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28. ラガルド王国の皇太子妃になりましたのよ


「お嬢様!お美しいですわ!この国一番の美貌のお嬢様が、この国一番の仕立て屋のドレスをお召しになって、お美しいのは当然ですね!」

「アン……、大袈裟よ。でもありがとう。嬉しいわ。」


 忙しい時間を過ごすほどに時が経つのはとても早いもので、はや結婚式当日となりましたのよ。


 今日は近隣諸国の友好国からも来賓がいらっしゃっております。


 ブーランジェ王国からも、国王陛下であるヒューバート様がお見えになっていらっしゃるのですわ。


 度々来訪するのも難しいとのことで、式が終わればブーランジェ王国とラガルド王国の国交正常化に向けた会談が予定されております。


 ラガルド王国側は次期国王となるセドリック皇太子殿下が国を代表して会談に臨まれますわ。



――コンコンコン……


「そろそろお時間でございます。」

「それではお嬢様、行ってらっしゃまいませ。」

「アン、行ってまいりますわ。」



 式は王城の敷地内にあるステンドグラスが見事な真っ白く巨大な大聖堂で執り行われますのよ。


「タチアナ、幸せになるのですよ。」

「お母様、ありがとう存じます。」


 私のベールを下げてくださるのはドゥイエ伯爵夫人であるお母様。


「タチアナ、今日のお前は今までで一番美しいよ。幸せになりなさい。」

「お父様、ありがとう存じます。」


 赤いカーペットがずっと長く伸びたバージンロードをドゥイエ伯爵のエスコートで進んでゆきます。


 厳かな雰囲気の大聖堂内では、バージンロードの左右で装花の飾られた椅子に多くの方々が腰掛けられているのがベール越しに見えましたの。


 祭壇に近づくと、セドリック皇太子殿下が正装を身につけらっしゃって、藍色の艶髪は後ろに撫で付けられ、神秘的な色彩の瞳は大聖堂の雰囲気にピッタリで、いつも以上に素晴らしいお姿で私を出迎えましたわ。


「よろしくお願いいたします。」


 お父様が席へと下がると、殿下は一度頷いて私の方へと手を差し出しましたの。


 エスコートされて、私は殿下と並んで司祭様がいらっしゃる祭壇へと上がりました。


「セドリック・ル・ラガルド皇太子殿下。貴殿はタチアナ・ド・ドゥイエと結婚し、妻としようとしています。あなたは、この結婚を神の導きによるものだと受け取り、その教えに従って、夫としての分を果たし、常に妻を愛し、敬い、慰め、助けて、変わることなく、その健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しきときも、死が二人を分かつときまで、命の灯の続く限り、あなたの妻に対して、堅く節操を守ることを約束しますか?」


 威厳のあるお声で司祭様が皇太子殿下へと誓いの言葉を投げかけます。


「誓おう。」


 隣の皇太子殿下は前を向いたまま、真剣な面持ちで答えられましたわ。


「タチアナ・ド・ドゥイエ。貴女はセドリック・ル・ラガルド皇太子殿下と結婚し、夫としようとしています。あなたは、この結婚を神の導きによるものだと受け取り、その教えに従って、妻としての分を果たし、常に夫を愛し、敬い、慰め、助けて、変わることなく、その健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しきときも、死が二人を分かつときまで、命の灯の続く限り、あなたの夫に対して、堅く節操を守ることを約束しますか?」


 同じ文言を私にも投げかける司祭様は薄く微笑んでおられました。


「はい。誓いますわ。」


 婚姻の誓約を立てると、その後向かい合わせになって、夫となる皇太子殿下が私のベールをそっと持ち上げられました。


 殿下のアースアイが私の方を一心に見つめておられます。私がその瞳の中に映っているのが見えると恥ずかしく感じて頬が熱くなりましたわ。


 そして、私の両肩に殿下は手を置いて誓いの口づけをなさいました。


 そして司祭様がはっきりと通るお声で、ふたりが神の名の下で夫婦となったことを宣言なさったのですわ。


 私はお慕いするセドリック皇太子殿下の妻となり、そしてラガルド王国の皇太子妃となったのです。







 


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