【第14話 はじまりの部屋】
部屋の片付けや引っ越しの荷解きがひと段落した夜。
成美は少し離れた場所で温かいお茶を飲みながら、
幸也の横顔を見つめている。
(幸也さんの隣に行きたいな……触れたいな……)
と思うけれど、
一瞬「お邪魔かな」と昔の癖が顔を出す。
でも、それに気づいた幸也が、
ポンポンと自分の隣のシートを叩く。
成美はそうしてくれたことが嬉しくて、
幸也の隣にちょこんと座った。
それだけで、胸の奥が少しだけ嬉しくなる。
けれど、隣に座っただけでは足りない気もした。
(……もっと近くに行きたい)
そんな自分の気持ちに気づいて、
成美は少しだけ頬を赤くする。
幸也はスマホを置いたものの、何も言わなかった。
急かすことも、問いかけることもない。
ただ、隣にいる。
成美は少しだけ迷ってから、口を開いた。
「……幸也さん」
「ん?」
「……私」
言葉が一度止まる。
でも、逃げなかった。
「……幸也さんに、くっつきたいです」
幸也はすっと腕を広げた。
「…来いよ」
成美は迷わず、幸也の胸に飛び込んだ。
「ッ……」
すっぽりと胸の中に納まり、
幸也の服をぎゅっと両手で掴みしめる。
幸也の腕が成美の背中に回り、
力強く抱き締め返してくれた。
首元に触れる幸也の体温と、
背中を包む大きな手の重み。
成美は幸せそうに目を閉じた。
ぎゅっと抱きしめ返す成美の頭を、
幸也は優しく撫でながら、
「……合格」
と言って、キスをした。




