第49話
二〇二六年五月五日、火曜日。
ゴールデンウィーク休暇の最終日。
午前中、スマートフォンに届いたリサさんからのLINEに呼び出され、俺は指定された場所――港に隣接する「みなと公園」へと向かっていた。
初夏の澄み切った青空の下、5月の爽やかな海風が吹き抜ける公園のプロムナード。
足元には、お気に入りのリードをつけた大福とアズサ、そしてリサさんのスリングから顔を覗かせるちまきちゃんがいる。二人と三匹でゆったりと歩く静かな時間。潮騒の音と、パグたちの「フゴフゴ」という心地よい鼻息だけが響いていた。
ふと、隣を歩いていたリサさんが、静かに足を止めた。
「リサさん……?」
振り返った俺の視界に飛び込んできたのは、海風に髪をなびかせ、少し緊張した面持ちで俺をまっすぐに見つめる彼女の綺麗な瞳だった。
リサさんは、胸の前でキュッと手を握りしめると、頬をほんのりと赤らめて、意を決したように言葉を紡ぎ出した。
「浅野さん。……私、浅野さんのこと、ずっと前から気になっていたんです。……もし良かったら、私と付き合ってください」
「――ッ!?」
俺は、あまりの衝撃に目をまんまるにして立ち尽くした。
一瞬、耳を疑った。まさか、自分から告白しようと心に決めていた矢先、彼女の口から先にその言葉が飛び出してくるなんて、夢にも思っていなかったからだ。
言葉を失って固まる俺を見て、リサさんは「だめ……でしょうか?」と少し不安そうに首を傾げた。
その可憐な姿に、俺の胸の奥で止めようのない温かな感情が爆発した。
「駄目なわけ、ないじゃないですか……! 俺の方こそ、ずっとリサさんのことが好きでした。いつか俺から告白しようと思ってたのに……先を越されちゃいましたね。俺で良かったら、ぜひ付き合ってください!」
俺が力強くうなずくと、リサさんの表情がぱぁっと花が咲いたような、最高に眩しい笑顔へと変わった。
「ふふ、嬉しい……! 浅野さん、よろしくお願いします!」
「フゴッ! フゴフゴッ!」
足元では、二人の雰囲気を察した大福とアズサが、祝福するように短い尻尾をプロペラのように振り回し、ちまきちゃんも「ワンッ!」と嬉しそうに甲高い声を上げた。
青い海と5月の風に包まれた、みなと公園。
一年前までは想像もできなかった、あまりにも温かくて愛おしい奇跡。
俺たちの恋と日常のインフラは、今、これ以上ないほど強固で素晴らしい「新たな繋がり」を築き上げたのだった。




