表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから  作者: 恋月みりん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/77

8章 魔王編外伝

86章 泥流




 山の(ふもと)の美しい村だった。


 

 山裾から地平線まで続く水田が、夕焼けに染まる黄昏(たそが)れどき。空の茜色が水鏡のように水面に反射し世界全体が、オレンジと紫のグラデーションに包まれた。



 その中にぽつりぽつり、民家とそれを囲む木々が、とび島のように点在している。



 村を見渡せる高い丘で、魔王は、この村の老村長と話をしていた。



「どうです、美しいでしょう」



「………そうだな」



 魔王が答えると、老村長は満足したように、話を始める。



「この村ができるまで、50年。50年かかりました。人間からみたら長い長い年月です。


 何もない、人が通れるような道もないところから始めて、この手で雑木を一本一本手斧で切り倒し、額に汗して懸命に働きました。


 そうやって人間達と協力して、この村を作っていったんです」



「…………」



 老村長は、あらたまり魔王に自ら胸の内を伝える。



「私は、彼ら人間の中に分けいって暮らし、彼らのひたむきさ儚さを知りました。


 そして、彼ら人間を愛おしく思うようになったのです」



 魔王は、黙ってこの話を聞いていたが、それでも老婆心から、この老村長に警告をする。



「あまり、村人に肩入れしない方がいい。


 お前が魔族だとわかれば、恩義など忘れ、奴ら人間は裏切り、お前の命さえ奪われることになるだろう」



 そうして、魔王はこうつけくわえる。



「人間とは、そういう生き物だ」



「わかってます。それでも私はこの村と村人を家族のように考えてしまうのですよ」




「そうか。なら、勝手にしろ。


 だが人間どもに情けをかけたとて、いずれ魔族として断罪され、処刑されるのがおちだろう」



 魔王は、突き放すように老村長にそう言った。



           ♢



 ──時は過ぎて、嵐の夜だった。



 かねてからの暴風と豪雨が、何日も続いていた。



 トト山の(みね)は、この大嵐に耐えきれず、千年も堅牢だった渓谷(けいこく)の崖は崩れて、下流の村へ轟音(ごうおん)と共に、大量の土砂が流れ込んできた。



 家々は流され、村人たちもまた濁流に飲み込まれた。



 かの村も重大な被害を受け、人々は土砂や崩れた家の下敷きとなり、多数が生き埋めとなってしまった。



 そんな嵐の中、村の男たちは必死に、生き残りを捜索して、声を張り上げている。



「ここだ、この下に、子供が埋まっているぞ!」



 捜索をしていた、村の男衆の1人が声を張り上げ、灯りを持った手を大きく振って合図している。



 みると巨大な岩が、家を押しつぶし、奥から子供のか細い泣き声が聞こえてくる。



「……かあ……ちゃん………かあ……ちゃん………」



 見ると確かに、子供の姿がわずかばかりの隙間から見えている。



 その様子を村人達は、狼狽(うろた)えながら眺めていた。


 その場にいた誰もが気づいていた。とても、この家を潰している巨岩を人間の手でどかす事は出来ないだろう。



 それでもこの子供の母親は、悲痛な面持ちで村人たちに懇願した。



「お願いです、みな様!この子を、カズジを助けてください!


 村人、みんなで岩を掘れば助かるかも知れません!」



 いつ崩れるかわからない、もろい足場。村人は息を呑み、一向に動く気配が無い。



 ──痛いほどの、豪雨が勢いをます。



 捜索隊の男衆は、その場にいる責任者、老村長がどうするのか、その出方を伺った。




 老村長は、かつての魔王の言葉を思い出す。




「── お前が魔族だとわかれば、いずれ奴らに裏切られ、断罪され処刑されるだろう」




 岩の隙間から聞こえた、子供の声がだんだんとか細く聞こえなくなってきた。



「………かぁ……ちゃ……」



 苦悩を浮かべた、村長は、この子供の声を聞き、何事かを決断する。



 雷鳴がひとつ、近くで(ひらめ)き地を這うような轟音が広がった。



 ざあざあとした雨音だけが、あたりに響いている。



 固唾をのみながら、成り行きを見守る男衆。



 急に、老村長が人とは思えないような、咆哮(ほうこう)をあげた。



《ヴォーーンッッ!!》



 雷鳴を浴びながら、ドス黒いシルエットが、みるみるうちに、人間離れした形となった。


 老村長は、異音をともない、奇怪な化け物に変形していく。



《バキッ……バキバキバキ!!!》



 こうして、老村長は、見るも恐ろしい魔物へと変身をとげた。



 真夜中の嵐と雷に()らされた、その姿に村人は怯え、子供の母親さえも悲鳴を上げ、その場から、一目散に逃げ出した。



          ♢




 半刻(はんこく)ばかり過ぎただろうか、嵐はすっかりおとなしくなり、あたりは静かになった。



 例の老村長は元の人間の姿に戻り、生き埋められた例の子供と、流されたいく人かの村人達を連れて、避難している村人の元へ戻ってきた。



 あの姿は幻のだったのだろうか。



 そうだきっと、そうに違いない。そういう事にしょうと、あの場にいた村人達は考え始めていた。



 そうして、あれは嵐の中でみた幻なのだと、村人達は無理にでも納得する事にした。


 そのためその後も、誰も嵐の夜の出来事を口にしようとはしなかった。




          ♢




 けれど、運命の女神はどんな(ほころ)びも許さない。



 平穏は長くは続かなかった。



「村長は魔族だ!!」



 誰かがそう叫んだ。



 見るとそれは、村一番の嫌われ者、気がふれていると、噂される老女だった。


あとがき


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


と思ったら


作品下にある★から、作品の応援お願いいたします。


《pt》をいただけると、大変励みになります。


面白くても、つまらなくても、正直に感じた気持ちを《コメント》していただけると、今後につながってありがたいです。


《レビュー》などいただけると、泣いて喜びます。


また誤字脱字ありましたら、教えていただけると大変ありがたいです。


《ブックマーク》もいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ