第53話
二〇二六年五月十七日、日曜日。
ついに、待ちに待った『広島パグミーティング』の当日を迎えた。
雲一つない五月の快晴の下、会場となったのは、あの思い出の地――みなと公園だ。
公園の広場に足を踏み入れた瞬間、俺はその光景に圧倒された。視界の端から端まで、右を見ても左を見ても、シワシワのつぶれ顔とギョロ目を持ったパグ、パグ、パグ! 県内はもちろん、全国から集まったパグ愛好家たちと愛犬たちで、会場は足の踏み場もないほどの熱気に包まれていた。まさにパグの天国だ。
「あの……もしかして『大福とアズサの日常』のブログを書いている浅野さんですか!?」
歩いていると、遠方からやってきたという参加者の方から次々と声をかけられた。
「あ、はい! 浅野です」
「やっぱり! いつもブログ見てます! 大福ちゃんとアズサちゃん、生で見られて感激です!」
これまで我が家の怪獣たちの愛くるしい失敗談や日常を密かに綴っていたブログが、まさかこれほど多くのパグ好きに読まれていたとは。予想以上の認知度に少しドギマギしながらも、俺の胸の奥には誇らしさと温かな感動がこみ上げていた。
「フゴッ! フゴフゴッ!」
足元では、我が家の大福とアズサが、自分と同じ顔をした無数の仲間たちを前に目を輝かせていた。
物怖じするどころか、大福はプロペラのように尻尾を振りながら、全国から集まったパグたちへ次々と「お鼻突きあわせ&お尻クンクン」の挨拶回りに出かけていく。アズサもその横で「私もよろしくね」と言わんばかりに鼻息を荒くしていた。
「長政さん、すごいですね! 有名人じゃないですか!」
隣でちまきちゃんを抱っこしたリサさんが、眩しい笑顔で俺を見上げて微笑む。
5月の澄み切った海風と、会場中に響き渡る無数の「フゴフゴ」という愛おしい鼻息。
かつて一人で寂しく過ごしていた休日が、愛犬たちとリサさん、そして全国の仲間たちと繋がる最高の時間へと変わっていくのを、俺は噛み締めていた。




