第51話
二〇二六年五月七日、木曜日。
仕事が終わり、ゴールデンウィークの余波が残る自室でくつろぎながら、俺はスマートフォンでネットサーフィンをしていた。
足元では、相変わらず我が家のパグ姉弟――大福とアズサが「フゥ……フゥ……」と呑気な寝息を立てて転がっている。
そんな中、愛犬家向けのローカル情報サイトを眺めていた俺の指が、ある一つの目立つバナーの前でピタリと止まった。
『広場に大集合! 広島パグミーティング開催決定!』
「……なんだこれは!?」
画面をスクロールすると、そこには「パグ愛好家とパグたちのための交流イベント」の文字と、画面を埋め尽くす大量のつぶれ顔の画像が躍っていた。
全国から、あるいは県内各地から、シワシワでギョロ目の怪獣たちが一堂に会する一大イベント。まさに、パグによる、パグのための「巨大ネットワークインフラの構築作業」そのものだった。
(これは……行くしかないだろ!!)
俺の胸の中で、男の熱い情熱が爆発した。
我が家の大福とアズサが、自分と同じ顔をした無数の仲間たちと遭遇した時、一体どんなリアクションを見せるのか。考えるだけでニヤニヤが止まらない。
それに、恋人になったリサさんとちまきちゃん、さらにはあのアプリコットパグ『帰蝶』を溺愛している鬼課長にも教えてあげたら、絶対に面白くなるはずだ。
「おい大福、アズサ。お前たちの同類が山ほど集まる祭りがあるぞ」
声をかけると、大福が片目だけを開け、「また何か企んでるな」と言いたげに短く「フゴッ」と鼻を鳴らした。
俺は迷うことなく参加申し込みフォームに必要事項を入力し、送信ボタンを力強くタップした。
初夏の風が吹き抜ける五月の夜。
二匹の怪獣たちと、大切な仲間たちと挑む新たな冒険へ向けて、俺たちの日常のシステムは、さらなる高揚感とともに回り始めるのだった。




