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第25話『帝国第二騎士団副団長』

「して、兵数は?」


「百五十名を駐留させております。うち騎兵十、弓兵二十、重装兵がニ十。軽歩兵七十に加え、補給部隊として三十が控えております」


「結構。なに、帝国騎士団が前線に出る事はない。軽歩兵を補給部隊に組み込んで頂こう」


「承知致しました。では後方支援させますが、火急の際はケネス殿に全指揮権を委ねます。好きにお使いください」



 二人の会話を聞いてはいるが、頭に話が入ってこない。


 昨日会ったダリアが帝国騎士団所属なのは理解したが、オンオフのギャップが強すぎて頭がどうにかなりそうだ。



 ちょっと冷静になろう。


 ……さて。

 帝国が抱える騎士団は現在三つ。


 精鋭揃いの第一騎士団は帝都から出ることは無い。彼らは基本的に治安維持を務めており、憲兵の役割を持つ。


 続いて、第三騎士団が他国領土へと進出する侵攻部隊を担う。しかし現皇帝の治世において、他国侵略に出向いたことは無いそうだ。


 そして、今回ディアドラ領へやって来たのが第二騎士団だ。


 第三騎士団と対をなす存在で、国境防衛を主に担っている。その役割ゆえか、帝国の国境線を飛び回る激務なんだとか。


 それぞれの騎士団の特色は異なるが、有事には将となる副団長の立場は大きい。


 この世界では戦略上の観点から国の騎士団幹部は殆ど異能持ちで構成されており、彼らは積極的に前線へと向かうらしい。


 ま、普通に考えれば妥当だ。


 最高戦力を前線にぶつける。兵力の損耗を少なく済ませるにはそれが一番だ。

 そしてスキルを使った派手な戦法は士気も上げてくれるんだろう。何とも便利な話だ。


 つまり、第二騎士団の副団長に据えられたダリアは異能持ちの可能性が高い。

 機会があれば是非能力を拝んでみたいもんだ。



 考え事をして頭を冷やした俺は、二人の会話に注意を向けた。



「ここに居るのは私が雇い入れた冒険者。こちらも確認して頂こう。うち異能持ちが二名、回復師が一名。残り一名が代表を務める。伝達があれば彼に」


「成程。皆様、此度の作戦にご一緒できて光栄です。以後お見知りおきを」



 ダリアの挨拶を受けて軽く会釈する。彼女は表情を崩さなかったが、俺を見て小さく目を細めた。


 ……ちょっぴり気まずい。

 昨日もコレが分かってて話し掛けてきたんだろうか。


 分かってたんだろうなぁ。



「おいテオ!あの美女、こっちを見て微笑んだぜ。いやぁ、俺ってば罪なオトコ!」


「ケネス様にシバかれたいのか?お前」


「……見ての通り、躾はなっていないが使える駒だ。多少、目は瞑って頂きたい」



 突き刺すようなケネス卿の視線を受けて、俺とパウルは二人して縮み上がった。


 なんで!俺なんにも悪くないのに!



「ケネス殿、お気になさらず。慣れておりますので」


「ご配慮痛み入る。他になにかあれば聞くが」


「では、弟を借りても?作戦については問題ありません」


「結構。オスロー、本日は自由行動とする」



 ダリアはケネス卿に会釈すると、オスローを連れて退室した。



 客人を帰したケネス卿は思い出したようにデスクを叩きはじめた。

 相変わらずリズミカルな指先だ。今日の機嫌も最悪だな?



「……パウルとテオは残れ。他は退室せよ」


「えっ、ちょ」



 俺は違うじゃん!


 アーデとイツカに視線で助けを求めたが、無情にも執務室のドアは閉まった。

 


「さて。私の話を遮ってまで交わした雑談は、さぞ楽しかったのだろうな?」


「ははっ……。まあ、それなりに」



 パウルやめろ!

 火に油を注ぐんじゃねぇ!


 しばらく俺たちを睨んでいたケネス卿は怒りが一周まわったのか、諦めたようにため息をついた。



「リーンダリア殿はオスローの姉君。ガードナー家とは良好な関係を保ちたいのだ、くれぐれも粗相はするなよ」


「「はッ」」


 

 キツめに釘を刺された俺たちは、謎の疲れを残して退室した。



「ぷっ……!アンタたちアホすぎない?」


「俺は巻き込まれただけだ。やらかしたのはパウルだよ」


「ま、パウルはこの間の件で調子に乗ってるからな。良い薬になったんじゃないか?」



 イツカとアーデは廊下で待っていてくれたみたいだ。そのまま屋敷を出て、街の食堂へ向かう。


 ディアドラ邸は他の貴族のそれと違って敷地が広すぎないから、移動の時にはかなり助かった。



 ◇



 店内に入った俺たちは席につき雑談を再開する。昨日の出来事も適当にかいつまんで話した。



「それにしたってよ、番兵さんの姉ちゃんだったんだな。あの美女」


「なに?まだナンパし足りない訳?」


「そうじゃねぇよ。世間は狭いってな」



 感慨深げに漏らすパウル。確かに奇妙なものだ。

 ガードナー家は優秀な騎士を輩出する名家だったりするのかな?



「それはそうと二人とも、作戦はちゃんと聞いてたか?結構大事な話をしてたと思うが」



 ……マジで?イツカの言葉に、パウルと俺は目が点になる。


 呆れ顔をしたアーデが改めて説明してくれた。



 まず、俺たちパーティは集団で行動せず、ディアドラ騎士団の各小隊につくこと。


 アーデは魔導隊、イツカは重装隊、パウルは回復隊へ。


 俺はというと、歩兵隊の配属になったらしい。



 大まかな作戦としては。


 まずは歩兵隊ならびに重装隊が国境線ギリギリで敵兵力を減らす。

 生き残り、領内に入ってきた敵を他の隊が殲滅するということになっている。


 騎兵隊は前線に出ても良いと思うんだが、万一の為に温存しておくとのこと。

 せっかくだし馬とか乗ってみたかったんだが残念だ。


 計略を巡らせた奇策などない、実にシンプルな作戦だ。ケネス卿は自軍の戦力に相当の自信を持っているらしい。


 ……と、おおよその作戦内容を確認した頃には、俺たちはすっかり食事を終えていた。


「大体分かった。ありがとう」


「しっかりしなさいよね。タダでさえ作戦中はバラバラになるんだから」


「あいあい。ま、どのみち俺は後方支援だしな。死にそうになったら治してやるよ」


「そんな事態が起きないように祈ろう。じゃ、明日からは別行動になるな。テオ、前線で会おう」


「ああ。それじゃ」



 俺たちは互いの健闘を祈り、その場で解散した。

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