ー計画性始動ー
ー幻想郷、迷いの竹林
「……やけに静かだな。輝夜はどこ行った?…そういやてゐもいないようだし…怪しい。ここで何かがあった…?」
ー幻想郷、太陽の畑
「やってくれたわね……貴方たち、覚悟はできてるのかしら?」
ー幻想郷、地霊殿
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「何か、胸騒ぎがする…」
「えー?何にも感じないよ?」
「この幻想郷が叫んでる。これは厄災の予兆…?」
ー幻想郷、霧の湖
「だりゃーっ!っどーだバケモノ!!」
「わあ、すごいチルノちゃん!あの手強い化け物を一瞬で…!」
「やっぱりあたいったら最強ね!まだたくさんいるようだしワクワクね!さて、次の獲物はー?」
「あ、待ってよチルノちゃーん!!」
ー幻想郷、八雲邸
「私としたことが…出遅れすぎね、これは……」
「どうしますか?紫さま」
「取り敢えずお馴染みのあそこへ行くしかないわね…先に様子見を済ませてからだけど」
ー幻想郷、博麗神社
「右に下がれ、継!」
中年ぐらい年齢が行っていそうな男の声が張り詰めた空気を割いた。
その言葉に合わせるようにして一人の少年が後方に飛ぶ。
次の瞬間にはその少年の居た場所が抉れて、塵となった。
「ごめんユメミ」
継と呼ばれていた彼は自身の横に立つ、先ほどの大男に言う。
「いやあ、それにしても手強いね…」
「あれ、分身なんだろ?本体ってどんだけ…」
「ホントに」
そう短い会話を済ませて、再びふたりは別の支点へ移動した。
そこからあまり時差もなくして同じように地面が抉れる。
「どうにかならんのか!?ユメミよ!」
今度は大男の脇から小さな少女が飛び出した。
彼女も等しく先程から続く謎の攻撃に苦しまされているようだ。
不満気に眉を寄せている。
「全く…君らも小賢しいね。早く殺してあげようと言ってるんだから、潔くなればいいじゃないか」
ちょこまかと動き回るフリーランス計5名相手に、ようやく黒い影の者が口を開いた。
やはりその内容は到底穏やかとは言えないものである。
「そっちこそ、本体を連れてきなよ。ボクらもそこまでやわじゃないんだからさ」
「バカ、ユメミ!これ以上強いの呼んでどーするんだ!」
大男の言葉に、やや濃い紺色のパーカーを着た少年が叫んだ。
彼も黒影の回りを行く内のひとりなのだが、どうやら既に限界を感じているようだ。
「二体も相手してらんねーぞ!?」
「やっぱりそうだよねー…」
大男はそう言って残念がる。
しかし彼は立ち続けにこうも言った。
「…でも倒せない訳じゃないんだろ?」
やがてフードの少年が不適に笑み言葉を落とす。
「かなりの博打だよ?」
「いいさ、それを可能にするためにボクらは集まってるんだから」
「無茶するね…じゃあキヴァの姉さんを呼んで!」
「呼んだか?」
そこから時差なくして彼女が姿を現した。
「おわっ、どこからでてきたの?」
当然よ如く驚きを露にするフードの少年。
「なんじゃお主、そこまで驚かんくてもよかろう」
「いや驚くでしょ…」
「そんなことはどうでもいい!お主、わしになにをしろと?」
「ああ、それはね―」
それから彼は長々と自身の計算と予測に順序立てた作戦を伝えた。
そこで、しばらく黙って聞いていた少女が難しい顔をして口を開く。
「つまり、お主はわしらを囮にして本体を連れてくると…?」
「ものすんごく要約されたんだけど…まあ大方そんなとこだね」
フードの少年が言うと、少女はふんと鼻を鳴らして腕を組んだ。
「まあかまわん。じゃがその代わりにお主、必ずその本体を連れてくるんじゃな。わしはあのような偽者と戦う気力など持ち合わせておらんでな」
「うわ~…」
少女の返した言葉にフードの少年の顔は歪んでしまう。
すかさず隣の大男が口を挟む。
「でもキヴァちゃん、さっきまであの偽者相手に逃げ回ってたようだけど。ホントに勝てるのかな?」
「はぁ……!?」
少女は今にも爆発しそうな表情で怒りを露わにした。
しかし大男はふざけた態度でやれやれと両手を挙げる。
この危機的状況の中でもそのマイペースは乱れないようだ。
続く衝撃波が三人の間を駆け行き襲う。
「――ッ⁉」
再び緊張感が戻り、会話はここで途切れた。
「お、お主っ…ぼさっとしてないで早く行けェ‼」
焦った少女の言葉を最後にフードの少年は一気に駆けだす。
彼も大男たちと同じように超能力を持っているのか、その姿はすぐに見えなくなった。
「さて?キ゚ヴァちゃん、ボクらは足止め…だね」
「それはお主の役目じゃろうて、わしはホントに偽者とは戦わんぞ?」
「んなあほな。ボク一人でどうしろって?」
「いやいや、誰も一人でやれとは言っとらんぞ。ほれ見よ」
そういいながら少女が指さす方向に大男がめをやると、そこには二人ほど臨戦態勢を構えている者がいた。
ここで大男はフンと微笑する。
「あやつらがいるではないか」
その横には不敵な笑みを浮かべる少女。
果たして彼がとる行動とは。
次第に少女につられ、大男の口元にも企みのある笑顔が現れる。
「悪い顔になっておるぞ、ユメミよ」
「そうだね…自覚あるよ」
大男はそのまま遠くの二人を見つめている。
次の瞬間、風の流動とともに男の姿が視界から消え失せた。
「やあ、諸君」
あえて明るい口調でつぶやいた大男は、固まって忍ぶ二人の背後から覆いかぶさった。
「おわっ、ユメミ⁉」
先に反応を示したのは少年のほうだ。
突然のことにかなり動揺している。
「どーも。二人とも生きてる?」
「見たらわかるでしょ…」
と、少年はため息混じりにこぼす。
「ツギくんがやつの本体を連れてくるらしいんだ。それまでボクらで食い止めるよ!」
「ちょっと、ユメミ。キヴァ姫はどうするんだ?あんなとこに突っ立って…まさか戦わないとか言わないよね?」
少年の横に並ぶ男が慌てたように答えた。
その後残念そうに首をふる大男の顔を見てうつむく。
「そうか…俺たちここで死ぬのか」
その目は本気だ。
「んな大袈裟な…」
少年が呆れた表情で言い返す。
しかしこの男は少々怯えすぎだというのも事実。
普段からも彼はこうやって自暴自棄及び沈んだ空気を目に纏っているのだが、これはもはや常軌を逸していると言っても過言ではないだろう。
一方の彼には、残念ながらそのような自覚はない。
「そんなことよりも、継くん。君はツギくんと一緒にとある場所へ向かってほしい」
「ええっ…?なんで?」
「はじめは君も使おうと思ったんだけどね、ツギくんひとりだと少々戦力に劣るかもだから…」
「だからって、あれ相手に二人だけじゃ‥」
「いや、問題ないよ」
そう言いながら大男はサムズアップして見せた。
やや不満の募る表情をしている少年だが、ここは彼に従うことにしたようだ。
すぐさまフードの少年を追って駆け出した。
「わかった。死ぬなよ…ユメミ、シドさん」
「わかってるさ」
それから間もなくして少年は姿が見えなくなった。
ここに残るはがたいのいい男二人とか弱そうなフリをしている少女のみ。
「さて。シド、行けるよね?」
大男が横に確認をとる。
「死ぬのはごめんだが、やるしかない…」
少し不穏な表現が入っていたが、準備は万端のようだ。
「それじゃあ、行くかい」
ー第9章ー
計画性始動
フリーランスの別行動開始




