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催花雨過ぎて
目を開ける。
眼前には紫陽花。
私を食べた、紫陽花。
立つ、見渡す。
雨音と、烟る土の匂い。
幽霊な私。堕ちた私。
それでも、歩む。
この場所には…もういない。
探す…捜す…。あの人のことを。
捜す…探す…。私の好きな人のことを。
――見付けた。
紫陽花のおまじないが、吊るされた玄関。
扉を叩く、返事はない。
叩く、奥から物音がした。
――よひらちゃん。
呼ぶ。…けれど。
扉は開かれなかった。
――よひらちゃん。――あけて。
壹秊…壹秊…。目が開くたびに、扉を叩いた。
毎秊吊るしてくれているから、すぐに場所が分かった。
――嬉しい。
そんな風に思ってしまう。私は。
もう幾秊も、扉を鳴らす。
――まるで私みたい…。
吊るされた紫陽花を眺めながら、そっと私の紫陽花に触れる。
――今年ももう…。
言いかけた言葉を雨音に逃がすように、扉を鳴らした。
――よひらちゃん。
ずっと逢いたくて。
――よひらちゃん。
ずっと、声を聴きたくて。
――よひらちゃん。
お化けになっても、来たよ。
――あけて。
私の…好きな人。
私のこと、ちゃんと憶えてくれているよね……。
扉が動いた。
あぁ…やっと…。
あぁ…記憶よりも、随分…。
――綺麗になったね。




