↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パグ日記〜俺とパグの同居日記〜  作者: 水前寺鯉太郎
第4部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/59

第55話

 二〇二七年六月。

 あの大熱狂の『広島パグミーティング』から、早いもので一年という歳月が経過していた。

 俺とリサさんは、お互いのアパートが隣同士という最高の距離感にあったため、無理に同棲を始めることもなく、二人と三匹の穏やかな日常を少しずつ重ねてきた。

 そして――俺は腹を括り、リサさんにプロポーズをした。

「俺と、結婚してください」

 みなと公園の海風の中で俺が差し出した指輪に、リサさんはぽろぽろと嬉し涙をこぼしながら、「はい……! 喜んで!」と答えてくれた。

 そこからは、まさにトントン拍子だった。リサさんのご両親への挨拶も温かく迎えられ、結婚への準備は順調に進んでいった。

 だが、最後に残された最大の難関――それが、俺の九州の実家であった。

 俺はリサさんを連れ、故郷である宮崎の実家へと向かっていた。

 かつて連休のたびに思い出し、ため息を吐いていた自分のルーツ。母親が極度の犬嫌いであることや、どこかすれ違ってしまっていた家族関係。あの場所に、愛するリサさんと、我が家の大福、アズサを連れて足を踏み入れるのだ。

(受け入れてもらえるだろうか……。もし、追い返されたら……)

 宮崎の眩しい日差しの中、レンタカーのハンドルを握る俺の手に、じっとりと汗が滲む。胸の奥のインフラが、激しい緊張で警報を鳴らしていた。

 そんな俺の焦りを察したのか、助手席のリサさんが、そっと俺の手の上に自分の手を重ねてくれた。

「大丈夫ですよ、長政さん。私たちがついていますから」

 柔らかな笑顔と、その温もり。後部座席を見ると、いつもはバタバタと騒がしい大福とアズサも、どこか緊張した面持ちで「お利口モード」を保ちながら、じっと俺たちを見つめていた。

 実家の前に車を止め、エンジンをきる。

 一年前までは一人で孤独に怯えていた俺は今、世界で一番大切な存在とともに、自分の過去と家族に向き合うためのドアを開けようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。