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魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから  作者: 恋月みりん


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11章 魔王編外伝

 91章 少女の思い出



         

 少女は、私がいつか自分を食べようとしている、そう考えているのも知っていました。



 ある時でした、私の体力が回復し、そして、少女とも気安い付き合いになっていました。


 だからでしょう、私はうっかり魔物の姿を、少女に晒してしまった。



 彼女も、自分も、その時、全てを悟りました。もうママゴトは続けられないと。




 私は、ここでも村から追い出される、そう覚悟したのです。でも、少女の考えは違った。私に両手を広げて、自分を食べてもいいと言ったんです。

 そうすれば、次の村まで逃げ延びることが出来るだろうと。



 私は驚き、なぜなのか少女に聞きました。


        

「自分は、ひどく痩せていて薄汚く貧乏だ。こんな寒村で、枯れ木のような老女になるまで、働き詰めて、苦役のような人生を送るより、誰か誰か、困った人のために命を捧げられる方がいい」



「誰かに、何かをあげられるうちに、何かを積み上げたいの」



 少女は、そのように話します。



 もちろん、当時の私にとってそんな考え方がある事すら分からなかった考えです。



 なので、意外かも知れませんが、私は実に人間らしい反応を返しました。



「そんな事を考えてはいけない。生き物というのは最後の最後まで、自分のためだけに生きる事を考えなければいけない。」



 私は少女にそう答え、諭しました。

       

       


 少女はぽつりと、答えます。



「もう、いいの、死ねば休める。


 母さんにも会える、いい事しかない。」




 少女の日常は、継母にこき使われ、いつも働けノロマと怒鳴られていて、継母に酷く叩かれていました。


 彼女は、そんな労働の隙を見て、私のところにやってきていた。


 その事で、彼女を同情的に見ていたのを覚えています。



          ♢



「私の母さん、身体が弱かったの。


 そんな、母さんは、わたしを産んですぐに働きづめにさせられて、死んじゃった。


 でも、誰のせいでもない、そうしなければ食べていけなかった。この村で生きるには、立っている者は働くしかないの。」




「………… 」




「だけど、こんな荷物引(にもつひ)きの痩せロバのような人生を送るより、死んでしまった方が、いつそ清々(すがすが)しいわ。」



 少女はまるで夢見るような、うっとりとした目でそう語ります。



「そう……それなら、誰かのためになる死を。そうすれば神さまだって、そうケチでは無いはず。きっと天国でわたしを幸せにしてくれるわ。」




         ♢




 それからです、私が、少女のため、ひいては彼女を取り巻く人間の世界の為に働こうと、そう決意したのは。


 こう考えたのは私が変わり者の魔物だったから、もちろんそうです。



 普通の魔物は、それに感動するほどお人好しでは有りません。



 少女の、その掛け値なしの善意。



 それに魔物の私は感動するというより、そんな異次元の考え方が有る、という事に感動し、世界の見方が変わったのです。



 まあそうです、私は魔族としては、風変わりなタイプの魔物で、だからこそ魔物の世界である魔大陸から追い出され、人間の世界へと流れついたのですから。




         ♢




 だから、私は人間と共に暮らす事を選んだ、つまりそう言うお話なのです。



 異端審問官の判事は、お終いまで聞いて、そして口を開いた。



「なるほど、これは、人の善意に訴えるもっともらしい話だな。


 だが、我々人間はお前達、魔族が嘘をつくのに、何の良心の呵責も持たない事を知っている。


 それこそ、騙し力ずくで奪う事が、善行だとする、倫理観なのを知っている。


 はっきり言おう、この嘘つきめ!」




「お前らが、善人のふりをするのはいつだって、相手を騙すためだ!


 村人を食い、女を犯すのはいつだ?


 お前には魔物として、人間の娯楽のため、見せ物としての処刑を執行させよう」




「…………」




「被告人ロウジン、お前を有罪とし、極刑に処す!」



 判決を言い渡され、一瞬、村長の顔がビクっと引きつったように見えた。


 外側からは分からない、彼の胸の内に様々な想いが去来していたのかもしれない。



      

           ♢




「本日の法廷は、これにて閉廷とする!」



「その魔物をウジのわく、汚物まみれ、ネズミだらけの牢屋にぶち込んでおけ!」



 そう言い渡すと、判事は裁判を閉廷した。



あとがき


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― 新着の感想 ―
倫理観の相違、あらかじめ定められた極刑。 相容れない存在だからこそ、その溝はどうしようもないのかもしれない。 そして、あえて劣悪な環境を指定しての投獄。 救いがあることを祈っていますが、救いがないから…
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