんな魔法が使える人。でも何で水が入らないようにされてるのかは疑問に思ったわ。答えはすぐに解ったけど。その中の一室、書庫には大量の蔵書が眠っていたの。大発見よ! だって発行年月日を見ると、『厄災』が現れるよりも前の書物なんだもの!」


 当時、『厄災』による戦禍は人的被害のみには留まらなかった。文化や歴史もまた、奴に破壊されたのだ。多くの書物が焼失し、当時の文献は数少ない。それが大量に見つかったとなると、確かに大発見だろう。


「発見した蔵書の保存状態は非常に良かった。ポラウが」


 そこまで言って、リズの勢いは萎んだ。亡くした仲間の顔が頭を過ぎったのだろう。


「……ポラウの見立てでは、結界には【劣化防止】の魔法も編み込んであるんじゃないかとのことよ。それと……さっき言ったでしょう? 収納袋に入っていたお宝には手記も含まれているって。この手記は、その書庫で見付けたの。私にとっては、これはリヴァイアサンの素材や魔石以上のお宝だったわ。だって、ずっと私が求めていた物の手掛かりになり得るんですもの」


「求めていた物?」


「ええ」


 そこでクッと、リズは表情を引き締めた。


「パーティ『探究者シーカー』。私達が探究するのは、解明したいのは言語……ニッポン語よ」


「日本語を?」


「ええ。ニッポン語の事はあなたも知っているでしょう?」


 そりゃまぁ、母国語ですから。


「……その手記が、日本語の解明に役立つ代物だったっていうの?」


「えぇ。だってその手記、ニッポン語で書かれていたんだもの」


 そこまで聞いて、俺は内心で天を仰いだ。


 ゴト島の近くの海底にある、高度な【破魔結界】を張られた遺跡。それだけならもしかしたら違う可能性も微粒子レベルで存在するかもと思ったけど、日本語で書かれた日記まであったとなると、もう間違いない。確定だ。


 こいつらが見付けたのは間違いなく、かつてあいつが……パクが使っていた別邸だ。

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