27. あの時死んだ私がまたお会いすることになるなんて
――妃教育も通常よりも短期間で終わり、私は結婚式までその準備に追われることになりましたのよ。
「お嬢様、結婚式が早まって良かったですね。国王陛下は妃教育が終わってからとおっしゃっていたところをお嬢様が早く履修なさったからと皇太子殿下が早められたんでしょう?」
「アン、それでも予定が早まって準備がとても大変なのですわよ。」
「それでも、お嬢様と早く結婚したい皇太子殿下の愛ですよ!」
「まあ、そうかも知れないけれど……。仕立てから何から皆に無理を言ってしまって悪いわね。」
伯爵家の専属侍女だったアンは王城へもついてきてくれており、彼女の明るさには私も助けられておりますわ。
ドレスは私が伯爵家にいた時から贔屓にしているあの老舗の仕立て屋に依頼しておりますの。
あとは料理や会場の装飾、来賓の選別と招待状の作成などとてもたくさん準備することがありますのよ。
――コンコンコン……
「タチアナ、良いか?」
「はい。どうぞ。」
皇太子殿下が本日もお茶にいらっしゃいました。
「殿下も結婚式の準備でお忙しいのでは?」
「まあな。それでもタチアナとのお茶は外せない時間だからな。タチアナと二人でする談話は身になることが多い。」
皇太子殿下からそう言っていただけると私も嬉しく思いますのよ。
私の意見をいつも尊重してくださって、きちんと耳を傾けてくださる。
「それはそうと、ブーランジェ王国へヒューバート国王陛下即位のお祝いを送ったが、その返しが返ってきたんだ。」
そう、ヒューバート様が国王に即位されたお祝いにラガルド王国から大量の『塩』を送りましたの。
ラガルド王国では塩は輸出するくらいの産業ですが、内陸国のブーランジェ王国では岩塩しかない為、塩はとても高級品なのです。
ヒューバート様も常に塩を輸入したいとおっしゃっておりましたから、きっと喜んでくださると思ってセドリック皇太子殿下へ進言いたしましたのよ。
「殿下、それでブーランジェ国王陛下は何と?」
ヒューバート様はお喜びになられたかしら?
どうか今後の国交正常化によってブーランジェ王国でも塩が市井の民でも買えるようになりますよう祈る気持ちもありましたの。
「とてもお喜びになったそうだ。塩は以前から輸入を考えておられたそうで、国交正常化についても前向きに検討してくださるとのことだ。」
「そうですか……。良かったですわ……。」
「タチアナ?泣いているのか?」
思わず両の瞳から涙が零れてしまい、皇太子殿下を驚かせてしまいましたわ。
「嬉しいのです。これで両国の民が幸せになれる第一歩なのだと思いますと。とても嬉しいのですわ。」
「全てタチアナのおかげだ。」
殿下は私を抱きしめてくださって、落ち着くまで背中を優しく撫でてくださいましたのよ。
「我々の結婚式にも来ていただけるよう打診しているが、この様子ならばきっと来ていただけるだろう。」
皇太子殿下の言葉に、私は何も答えることができませんでしたわ。
あの時ヒューバート様の目の前で刺し殺された私が、再びお会いできるとはまだ実感が湧きませんもの。




