四葩還りて
紫陽花の首を刎ねる。
刎ねた紫陽花の首を半紙に包み、水引で結ぶ。
その紫陽花を6月の、6の付く日に玄関先に吊るす。
魔を避けるおまじない。
毎年私は、紫色の紫陽花を吊るして、息を潜めていた。
でも、あの日。
扉を開けてしまった私は。
私の好きな人と、逢った。
遭った、と言うべきかもしれない。
あんな姿になってしまっても、それでも会いに来てくれた。
私の、私だけの…紫陽花。
この数日間、私はとても幸せだった。
会えなかった日々を取り戻すように。
甘く、深く。雨露を嘗めるように。
今日、そんな日々は…終わりを迎えた。
――また、來秊ね。
そう言って、泣きそうな片側の笑顔とともに、
私の紫陽花は
雨と土の匂いの中に消えてしまった。
――来年、か…。
彼女は言った。
食べられてしまった、と。
彼女は言った。
魂だけは食べなかった、と。
私は思った。
なら…體もちゃんと、見付けてあげなきゃ…と。
あの日々からもう、壹秊が經った――。
紫陽花の首を刎ねる。
刎ねた紫陽花の首を半紙に包み、水引で結ぶ。
その紫陽花を6月の、6の附く日に玄関先に吊るす。
魔を避けるおまじない。
……戀のおまじないでもあるという。
私は、白と桃色の紫陽花を玄関に括った。
ドアが鳴った。
――よひらちゃん。
聲がした。
ドアを開けた。
雨と土の匂いが、鼻を擽る。
あの日と何も変わらない、紫色の紫陽花がそこにいた。
――よひら…ちゃん…?
靑色の私は雨露を隠すように、手を伸ばして紫陽花を抱き寄せる。
――どうし、て…?
私は、紫陽花と一體化した彼女の頭を撫でる。
「おかえりなさい。さいかちゃん」
これからは…ずっといっしょ。
だいすきだよ。




