【第20話 昔のあいつ、今のあいつ】
休日の午後。
同棲を始めてから初めて、
幸也の家に友人が遊びに来ていた。
リビングから聞こえてくる二人の会話に耳を傾けながら、
成美はキッチンでコーヒーを淹れていた。
「お前、変わったな」
「何が」
「昔は女なんか絶対家に入れなかっただろ」
友人の呆れたような笑い声が聞こえる。
成美はお盆にカップを乗せ、
「お邪魔します」とリビングへ運んでいった。
「どうぞ、コーヒーです」
「あ、すみません。ありがとうございます」
お礼を言いながら成美を見上げた友人は、
一瞬目を見開いたあと、
面白そうに幸也の顔と成美の顔を見比べた。
「へぇ……お前、この子が?」
「おう。俺の女」
幸也が事もなげに言い切ると、友人は
「へええ!」と声を上げた。
「なるちゃん、だよね? こいつ昔はさ、
女なんて面倒くさいって言って寄せ付けなかったんだぞ。
まさか同棲までしてるとはな」
「ちょっと待て。余計なこと言うな」
「なんだよ(笑)。減るもんじゃないだろ」
幸也の制止をどこ吹く風で、
友人は成美に興味津々で語りかける。
「ちなみに、幸也って昔めちゃくちゃモテたんだぞ」
「……そうなんですか?」
思わず身を乗り出して尋ねる成美。
幸也の「昔」という、
自分の知らない時間にほんの少しだけ胸がキュッとする。
すると、幸也が成美の腰を軽く引き寄せながら、低く呟いた。
「お前、聞く必要ねぇだろ」
「だって、気になります……」
成美が友人に
「幸也さんって、昔からこんな人だったんですか?」
と尋ねると、友人はニヤニヤと肩をすくめた。
「全然! 昔はもっと冷たくて、
誰にも心開かないような奴だった。……あ、でもな」
友人の視線が、幸也の手元に落ちる。
幸也は友人と話しながらも、
自然な手つきで成美のニットについた小さなゴミを指先で優しく払っていた。
その動作があまりにも無意識で、愛おしそうに満ちている。
友人はそれを見て、脱力したように吐き捨てた。
「……いや、今の方がずっとヤバいぞ」
「あ?」
「無意識の甘やかしが凄すぎて見てらんねぇよ」




