表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/33

第二十九話 樹の生まれ、隠れた出自


 真っ青になっている椿の父親に対し、椿は男性を真っすぐ見つめる。


「あの、どうして……樹くんと話がしたかったんですか?」


「そう、ですね……ううん」


 ちらりと男性は椿の父親を見る。


「……本当は本人と話がしたかったんですけどね」


「い、今からでもお連れします」


 椿の父親が言えば、男性は顔を横に振る。


「いえ、結構です。貴方に頼むと何かと面倒だと分かったので」


 言って男性は椿に深々と礼をした。


「すみませんでした。まず、時間と場所の指定から可笑しかったのに、会えると思って気づかずにいて」

「いえ……」


 男性は再度椿に礼をして立ち去ろうとする。それを、椿の父が必死に止めた。


「待ってください、あんまりだ」


「何がですか? 元々あなたが勝手に勘違いしただけでしょう?」


「そ、れは……」


「第一、彼女は動画の彼と恋人なのでは?」


 男性の問いかけに椿の父親は首を振った。


「違う。断じて! あんな、どこの馬の骨ともわからない男など」


「悪かったですね、ドがつく庶民で」


 割り込んだ声に椿の父親も、相手の男性も驚く。椿だけが目を輝かせ、駆け寄った。


「樹くん!」


 椿が駆け寄ると樹も表情を和らげる。


「来てくれたの」


「うん。玄武のGPSが役に立ったよ」


 椿の肩にいた玄武が顔を出した。


「ふおっほっほ。無事合流できて何よりじゃ」


 椿の肩から樹の肩へぴょんと飛び乗る。男性は、玄武を見て目を見開き、そして。


「やはりだ」


 呟いて椿の父親を押しのけて声をかけてきた。


「はじめまして。君が、噂の樹くん?」


「……そうですけど、あなたは?」


 樹が椿を後ろに庇うと、その様子に相手は目を細めた。


「心配しなくて大丈夫だよ。僕が用があるのは君だ」


 言って男性はスーツから名刺を取り出し、樹へ差し出した。


「僕は(みつる)だ。以後、是非お見知りおきを」


「……医療ロボット製作、企画部?」


「そう。色々な用途の医療用ロボットを作っていてね。どんなのがいいか、考えたり逆に技術部が開発した商品をプレゼンしたりもする」


 説明してから充は樹の肩にいる玄武を指さした。


「例えば、君の相棒のその子みたいな子を作ったりとか」


「玄武は……」


 樹が、戸惑っていると充は微笑む。


「心配しないで。君の相棒を取り上げにきたんじゃない。確認だけ、させてほしい」


「なんですか?」


 警戒を隠さない樹を見ながら、充は尋ねた。


「……君のお母さんの名前は、由香里さん、かな?」


 樹は応えない。だが、それで十分だったらしい。


「ありがとう。その反応で十分だ」


 充は言うと、樹と椿を交互に見て微笑んだ。


「今日は失礼したね。ぜひまた、個人的に話がしたいんだけど」


「……悪いけれど、俺は話すことはありません」


 樹はきっぱりと告げる。


「俺は、三橋勇の息子です。それ以上でもそれ以下でもありません」


 樹の言葉に、充は数秒黙る。


「……そうか。残念だよ。君は、恐らく他の一族も認める立ち位置になれるだろうに」


 言ってそのまま立ち去りかけて、立ち止まる。


「……いつでも頼ってきて構わないよ。それは別に君の弱さではない。世の中には、正論だけではどうしようもないことも、あるだろうから」


「……そうならないように、励みます」


「強情だな。まあ、話に聞く由香里さんの子なら、そうか」


 笑って充は、樹たちを置いてエレベーターに乗って去っていった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ