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幻想郷侵攻  作者: 幽夢 継
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 転 急遭徘徊ー束縛者ー


ー幻想郷、博麗神社


この幻想郷において突如始まった大異変は、いよいよ最終段階へと移行し始めていた。

大地の悲鳴があたりに響いてる。

同時に、木々がざわめきながら荒い風を吹き通していった。

いうまでもなく感じる嵐の予感。

このような中、外を出歩く者などそうそうはいない。

…はずである。

そのはずなのだが、今博麗神社の前には八人もの人影がうごめいていた。

石畳に伏せているのがそれぞれもとより幻想郷の住人、博麗(はくれい)霊夢(れいむ)、

霧雨(きりさめ)魔理沙(まりさ)、十六夜(いざよい)咲夜(さくや)の三人である。

それらを囲うようにして並ぶのが外界からの侵略者、五名の殺しを生業とする者たちがいた。

何故殺し屋がチームを組んで集まっているのか?

彼らのリーダー的存在、ユメミ曰く…まあいろいろと情報交換したりできるのは便利だからね(笑)…らしい。

結果的に協力関係ではあるが、あくまで個人としての活動は守っているからセーフなんだそう。

それに対して、ややこしいことをしているものだと人々は呆れるのだ。


突如虚空の亀裂から現れた四人の殺し屋たちは、それぞれ辺りを眺めてまわっている。

現世とは全く異なるこの地への興味が尽きないのだろう。


「空気が違うね」


「ほう」


「…すっげ」


「なるほどな、悪くないとこじゃ!」


などなど、愉快な反応に面白い表情。

だがしかし、一度に大勢の謎の存在がおしかけて来たのだ。

すると自然と霊夢たちは、


「ちょっ、なんなのよ貴方たち!」


「冗談じゃない、次から次へとたまったもんじゃないぞ!?」


「同感です…」


と、こんな反応をとらざるを得ない。

まあ、至って普通の反応だ。


「僕らは外界からの侵略者…ってことになってるんだよね?」


ここでユメミが霊夢に話しかける。


「そうよ…でも、六人もいるなんて聞いてないわ!」


「ふむ、僕らはそのここにいない六人目について知りたいんだけど、君の知っていることを教えてもらってもいいかい?」


「その前に私たちの拘束を解くのが礼儀ってものじゃない?」


ここぞとばかりに、霊夢が言った。

ずっとこの体制のままではキツかったのだろう。


「そうだったね、すまない。すぐに解くよ」


ユメミは謝罪と快い返事で実行する。

彼が次に息を吐い頃には、既に霊夢たちの拘束は解けていた。

しかし、そこには何の動作も含まれていない。

まだ気付いていないのか、霊夢が不服の声をあげた。


「ちょっと、なんで突っ立ってるのよ、早くこれを解きなさいって」


「もう終わってるよ?」


さも当たり前の様に言うユメミに、霊夢は訝しげな表情で睨む。

そのまま慎重に手足を動かす動作を入れ、漸(ようや)く立ち上がった。

その様子を見て魔理沙、咲夜も続けて立ち上がる。


「どうやったの?」


純粋な疑問をぶつける霊夢。


「僕の力を使った…では納得できないかな?」


「当たり前よ」


まだ彼らを信用していない霊夢たちからすれば、ユメミの言う力が何なのかわからずにいるのは気分が悪いというもの。

それを理解しているユメミは淡々と言葉にしだした。


「あれは『命令術』といって、僕らの世界では基本的なスキルなんだ」


「それで?」


「本来はこのスキルを使っても、君らがもらったような強力なものには、ならないんだけどね」


「何が言いたいのよ」


「要するに、あの『命令術』を上回る『命令』で打ち消せばいいのさ」


「意味がわからないわ」


「僕もわかってないさ」


「じゃあ、なんでできてるんだよ」


魔理沙が間に入った。


「こればかりは勘としか…」


「話にならない…ねぇ咲夜、貴方は―」


両手を挙げ、呆れた態度のまま霊夢は振り返る。

その先には咲夜がいたであろう空間があるのだが…


「咲夜!?」


霊夢の反応は正直に、咲夜の失踪を教えてくれた。


「どうした霊夢!」


すかさず魔理沙も歩み寄る。

そして彼女の目にも、咲夜のいない現実が写りこんだ。


「貴方、いったい何をしたの!?」


取り乱す霊夢は、鋭い目線をユメミたちのいる方へとばす。

先ほどから丁度すぐ傍にいたユメミが代表して、霊夢の質問に言葉を返した。

 

「僕らは何も?」


「そんな訳ない、咲夜はさっきまでここにいたわ!もしかして私たちも殺す気なの?」 


彼女の言葉に、周りのメンバーも注目する。

霊夢は俄然、話を聞く気はないようだ。


「仕方ない…か」


霊夢の様子はどこかおかしくなっている。

こんな状況に、ユメミは前置きを置いてから言った。


「いいよ、今すぐここから逃げなさい」


「何を…ッ!?」


その言葉が癪に障ったのか、霊夢が既に戦闘態勢の札を手にしていた。


「お、おい霊夢!?」


魔理沙も焦っている。

そこに、ユメミが追い討ちをかけた。


「逃げなさいと言っている。本当に殺されたいのか…?」


「おいおい、なんか怪しい雰囲気だぞ」


「上等よ、かかって来なさい!」


いつも以上の喧嘩腰で話す霊夢に、


「さすがにここは逃げるぞっ!」


魔理沙は慌てて引き留めた。


「ちょっ、なにするのよアンタ!」


「いいから!行くぞ!」


持ち前の箒を呼び出し、即効でまたがった。

次の瞬間、彼女自身もだしたことのないようなスピードで空の彼方へとこぎだしていった。

ユメミの視界から彼女らが完全に消えるまで、3秒もかかってはいなかっただろう。


「………うん」


それを無言のまま見つめていたユメミに、後ろから継が声をかけた。


「ユメミ」


継の目は慎重だ。

そこに、ユメミの重い声が落ちた。


「わかってる、お早いご登場だよね」


やや口調は穏やかだが、彼の額を無数の冷や汗が滴っているのを見るに、焦りを感じているのだろう。


「思ったよりも…厄介なのかな?」


ユメミの筋肉質な右腕が顔の前で構えられる。


「わはははははっ!漸く面白そうなものがきおったのう!なんじゃあれは!?」


豪快に笑みを溢しながら興奮をあらわにするキヴァが言った。

彼女は空気を読むことができないのだ。

仕方ない。

だがユメミと継の二人は既に戦闘態勢である。

シドとツギはやや反応に遅れた。

一方キヴァはと言うと、堂々と両手を腰に当てて胸を張っている。

この状況でなにをしていようと、なにを感じようと、どうしようと…結果は変わらなかったのだ。


一筋の白い光が一直線。

彼らの間へ飛んできたと思えば、それは次第に真っ黒に染まっていき、瘴気のような霧を分散した。

そして、


「うーん…誰?君ら」


突如として目の前に現れたのは、先程霊夢たちを襲った黒影であった。


『ー!?』


殺し屋一同、遅延と沈黙を感じる。

同時に全身の筋肉が一気に強ばった。


「何だ…お前」


先に口を出したのは継だった。

オマケに気迫のある目付きで対象を睨んでいる。

それはこの世のものに向ける目ではない。


「なんだい、その目は。人をそれ以外として見ているようなそれは」


黒影は相手が継であれ負けるはずなどないと実感しているのか、余裕の持った話し方と声色を保っている。


「継君…!ソイツと会話しちゃダメだ…!」


ユメミの警告が鳴った。

それでも継の足は引かない。


「お前、僕の依頼主だろ…」


「ほう?」


黒影は意外に、感心したような態度の反応を示した。

どうしてわかったのか訊きたそうな雰囲気を放っている。


「僕の依頼主と同じマークがあるからだ…それで今わかった…」


「なるほど…」


継の読みは正しかった。

自分の正体を当てられた黒影は少し考えるように、人差し指を口があるであろう場所に当ててみた。


「やっぱ君、邪魔だ」


短く言い切ると、黒影はさらにその闇を広げていく。

次第にそれは継を包まんと、その身の周りに手を伸ばしていった。


「上だ、継!」


危機一髪の状態で、ユメミの叫び声が継を救う。

その声に合わせて、継は上昇したのだ。


「……ッ!!」


風が上へ上がる勢いと反発して、継の全身に降り注ぐ。

その視界は白く濁っていた。


「逃げるのか…?」


またしてもここで黒影が危険を生み出してくる。

継の見下ろした先には、ユメミが攻撃を受けている最中だった。


「ユメミッ!」


降下しながら、継も戦闘の準備へと切り替えた。


「スペルカード『全月(ぜんげつ)殺句(こく)』、バース『句(く)尺(しゃ)術(じゅつ)』だ!」


継がそう唱えた瞬間、月の光のように一点を焦がす白線が空から届く。

それはやがて圧力のある物質と化して、大地に爆音と衝撃をもたらした。


これは、突発的に発生した戦闘である。

土埃が舞った後、次に彼らが見るのはー





ー幻想郷、紅魔館


異変の飛び交う暗い色の空の下、そこに佇む大きな館があった。

名を紅魔館。

かつて幻想郷を脅かそうとする異変で同じように空の色を変えた者の住まう城だ。

そして現在、その紅魔館正面にある巨大な門の前では数名の少女たちが立ち往生している。


「ここを通しなさい、美鈴(めーりん)!」


「ダメです!!」


ついでに怒声も立ち往生していた。

何故こんなことになっているのか。


それは、遡ること数時間前…


ある時の永遠亭で、ふと考えを閃いた輝夜が口走った。


「ねえねえ、えーりん」


「何ですか姫様」


嫌な予感を感じつつ、永琳は反応する。


「あの子、お家に返してあげなさいよ」


あの子と言いながら、輝夜はこの客室にいる金髪サイドテールの少女、フランを目で指した。

永琳もそこへ視線を向ける。

その目には同じく、輝夜の力で壊れなくなったおもちゃで遊んでいるフランの姿が映った。

なんとも無邪気な様子だ。


「それだと彼との同盟が一瞬で粉々になるんですけど?」


と、こんな永琳の模範解答でも輝夜は引きはしない。


「いいのよそんなこと、わたくしたちもついてけば」


「いえ、彼はここで匿うようにとおっしゃっていました」


「安全なとこだったらどこでもいいじゃない」


「いや、いまの幻想郷で安全なとこなんてありませんよ」


「そうかしら?」


「……姫様が何を言いたいのかはわかりますが…それはさすがに…」


「何よ、わたくしがこのまま退屈をしていることの方が後々面倒くさいのよ?貴方もそれはよく知っているわよね」


何度か言葉を交わしたが、どうやら輝夜の計画とも言えないそれは既に彼女の中で実行が確定されているようだった。

今後何を言おうと輝夜は何かしら屁理屈やらいいわけやらで確実に終着点を変えないだろう。

確かに永琳なら輝夜を刺激せずにこの話題を脱することなど容易だろうが、彼女自身もいつこの永遠亭が危険になるかは計れないのを感じていた。

なにしろ永琳は継との会談中に、仲間あるいは他の侵略者がこの幻想郷に来ていることを察していたのだ。

会談後、継は即座に移動を始めた。

永琳曰く、おそらくその目的は仲間との連絡をとるためだろうと考えている。

現状はやはりこの永遠亭に留まることが最も安全な方針なのは確実だ。

しかしそれは現状のことに対してのみ保証されたものである。

この先、幻想郷で戦争など始まろうものなら、その対局を確認できないのはなおのこと危険だろう。

ならば彼女らがどこを、何を目指すべきか。

継のいるところである。

ここまで考えた上で、永琳は決断を下した。


「まあ、あの性格ならいくらでも説得できるでしょうし…仕方ないですね…」


「さすがえーりん!」


こうして、永遠亭のものたちは数を決めて紅魔館を目指すことにした。


何故紅魔館なのかは、単純に継と早く再開できそうな場所であったからだ。



そして、今に至る。


「美鈴、どうしてわたしの邪魔をするのよ!」


「お嬢様からの伝言でしてね…えっと、お嬢様と一緒にいない妹様は偽者かもしれないと…だからここを通すわけにはいきませんっ!」


「じゃあ本物だと証明できれば良いのですね?」


この地獄のような状況に終止符を打つべく、永琳が声をあげる。


「フラン様、あの門番に触れればよろしいのでは?」


「そっか!じゃあいくね!」


「え…?え、え?ちょちょっとお待ちを…!!」


ずるずると美鈴に接近するフラン。

その右手は怪しげに構えられている。


「わ、わかりましたっ!わかりましたから!!」


悲鳴に似た声で、美鈴が降参の意を示した。


「ガコ…ゴッ!」


重々しい大門の閉じ行く音が鳴る。


「うぅ…わたし、ついにクビになりそうです…」


泣き言を言いながら、主レミリアの前に崩れる美鈴がいた。

結局、輝夜たち永遠亭のものは客人として美鈴が勝手に招き入れた。

当然、まだフランは疑われている。


「それで、彼女たちがあの永遠亭から来たとかいう…?」


「はい…」


なんとも自信のない返事だ。


「お姉さま!」


ここで、フランが姉との再開に躍り出た。


「フランっ…!?」


途端にレミリアの腰は上がる。

驚き、動揺、歓喜…様々な感情がレミリアの脳内を駆け巡った。


「ど、どうしてここに!?」


「普通に、帰ってきたのよ?」


「え………」


唖然とした表情と、閉じない口。

どうやらレミリアの動揺は限界を超えたらしい。


「あはは!お姉さま、変な顔!」


一方のフランは無邪気な笑みを浮かべて楽しそうにしている。


「あなたのこと、心配していたのよ」


それはいつにもなく落ち込んだ声だった。

よほど精神をすり減らしていたのだろう。

レミリアは大きなため息をはきながら再び椅子に腰かけた。


「あの、もうよろしいでしょうか…?」


疲れた紅魔館、主には休息は与えられないらしい。

永琳の声がそれを遮った。


「……なにかしら」


あからさまに疲弊している。

それをみた永琳もさすがにこの後の話題を持ち出すのは気が引けた。

しかし話さざるを得ない状況のため、続けて言った。


「私たち永遠亭勢力は、此度(こたび)の異変の首謀者と思われる人物と接触し、同盟を結ぶことに成功しました…」


「………ん゛⁉」


またしても隠せない動揺の下、こほこほとわざとらしい咳を繰り返している。

なんとも不憫な主だ。


「う、ウソでしょ!?何やってるのよ」


「何…と言われましても、私たちもギリギリだったのですよ」


苦しい言い訳だ。

実際は、ただ少し会話をしただけでなにもギリギリなどではなかったことは誰も言わないのだろうか。


「……そう」


再度大きな溜め息をはきながらレミリアは左腕の甲を顎に当てた。


「お、お疲れのようですね…」


それに対し永琳は苦笑を浮かべる。


「当たり前よ、次から次へと…全くもう」


「次から次…?」


「ええ色々あったのよ」


「それ、詳しく訊いても?」


案外永琳の注目は惹き付けられた。

これは彼女の推測なのだが、レミリアは既に例の侵入者(二人目)と遭遇している。

もしそうだとすれば、これは継以外の情報がわかると考えたのだろう。

レミリアは一瞬面倒くさそうな顔をしたが、観念したようで重たく声を発する。


「…今日森で、侵入者と遭遇したわ」


続けてこうも言った。


「それで戦闘になったのよ」


「…え!?まさか倒したり…」


「無いわよ、勘違いだったもの」


「と言うと?」


「あれは敵とするには甘すぎるわね」


凍樹のことである。


「どういうことです?」


なかなかに食い下がる永琳。

レミリアの答えが曖昧で、さっきから一番聞きたいことが聞けていないせいだろう。

しかしそれも次の言葉では解決することになる。


「会えばわかるわよ」


つまり、レミリアはその侵入者と会うことができる環境を持っていることになる。

それがわかれば永琳も満足のはずだ。


「会えるのですか?」


「なんなら、すぐそこにいるのだけれど?」


「?」


永遠亭一同、頭上に疑問符を浮かべる。

そして一緒になってレミリアの指差す後方へと振り返った。

そこには、いきなり注目の的を浴びたことで動揺している表情の凍樹(とうき)がいた。


「え、ええっと…どうも?」


取り敢えずの返事とお辞儀でばをやり過ごそうとしている。

そして、彼の存在に気がついていなかった者は揃って驚きの声をあげることになった。




ー第7章ー

 転 急遭徘徊(きそうはっかい)ー束縛者(そくばくしゃ)ー


 永遠亭勢力と紅魔館勢力の接触

 侵略者総勢五名と黒影の戦闘を確認

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