バックスクリーン3連発の夢から目覚める虎吉
1985年4月17日、甲子園。
バースが構え、掛布が睨み、岡田がバットを回す。
スタンドは揺れ、空気は震え、少年・虎吉の心臓は破裂寸前。
カキーン!
バースの打球がバックスクリーンへ吸い込まれる。
続いて掛布。
そして岡田。
3連発。
甲子園が地鳴りのように揺れた。
父・虎造が叫ぶ。
「虎吉ィィィ!これが阪神やぁぁぁ!」
少年・虎吉は泣きながら叫ぶ。
「ママ、見てるかぁぁぁ!」
その瞬間、バックスクリーンの向こうから光が差しバースが現代語で言う。
「トラキチ、起きろ。今日も仕事やぞ」
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「うおおおおおおおおっ!!!」
虎吉(51歳)、布団の上で跳ね起きた。
寝汗びっしょり。
息は荒い。
枕元には阪神のタオル。
壁には1985年優勝ポスター。
そして、天井には貼りっぱなしの「バックスクリーン3連発」の新聞切り抜き。
「……またや。
また3連発の夢見てもた……」
胸に手を当て、しみじみつぶやく。
山下虎吉(51)。
大阪・西成の小さな印刷工場の2代目社長。
愛車は1985年式の黄色いクラウン(虎ステッカーで原型不明)。
性格は、真面目な顔してアホなことばかりする重度の阪神狂。
妻・美津子(49)には毎日こう言われる。
「アンタの阪神愛、もう病気やで」
娘・遥香(22)にはこう言われる。
「パパの宗教、ほんまやめて」
だが虎吉は胸を張る。
「阪神は宗教ちゃう。
人生や」
そして2026年の朝が始まる
夢の余韻に浸りながら、虎吉は布団から立ち上がる。
窓を開け、朝日を浴び、拳を握りしめる。
「よっしゃ!今日も阪神のために働くでぇぇぇ!」
その瞬間、背後から妻の声。
「アンタ、まず家族のために働きぃや」
虎吉、固まる。
「……はい」
こうして、
阪神に人生を救われた男・山下虎吉の2026年が始まる。




