6〜7章 魔王編外伝
6話 東ソドム地方の魔畜管工場
魔大陸に程近い、東ソドム地方。その一帯に魔畜管工場は建てられていた。
工場の施設に併設された、トタン製の高層の建物。
このサイロの様な高い建物は、死体処理場となっていて、もう継続利用が不可能な部品、使用済みの魔物の子供を、この高所から下の深い穴に落とし、処理する為に作られていた。
魔王は看守たちを脅し、ようやくこの施設の正確な位置を知ることができた。
人間は本能的に死を忌避する。警備の手薄なここの場所は、とても侵入がたやすかった。
足元をのぞきこむと、暗い闇の底に折り重なった魔物の子供の死体がうず高く積まれているのが見える。
胸を悪くするような、悪臭が高いトタン製の建物まで上ってきていた。
7話 ロムルスとレムス
東ソドムの魔畜管製造工場。
魔族の奴隷市場で仕入れられた、子供たちは、魔畜管工場に連れて行かれ、ここで魔畜管の原料となる。
魔物の血液には、魔力が溶け込んでいる。これは、魔力それ自体が体内を流れていると言ってもよかった。
特に子供の血液には純度の高い魔力が流れており、これが魔蓄管を製造するのに大変都合が良かった。
具体的な製造方法としては、捕らえた魔物の子供に、尖った管を刺し、血液を抜く。
手足を縛られた、魔物の子供は涙を流し、死ぬまでここで血を抜かれ続けるのである。
そうして血液を桶に溜め、そこから原料の血液は貯水槽に集められ、圧縮。魔力強化ガラスに詰められ、魔蓄管と呼ばれて出荷される。
人間のあらゆる便利な魔道具には、この魔力電池が使われている。これは、現代の世界で言うところの化石燃料(石油)のような、扱いだった。
そして現代世界と同様に、人間と魔族との大戦争の直接の原因だった。
♢
薄暗い工場プラント。
闇市場で盗みを働き、裏社会の魔物の用心棒たちに捕らえられた、魔族の兄弟ロムルスとレムス。彼らは、この東ソドム魔畜管工場に連れて来られていた。
2人は奴隷として売り飛ばされ、この工場で魔畜管の原料として、死を待つのみの存在となっていた。
♢
地下の牢獄は薄暗く、ぬらぬらと湿り汚い。その牢獄で兄弟たち二人は目を覚ます。
「兄ちゃん、俺たちどうなっちゃうんだろうね」
すでに、手足を拘束され採血用の管に繋がれた、弟のレムスが兄に話しかける。
「さあ、死ぬまで、ここで繋がれて、血液を取ら続けるんだろう」
同じく拘束され管に繋がれた兄が、ワザと何でもない風を装い、弟に答える。
「……ぐずっ……ぐずっ……」
弟レムスは兄に怒られるのが怖いのか、声を立てずに泣きはじめる。
「……おい。泣くなよ、大丈夫だ。兄ちゃんが絶対なんとかする!」
「ふぇぇーーん」
暗い工場のラボに、弟の泣き声だけが響き渡っていた。
♢
それから3日が過ぎた。
「レムス、ここを出たら、元の街へもどらず、別の街へ行こう。もっと景気のいい所で稼ごうぜ」
「………… 」
「おい!レムス聞いてるのか?」
「……ん。そうだ……ね」
「………レムス、頑張れ、頑張れよ。絶対大丈夫だ俺を信じろ!」
『兄……ちゃん、ごめん……そろそろ、もう僕』
「……おい!おい!レムス!」
「………………… 」
「おい!やめろ、これ以上弟を不幸にするな!
魔物の神様は、俺達の何がそんなに憎くて、こんな仕打ちをするんだよ!
俺達が見えてるのかよ!これを、なんとも思わないのかよ。
可哀想だとは、思わないのかよ!」
弟レムスは最後の気力で、乾いた口を開く。
「……兄ちゃん、僕は不幸じゃないよ。
……激しい雨に打たれても、兄ちゃんがいた……か……ら」
「……レムス!しっかりしろ!」
「………だいじょうぶ、ねむい、
だけ……ねさせ、て」
「…………そ……うか、ゆっくり休め」
「……さき、ねる……ね」
♢
それから1日後。
弟は全く、返事をしなくなる。
「レムス、生きてるか!どうしたんだ。」
「……… 」
「なんとか言えよ!ふざけてるとブッ飛ばすぞ!」
「……………… 」
「……………… 」
「………… 」
『おい、やめろ。やめろ。生まれてから、これまで、最悪だったのに、これ以上、最悪にするなよ!』
「レムスなんか言え!」
「…………… 」
「レムス!レムス!」
『ああ、弟はもう無理だ。……もう、俺もいっそ死んで』
♢
「おい!諦めるな!」
「………!!」
激しく体を揺すぶられ、兄のロムルスは目を覚ました。
薄暗い牢内、よく周りを見渡すと、自分以外の子供の奴隷たちも解放され、怖々と身を寄せ合っている。
兄のロムルスは警戒しながらも、目の前の黒ずくめの人間型の魔物に話しかけた。
「誰なんだ、あんた?」
兄のロムルスを、激しく揺すぶっていた黒衣の人物はまじまじとコチラを観察している。
人間型はその問いには答えず、兄ロムルスの体を確認している。
「どうやら、命に別状はないようだな」
兄のロムルスは、はっとなり弟の安否を問いただす。
「弟は!弟はどうした?!
……死んだなんて承知しないぞ!」
「安心しろ。あいつなら割と重症だったから、助かった女達から治療を受けている」
「今は、それより他の魔物が捕らわれていないか、情報を探している」
兄はこの魔物に他に聞きたいことが山程あったが、この人間型はなにも答えてはくれそうにない。
だが、唯一答えてくれた事があった。
「どうやって、ここが?」
「………人間の看守を痛めつけて、居場所を吐かせた」
「………そうか」
しばらくして、兄は弟と、涙の再会する。
「心配させやがって!大丈夫なのかよ、もう!」
そう言って軽く弟を小突いた。
「兄ちゃん、大丈夫だよ。さっきの人間みたいな魔物の人が、治癒魔法をかけてくれたんだ」
弟は人間型の魔物の方をチラッと見る。
「ちょっと、怖そうな魔族の人だけど、お礼を言っても良いかな……?」
兄は弟の意図を汲み取り、この魔物に話しかける。
「弟があんたに、礼を言いたいんだと、おい、ほら!」
「あの、ありがとう。僕ら奴隷で、売られて来たんだ。
……その、何かお礼が出来たら良いんだけど……」
「……別にかまわない、礼が欲しくてしているわけではない」
弟は怖々と、それでも丁寧に黒衣の魔物にお礼を言った。兄のロムルスは、この魔物に強い興味を惹かれたようで、なんとか話しを聞き出そうと話しかける。
「ところで人間型のあんた、なんでこんな事してるんだ?」
黒衣の魔物はやや意外そうに、こちらを見やる。
「こんな、一文にもならない、魔物助けをしてるんだ?
魔物が魔物を狩るなんて、日常茶飯。別に悪くもないご時世だってのに」
弟はそれを聞いて、この黒衣の魔物が気を悪くしないかと兄をとがめる。
「兄ちゃんせっかく助けてもらったのに!ダメだよ!」
「こんな事しても何にもならない、こんなガキ救っても無駄だってのに。
今日日同じ魔物同士、奪い合い食い物にしあってるのに」
それを聞いて、この黒衣の人間型の魔物、
つまり魔王は遥か遠くを見つめ、まるで罪の告白をするように話す。
「これが、我のできる償いだからだ」
「償い?」
魔王は怖い顔をして、それ以上なにも答えなかった。
弟が恐る恐る、この人間型に話しかける。
「ねえ、ここの場所を看守のおじさんに聞いたんでしょ。
……あの、看守のおじさんは、もう殺されちゃったの?」
「なぜ、人間のことを聞く?」
魔王は、やや気色ばんでききかえす。
「だって、心配だから」
「……心配?それは何故だ。奴等は、お前らを殺そうとしていた人間だぞ」
「………そうかもしれないけど、そうかもしれないけど。あのおじさん、僕たちに優しかったんだ。
本当は規則でダメなのに。いつも食べ物をくれて……。
バレたら、とっても怒られるのに。僕たちに何度も何度も、ごめんなって謝ってくれたんだ」
「ああ、本当だぜ。人間型」
「そうか」
弟のレムスの必死の訴えに、魔王も思うところがあった。
「………… 」
「殺しちゃったの?」
「いや、別に殺していない。ただ、しばらくは家に帰れないだけだ」
「そっかぁ!おじさん生きてたんだ。良かった」
「………… 」
『人間でもいい奴もいる、魔物でもそれは同じか』
魔王は、兄弟を見てそう思った。
あとがき
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