第45話
二〇二六年四月二十七日、月曜日。
ゴールデンウィークの休暇スケジュールが正式に発表された。
オフィスのフロアでは「実家に帰省する」「家族で旅行に行く」といった浮き足立った会話がちらほらと聞こえてくる。
だが、俺には実家に帰る選択肢はなかった。昔から母親が極度の犬嫌いということもあり、実家とはどこか折り合いが悪く、心理的な距離が離れてしまっていたからだ。俺にとって実家は、心休まるインフラではなかった。
(門脇さんは……やっぱり実家の呉に帰ってしまうのかな)
ふと、そんな不安が胸をよぎった。先週末に二人と三匹で過ごしたあの夢のような時間の余韻が冷めないまま、俺はデスクの下で密かにスマートフォンを取り出し、彼女へメッセージを送ってみた。
『門脇さん、GWは呉のご実家に帰省されるんですか?』
送信して数分後、画面が小刻みに震える。
『ううん、今回は帰らないですよ! ちまきもいますし、自宅でゆっくり過ごす予定です』
画面に躍る文字を見た瞬間、俺の胸の奥で小さな歓喜のファンファーレが鳴り響いた。
(帰らない……! ということは、連休中にまた会えるチャンスがある……!)
俺はキーボードを叩く指に少しだけ力を込め、思い切って次の送信ボタンを押した。
『もし良かったら、GW中にもう一度、大福たちも連れてどこかへ出かけませんか? 少し遠出でもできたらいいなと思っているのですが』
トントン、と送信マークが灯る。
一度は孤独に押し潰されそうだった四月の終わりに、俺の恋と日常のインフラは、大型連休という最高の舞台へ向けて、さらなる加速を始めていたのだった。




