表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パグ日記〜俺とパグの同居日記〜  作者: 水前寺鯉太郎
第3部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/41

第39話

 二〇二六年四月二十日の午後。

 送信ボタンを押してから、わずか十分後。スマートフォンの画面が小刻みに震え、通知ランプがパッと点灯した。画面を開いた俺の視界に、心臓が跳ね上がるような文面が飛び込んでくる。

『嬉しいです! ぜひご一緒させてください。……あの、もし浅野さんが良ければ、うちのちまきも連れて行っていいですか?(チワワが両手を振るスタンプ)』

「――よしっ!!」

 俺は思わず、誰もいないリビングで拳を握りしめていた。

 ちまきも一緒。ということは、俺と門脇さん、そして大福、アズサ、ちまきという、前代未聞の「二名と三匹」による犬連れダブルデート・システムがここに完全構築されたわけだ。一人で行くのは少し緊張すると思っていたが、相棒たちがいてくれるなら百人力……いや、パグ二匹の破壊力を考えると、一馬力くらいに減る可能性もあるが。

 決戦の日は、四月二十五日の土曜日。

 カレンダーを確認しながら、俺はふと、翌日である二十六日の予定に目を留めた。日曜日には、あの鬼課長が音頭を取る「職場の新年度花見大会」が控えている。

(桜が綺麗な名所は……やめておこう)

 どうせ次の日に、会社の面々と嫌というほど満開の桜の下でお酌をさせられるのだ。せっかくの門脇さんとのプライベートな時間まで、同じ景色で塗りつぶす必要はない。もっと静かで、潮風が心地よくて、犬たちがのびのびと過ごせる宇品の海沿いのプロムナードか、芝生の綺麗な穴場公園にしよう。

 そうと決まれば、ここからは「デートプランの構造設計」だ。

 俺はノートPCを開き、必死の形相で検索エンジンを叩き始めた。

『犬同伴可 カフェ 広島』『チワワ パグ 相性』『初デート 失敗しないルート』――。

「フゴォ……フゴゥ……」

 足元では、さっきまでバナナを狙っていた大福が、俺の焦りなどどこ吹く風で、ヘソを天に向けてブヒブヒと呑気な寝息を立てている。アズサもその腹に寄り添うようにして丸くなっていた。

「おい大福、アズサ。お前ら、二十五日は門脇さんとちまきちゃんに会うんだぞ。頼むから、ちまきちゃんに体当たりしたり、門脇さんの服にヨダレをなすりつけたりするなよ……?」

 話しかける俺の口元は、かすかに震えていた。

 もし、俺の考えたデートプランが退屈だったら? もし、大福たちがちまきちゃんを怯えさせて、門脇さんに嫌われてしまったら?

 一度ネガティブなロジックが作動すると、焦りは無限に膨れ上がっていく。仕事の予算編成よりも遥かに複雑で、一筋縄ではいかない「恋愛」という名の未知のインフラ。

 画面に並ぶオシャレなドッグカフェの画像を見つめながら、俺は、新年度のどんな修羅場よりも激しい緊張と焦燥の波に、一人静かにおぼれそうになっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ