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幻想郷侵攻  作者: 幽夢 継
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3/16

「閉隔」ー幻想魔郷化ー乙

ー幻想郷、どこかの森ー

木々の数のせいか、自然と辺りは暗くなっている。

そんな中、二人の人影が忍び寄っていた。

一人は短い黒髪でラフな格好の青年、継(つぐむ)。

その横でひそひそと楽しげな笑みを浮かべている金髪サイドテールの少女、フラン。

その背中では宝石のような美しい羽がパタパタと揺れている。


「ねえねえお兄ちゃん、どこで遊ぶー?」


「うーん…紅魔館からはかなり離れたし、ここらへんでいいかな」


「やった!何して遊ぶ?」


フランは再び嬉しそうに羽を動かす。


「ぶっ壊してもいーい?」


「うん…えっ!?何を??」


焦る継に、フランは触れた。

その華奢な右手は文字通り、彼の身体を粉砕する。

当然、塵ひとつとして残ってはいない。

そう。

継は死んだのだ。


「あれ…お兄ちゃん…?」


フランは寂しそうな顔をしたが、それはすぐさま幻滅の眼差しへと変化する。


「お兄ちゃんもそうなんだ…やっぱり壊れちゃうんだ…」


この言葉に真意はないが、それでもフランの深く傷ついた心は溢れ出る。

しかし、ここで終わる彼ではない。

じきに継の身体は再生する。

この力もまた、彼の能力の内のひとつだ。


「スペルカード、『藤原(ふじわらの)紅色(かしき)』、カスタム『黄泉がえり』だ…」


10秒もしないうちにその肉体は塵から蘇生を得る。


「いや、いきなりやられるのは反則だよ。気付けば死亡って…たまったもんじゃない」


「ワタシ、壊れないおもちゃはじめて!」


「おもちゃって…まあいっか」


満面の笑みで駆け寄るフランに、継の心は怒る気などあり得なかった。


「あ、でも、次やるときは先に教えてくれよ?」


「うん!じゃあ今ぶっ壊してもいい?」


「え…?いや、待っ――」


継の言葉を待たずして、その身体は崩壊する。

すぐにまた元通りになるが、継の顔には不機嫌を告げる表情が浮かんでいた。


「…フラン…?」


瞳には若干の怒りがある。

さすがにヤバイと思ったのか、フランの額にも汗が流れている。


「あ、あれ…?お兄ちゃん?」


ジリジリと詰め寄る継。

フランを二回りほど大きな影が覆った。


「次、僕のこと破壊したら…」


「したら…?」


フランは目を大きく見開き、息をのむ。

少しの溜めを置いてから、継の口は開かれた。


「もう遊んであげない…!」


「えぇ~!!ヤダっ!」


意地悪く言い放たれる言葉に、フランは大きく反応する。

ムキになって子どものように反抗する姿。

それに加えて、必死の言い訳を投げつける。


「だってだって…!ワタシが触ればみんな壊れちゃうんだもん!壊れても大丈夫なの、お兄ちゃんだけだもん!!」


ついには泣き出すしだい。

継としては勘弁してほしいのだ。

気が動転しつつもあやす言葉を綴る。


「いや…ホラ大丈夫だって、僕そもそも壊れないようにできるしさ!常に力を使ってれば手だって繋げるし!…ね?」


継はしばらくあれこれと、とにかく色々喋った。

その努力が実を結び、フランは落ち着きを取り戻す。


「ホント…?ホントにワタシが触れても壊れない?」


「もちろんもちろん。なにをしても壊れないよ」


「じゃあ手、握って…」


フランはふてくされた顔で右手を差し出す。

散々泣いた後が目の下で赤くなって見える。


「……え?」


しかし継は状況がうまく読めていない。

その証拠に間抜けな顔で固まっている。


「……えいっ!」


一向に動かない継の右手をフランは強引に結んだ。

その後しばらく疑いの目でじろじろ見まわしていたが、やはりなんの影響もなくなっているのがわかるところっと表情はかわり、目に光を携えて喜ぶ。


「わっ!すごーい!ホントに壊れないね、お兄ちゃん‼」


「とっ…当然だろ?僕の力を使えばこんなのへっちゃらだって」


「お兄ちゃんの力…?」


「…うん、そこらへんの神様だって敵にはならないよ」


「わあ!ちょー強いんだね、お兄ちゃん!」


「…そ、そだね…」


「…お兄ちゃん?」


ここでフランはふと気づく。

継の様子がおかしいことに。

しかし、それが何かはまだ幼く見える彼女には理解しがたいものであった。

訝しげに見つめる少女よ視線を無視して沈黙を続ける継の瞳は心ここに有らずといった感じだ。

再び会話を試みるフラン。


「ねえ、お兄ちゃん!」


「あ、ああ…いや、大丈夫…」


漸(ようや)く口を開いたその反応は妙に歯切れが悪かった。

いや、回答を拒んでいるようにも思える。

とにかくその後の継はどこかよそよそしい態度をなしていた。

暫く見つめ合った二人の間にふとした瞬間、その静寂を裂く出来事が起こった。


「ガラガラッ――!!」


壮絶な音を立てて何かが崖からずり落ちてくる気配が漂う。

自然に、継は庇護欲のままにフランを手で覆い守る姿勢をとった。

だが二人は以前と、なんだなんだと言わんばかりの間抜け顔で静止している。

それから頬をスルリと汗が流れた。

それは生暖かいでも、熱いでもなく、冷たいものだった。

静かに見送る砂埃の中をフランと継の互いの視線が交差する。

やがて継の口から慎重な口ぶりの言葉が放たれた。


「フラン…少し下がっててもらえる?」


継がフランよりも先に感じていた感覚。

第六感とも呼べるそのセンスは、鈍くもその心に不安と言われる感情を植え付けていった。


再度、汗が滲む。


目の前のものは確実に自分等に害をなすものだとわかる。

継が呼び掛ける。


「お前は、なんだ?」


「(うごうご…)」


言葉とは到底判断できない鈍い音が波を打ちながら揺れていた。

人ではない。

しかし、機械らしからぬ生き物。

じきにその全容が見えてきた。

薄茶いろの砂埃から視界を取り戻して、その曇りない眼(まなこ)で凝視する。


「なんだ…!?これ…」


呆けた表情で固まる継にフランは問いかける。


「お兄ちゃん、あれは?」


すかさず継は答えた。


「…わからない」


一度は神より上と表した己の力を得てしても、「ソレ」が何なのかは不明だった。

継自身、「ソレ」と相対することなど今までの人生で一度もなかった。

どす黒く、形容し難い何か。

かつてない焦りが、彼の判断を鈍らせる。

即座に伸びたその触手は、継の真っ正面へ飛び込んできた。


「――ッ!?」


反応に遅れた継は、まんまとその手中に捕らえられた。


「お兄ちゃん!」


フランが激しい焦りを帯びた声色で叫ぶ。

一瞬、彼と彼女の視線は通ったが、通過という事実で離された。


「フラン、一度ここから離れろ!」


一心不乱に掛け声を上げる継に対し、フランは目の前で起こる当然理解し難い状況に、立ち尽くしている他なかった。

そうしている内に、漆黒の触手は次の動きに出る。


「(ゴロロロロロッ!!)」


やはりそれを言葉とは認識できない。

あくまで咆哮。

されど、咆哮。

身を穿つ衝撃と迫力が振りかざされた脅威。

幼子であれば泣き叫んでいただろう。

しかし相手は継。

神に等しいかつそれを越えるまである、余りきった力は振るうまでもなく、その異形のものに対峙した。

効力は間を与えず、身震うほどの殺気が漂う。

さすがに異形のものも、生物である以上はその生存本能に付き従う他なかった。

いきなりの出来事ではあったが、慌てふためく唸り声とも聞こえる音を、森の奥へ轟かせながら疾走していった。


約数秒にも満たなかった一事が終わり、一件は落着への糸口を手繰り寄せた。

後になって、継はフランの状態を確認し始める。


「フラン、大丈夫か!?」


「………」


返事はない。

森の奥へと響くその声は、一回りして返ってきた。

やがて継の心中に再び焦りが芽生える。

今度は先程よりも多く汗をかいている。

継はそらを実感していた。

暗闇に立ち昇る瘴気が揺らぐ。


気付けばそこは、邪悪な気配に満ち満ちていた。




――幻想郷、永遠亭


薄暗いが、仄かな光がさす霧の中。

それは、白く輝く雪化粧のようだった。

幾百をも優に越える竹藪(たけやぶ)の数。

その間にそびえ立つ質素な造りの建物。

それからは日本の古き伝統を感じずにはいられないような、堂々とした存在を語っている。

事実だった。

どこを取り測っても完全なまでに、モダンの気配など微塵も感じはしない。

同時に、そこに住む者の誠実さ、堅実さ、謙虚さを連想させられた。

庭に広がる吹き抜けの造りをした縁側の廊下きら、人とおぼしき影がかけ出てくる。

急ぎ、何処かへ向かっている様子。

腕を大きく前後に揺さぶりながらその長い黒髪がただ靡(なび)く。

その面妖な容姿は、やはり古い日本のものに近いと見て相違なかった。

それでいて神聖さを孕んでいる。

例えるなら…輝夜姫。

床まで届いていたその長髪は、ひとつ区切った障子の前で行きとどまった。

頬に若干の汗を含んで息を荒げている。

決して小さいとは言えない大きさの屋敷だが、たしかに声を荒げて大きいとは言えない位の広さ。

その中を移動するだけでここまで体力の消耗を訴えている様。

成る程、よっぽど体力が少ないのだろう。

ぜえぜえと肩を動かしてから、少しばかり落ち着いた表情へと変わる。


そして、屋敷の雰囲気とは裏腹に、放たれた第一声。


「ねえ、えーりん!」


可憐でも、淑(しと)やかでもない、どこか図々しい声がひた語る。


「えーりん!早く来てよ。もう、大変なんだからー!!」


癇癪(かんしゃく)を起こした子供のように喚く声。

その口調には怒りも込められていると理解できた。

その怒声を見かねて、眼前の障子扉からスッと姿を表したのは、やはりこれまでに見たこともないような、幻想的な服装の女性だった。

そして彼女は真顔のまま両足を前に運んで、一歩先進した形になる。

仄かに灯る照明がある一室から出てきたのだ。

無表情の視線は先程の輝夜姫へと落とされる。

そして、押し黙る。

変わらず、輝夜姫の顔には怒りを含んだあるいは切羽詰まった感情が渦巻いていた。

女性は輝夜姫から少しばかり目を反らすと、何を思ったのか一粒の涙を溢す。


「ああ、姫様が自主的に外に…ッ!」


何とも信じ難い発言。

まるでこの輝夜姫が長年自室に引きこもっているNEET(ニート)のような扱い。

必然的に、輝夜姫の表情が曇る。

同時に別の言葉を発していた。


「泣いてる場合じゃないのよ!ホントに大変なの!!」


一度話が通じなかった彼女を相手に、輝夜姫はしつこく迫る。

だが女性は相変わらずの態度と表情で返答をした。


「さあ姫様、なんのご用でしょうか?もしかして、こういったものを…?」


あたかも自然な口調を続けながら、どこから取り出したかもわからない一冊を輝夜姫の前に差し出した。

そこには数メートル離れていてもわかるぐらいしつこい主張で見出しを飾るキャッチコピーが記されてあった。

輝夜姫がよく目を通すとこう書いてあった。


『オタク、ニート必見!元引きこもりの外出方法!!ー2ー』


二番を主張していることからも、一定数からの支持はあるのだろう。

しかし、きちんと腹立たしい。

いったいこのふざけたタイトルの雑誌は何を伝えたいのか。

…意味不明だ。


ゆでダコになる輝夜姫の顔が、もう次の言葉を勢いよく発射する準備をしていた。


「それより永林!ちょっと奥に来てってば!!」


初めからそんな下らないものは求めていないといった、輝夜姫の強い感情が入り混じっている。

さすがに話が進まないので、輝夜姫は女性の腕をやたら強引に引っ張っていく。

彼女が連れ出した先は、屋敷の広い庭だった。

月夜の光が薄く差し掛かる、穏やかな庭だ。

しかし、よく見るとそこには普段ではあり得ては行けないものが出現していた。


輝夜姫が指差し、驚きつつもその先に目線を飛ばしていく。

やがて女性が目をこらす。


そこには、全く形容し難いものが浮かんでいた。

実際には、浮かんでいるでも存在しているでもない。

実際には、そこに、ただあった。

それはある種亀裂の様に見えたし、ある種歪みにも見えた。

小さく開かれた裂け目からは、ここ幻想郷ならざる世界の側面が張り付けてあった。

二人はこの現象の名前を知っている。


「これは…異変?」


この世界ではそう表現する他なかった。

でもたしかに、普通ならこんなことはあり得ないのだから、異変以外の何物でもない。

輝夜姫と女性はきょとんと顔を見合わせる。

状況を上手く飲み込めていないといった表情。

確かに目の前にあるものが、一体何であるのかという問いに、答えを成してくれる者は回りにはいなかった。

無言と静寂が二人の間を突き抜ける。

しかし、実のところを言うと永林は何が起ころうといているのか、だいたいの検討はついていた。

その上で、彼女は押し黙っている。

事態の危険さを知っている彼女だからこそ。

彼女としても本意ではないものの、この情報を他者に知らせることはこの場においては賢いとは言えない。

…そう、考えたからである。


永遠亭の静かな庭だけでなくどこかしこでも、ひとりとの全面せんそうは激化していく…





ー幻想郷、白玉楼


「いち、に、さん…」


開けた土地に立つ家の隣、石畳の上で、淡白な声がカウントを繰り返している。

静けたこの場所では、その声はよく響くものだった。

ひたむきに剣を振り、その一心には澄んだ努力を宿している。

彼女の額を流れる汗は、紛れもない努力の汗だ。

幻想郷の中で、そのような者はひとりしか見当たらない。

そう。ここ白玉楼の庭師である、魂魄(こんぱく)妖夢(ようむ)だ。

彼女は艶やかな銀髪のショートボブに空のような青さを孕んだ碧眼を両目に宿している。

純白の薄着に、その上からは深緑の織物を纏う。

そしてその腰に携えるが刀は、妖夢の持つ2本の帯刀「楼観剣(ろうかんけん)」と「白楼剣(はくろうけん)」である。

それらが、彼女の素振りを行う度に重なり音をなしていた。


「フゥーッ…」


妖夢の隣にもうひとり。

大きなため息を飛ばしている女性がいた。

おっとりとした眼で、遠くを見つめながら穏やかに佇んでいる。

この見るからに厄介そうな者は、現在妖夢が遣える主、「西行寺(さいぎょうじ)幽々子(ゆゆこ)」だ。

またも、幽々子はぼーっとそらを見上げてあくびをする。

この生物をじっと観察していると、可哀想だと、哀れみの感情が沸いてくる。

それほどまでに、彼女にとっての人生は退屈そうに見えた。


涼しさを運ぶ風が通りすぎた後、実に短い間を開けてから、事態は進行する。


「パキ…パキリ…ッ」


その音は決して大きいものではなかったが、静寂を過ごす二人の耳朶にはさし当たってよく聞こえた。

じきに妖夢が反応を示す。


「あの、幽々子様…?煎餅(せんべい)は家の中でって…―」


振り返り叱責する彼女の言葉がふと留まった。

なにやら言葉に悩んでいるようだった。

妖夢は先程の軽快な崩壊音を、幽々子の頬張る煎餅が原因と推測していた。

しかし、眼前にはだらけ脱力する惨めな主人の顔があった。

やや間抜けな表情ではあったが、その手にも、頬にも、煎餅を食べていたと連想させるらしいものは見当たらない。


「………?」


小首を傾げて疑問を表す。

それは、幽々子に確認をとっているようにもとれた。

それに対して、幽々子はゆっくりと返す。


「まさか~、お煎餅なんて食べてないわよ?」


妖夢が眉を潜める。

やはり腑に落ちないのだろう。

しかし、先程の亀裂音を聞いたのは幽々子も同じこと。

二人は目を合わせて同時に「?」と違和感を顔にみせる。


と、その時だった。


「バリィ…パリッ…!」


先程よりも鮮明に耳に入る。

そしてソレが現れた。

そう、今、幻想郷各地で発生している謎の裂け目である。


「――!?」


二人揃って同じ反応。

その裂け目は、なんともわかりやすそうに妖夢と幽々子を挟んだ間に割って入ったのだから。

狭間の奥で、何かがうごめいている。

そして、穏やかな空気と日光を浴びる。

自然とその隙間に、妖夢は近づいていた。

危ないという感覚は置き去りにして。

それよりも先に、その奥に見えた何かが引っ掛かった。

目をこらして凝視する。

細めた視線が鋭く捕らえたのは、ひとりの老人だった。

不精髭を伸ばした白髪の老父。

されどその面持ちには力を感じるものがあった。

その顔をふと見て驚愕し、唖然とし、思考が停止する。

一瞬にしてかき乱された妖夢の心の中で、漸く紡ぎだされた言葉が、音となって喉を透ける。


「おじい…ちゃん?」


驚き。疑い。

だいたいはその感情だけで今の妖夢を形成していた。

その口から発せられたのは、かつて自身を孫として育ててくれた先代の庭師、「魂魄(こんぱく)妖忌(ようき)」の名だったのだ。


「…!?妖夢…?」


対岸からも似た反応が返ってくる。

これでは間違いようもない。


狭間に遮られた二人の視線は何度も交差し合う。

じきに、幽々子も駆け寄ってきた。


「あなた…妖忌?」


後方から発せられた声に忙しなく反応する妖忌。


「…!もしや、幽々子様か!?」


この状況に対して、妖夢と違い殆ど勘で生きている妖忌は困惑など等に去り、興奮すら覚えていた。

俄然、目には瞬く光が差している。


「おじいちゃん、おじいちゃん、本当にそこにいるのですか!?」


この幻想郷から、突如として姿を消した祖父妖忌との再開に、漸く妖夢の声にも光が宿ってくる。


「ああ、妖夢!今、そっちに行くぞ!!」


妖忌の口からは、そんな突拍子もない言葉が飛び出してきた。


「ええっ!?そんな、無茶な…!」


対する妖夢もこの様である。

確かに姿はかろうじて見えるものの、この大きさでは、ひとひとりが通って出られるようなものではないことなど、容易に理解できる。

しかし、妖忌は再度言った。


「待ってろ、直ぐにそっちに行ってやる!」


妖夢の話などは、もう左から入り右から流れていってしまっている。

こんな性格のせいなのか、確かに長い間幻想郷から隔絶された世界で生きていたのかもしれない、と妖夢の心中がやや呆れ気味に傾いた。


しかし、妖夢の小さな幻滅は一瞬にして断ち切られた。

文字通り、断ち切られたのだ。

裂け目が大きく広がって、元の何倍もの大きさを保っている。

何が起こったのか。

それは、考えるまでもなかった。

単純に、妖忌が自身の木刀で裂け目を思い切り叩いたのだ。

案の定が現状である。

唖然と立ち尽くす妖夢と幽々子。


「あら…!」


簡単の声を漏らす幽々子が、左手を上品に口に当てた。

二の動きで、妖忌は幻想郷に踏み入った。


「……!!」


妖夢の心は、久方ぶりの家族との再開で抑揚が高くなっていることだろう。

それは、明らかに再開だった。


まごうことなき、再開であった。





ー第三章ー

 閉隔(へいかく)ー幻想魔境化ー乙

 フランドール・スカーレットの行方不明。

 魂魄妖忌の幻想返りを確認。


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