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幻想郷侵攻  作者: 幽夢 継
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「閉隔」ー幻想魔郷化ー丙

ー幻想郷、博麗神社


「霊夢ーっ!これは一体…!?」


天空から、声が降りかかる。

そこからは箒にまたがる金髪の少女が現れた。

魔理沙(まりさ)だ。

彼女はついさっき、神社を発ったはず。

しかし、段々と広がっていく異変に気付き、一度霊夢の元へ戻ってきたのだ。


「魔理沙、生きてたのね」


この神社の巫女が、すぐさま奥から駆けてきた。

霊夢は魔理沙を見つめ、また言葉を落とす。


「この異変、何かオカシイわね」


「ああ…」


「これからどうしよう…?」


「そうだな…とてもじゃないけど、二人でやるには余るぜ?」


「いっそ、仲間でも居てくれればいいんだけど…」


などと会話しながら、二人は神社の中へと入っていった。

同時に、その後方で何かの影が揺れ動いた。

それは草むらのなかに隠れている。

まるで吟味するように、真っ直ぐな視線を飛ばしてきていた。

二人は気付かないまま、襖を通る。

じきにその姿は扉一枚を挟んで隠れた。

そして、影はそっと現れる。

音などたてず、忍び寄る。

次の瞬間、襖が勢いよく開店を成す。


「誰よ!」


「誰だあんた!」


二人同時に喧嘩腰だ。

しかしその顔には、きちんとした緊張感が含まれている。


『…!?』


二人揃って同じ反応。

彼女らの目の前には、よく見知った顔があったからだ。

影だったものは、二人の前で堂々とお辞儀をする。


「どうも。霊夢様、魔理沙様…」


礼儀正しく放たれるその言葉にも、聞き覚えがある。

すぐさま霊夢は答えた。


「フンッ、紅魔館とこのメイドじゃない、ここへ何をしに来たよ!」


霊夢の態度は未だ喧嘩腰である。

そこへ魔理沙が中立の態度で口を挟んだ。


「なあ霊夢。あの顔、随分と深刻そうじゃないか?話だけでも聞いておいた方がいいだろ」


「…わかってるわよ!」


さも不機嫌そうに、霊夢は答える。


「それで、何があったのよ」


「はい、それが…」


前置きもなく咲夜は話し始めた。

紅魔館で起きたこと。

そして、その現状を。


「…ゆ、行方不明!?」


「マジかよ!?」


霊夢も魔理沙も、同様に驚く。

ふたりは信じられないといった表情で固まった。

すぐさま顔を見合わせて俯く。

しかしその口からは何も出ない。

段々と空気が重くなってきた。

その静寂を切り裂いたのは咲夜だ。


「そこで、折り入って相談が…」


その目は衰えて見えた。

その顔に見かねた霊夢は声を大きくして答える。


「相談は必要ないわ。その捜索には私たちも協力してあげる!」


「私たち…?」


魔理沙がぴくりと反応した。

咲夜も少なからず眉を動かす。


「…では、霊夢様も異変解決に…?」


「もちろんよ!」


「おいおい、わたしを巻き込むなよ…」


「でもあんた暇でしょ?」


「ぐぬ……」


ぐうの音もでないといった表情で魔理沙は不満の声を漏らした。


「それで霊夢様、どういった要件をお求めで?」


「さすがはメイド長。話が早いわね!」


「……」


この状況、しっかりと霊夢の思惑通りに進んでいた。

にやりと八重歯をちらつかせ、意地悪そうに霊夢の眉が角を上げる。


「あわよくば、異変解決の功績を譲ってもらおうなんて…?」


「では、その条件で。よろしくおねがいします」


「嘘でしょ…ホントに?」


「…おいおい、コイツの言うこと聞くってのかよ」


「こちらとしても後が無いので」


淡々と答える咲夜に、魔理沙はひとつ大きくため息を吐いた。


「条件をのんでもらえるなら有難いけど、そっちの主は何してるの?」


「お嬢様は現在、妹様の捜索にあたっています」


「なるほどね。でも、探す必要は無いと思うわよ」


「どういうことだよ、霊夢」


まだ状況が上手く飲み込めてない魔理沙がしかめっ面で口を挟む。


「そうね、少し考えてみればわかるわよ」


「いや、わかんねぇって」


「幻想郷は広い。だったらフランが行くところは限られてるんじゃないの?」


「どういうことだよ」


「あの子の性格的に、侵入者の所へ行っているハズだから。私たちは侵入者を待てばいいのよ」


「待つ…?」


「ええ。もうすぐ来るハズだから」


「…何でだよ」


「最近ね、守矢のとこの社がやられたわ」


「…は?」


「その後に攻撃は行われなかった。多分、侵入者は神社が狙いだと思うの」


「はえ~、なるほどな」


「驚きました、霊夢様にこのような才能があるとは」


「…アンタちち私を何だと思ってるの?」


「あはは、何だっていいじゃないか。それよりもわたしは侵入者の方が興味あるね」


「はああ…」


今日いちのため息を吐いた霊夢は魔理沙を睨んだ。


「な、なんだよ…」


たじろぐ魔理沙の頬を一粒の汗が流れる。

一瞬、ふたりの間を風が通り過ぎていった。

その風に晒されて、艶やかな金髪と黒髪がなびいていく。

同時に、黒い影が駆けていった。

風の勢いに合わせて移動した影はふたりから数メートルはなれた地点で停止する。

一連の動作は一秒にも満たない速度で終わり、反応に遅れた3人は片足が捕らわれたように崩れた。

背中が地面へと向かって吸われ、気付けばその身体は地に伏せていた。


「……ッ!?」


「なんだ、コレ!?」


「霊夢様、魔理沙。これは一体!?」


ゆらゆらとうごめく影を被る人影が、薄気味悪い笑みをこぼしていく。

いつしか周囲は瘴気を持ったように暗くなっていった。

そして、例外なく倒れた3人の間へと足を運んでくる。

霊夢は影と目が合った気がした。

その視線の間に言葉が飛ばされる。


「あんたが侵入者ね。こんな神社になに用かしら」


「……随分と荒い口調だ。私と敵対するつもりか?」


「そうね、あんたがこの幻想郷を侵略しようってんなら…そうせざるを得ないわ」


「そうか…残念だよ。そういえばもう継(つぐむ)君とは会ったかな?」


「継…?誰のことよ」


「知らないんならいい。彼は私らの敵だからね。先にダメージでも与えてくれてたらありがたかったんだけど…仕方ないか」


「一体何の話を…?」


「そうだ。そこにいる金髪の娘よ」


「わ、わたしか?」


「君以外にいるのかな?」


「確かにそれもそうだな…で、何の用だよ」


「ああ。もし、黒い髪をした少年に出会ったら伝えてほしいんだ」


「なんで私に…」


「残りのふたりは…ね。ちょっと信用できなくて」


「霊夢はともかく、どうして咲夜が?」


「このメイドは初めからおかしい。何て言うんだろうなぁ…まあとにかく君が一番マトモそうだ」


「ちょっと、どういうことよ…!!」


「…ホラね」


人影が両手を挙げて呆れた。

そこへ霊夢の鋭い視線が送られる。


「じゃあ、伝言を――」










最後の言葉を言い残した後、影の姿は消えていた。





ー第四章ー

 「閉隔」ー幻想魔境化ー丙

 

 博麗神社 一時陥落。


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