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17. あのような残念な方と添い遂げるなど無理ですわ


「タチアナ嬢、早速お時間を作っていただき嬉しく思う。」

「皇太子殿下に拝謁いたします。本日は姉君であらせられるマルグリット様にこのような私的な場にお招きいただきまして、恐縮ですわ。」


 あれから数日後に、早速マルグリット様から姉弟のお茶会へとご招待いただきましたの。


「タチアナ、今日は来てくれてありがとう。セドリックも貴女に会えるのをとても楽しみにしていたのよ。早く会わせろって煩くて。」

「姉上、タチアナ嬢が困るようなことはおっしゃらないでください。そのような言い方をなされば、アルバンの婚約者であるタチアナ嬢に負担になりますよ。」


 慌てた様子のセドリック皇太子殿下は、姉君のマルグリット様には頭が上がらない様子ですわ。

 普段は威厳がお有りで飄々とした雰囲気ですのに、弟君らしく可愛らしい表情をされる時もおありなのね。


「あら、アルバン様のような方はタチアナの良いところを理解できない方だから。あの方にタチアナのような理知的な御令嬢は勿体ないわ。」


 鋭いマルグリット様は、アルバン様と私の社交場での奇妙な行動に気付いておられて、アルバン様の変わった性癖に薄々勘づいておられるようなのです。


 それに、マルグリット様は親しい方の前では存外ハッキリとした言動をなさる方だと知りましたわ。


「タチアナ、アルバン様とは本当に上手くやっているの?あの方、貴女に何か無理強いしてるのではないの?」


 思ったよりもストレートにお聞きになられたので、私は一瞬怯んでしまいました。


「アルバン様は……。」


 どうしましょう?アルバン様の変わった性癖をマルグリット様や皇太子殿下に話すなど、いけないことですわよね。


「タチアナ、貴女の人生は貴女のものなの。私たち王族や貴族にとって政略結婚は仕方のないことだけど、貴女の人格を否定されるようなことや、アルバン様の自己中心的な行いに振り回されるのが当たり前で許されることではないのよ。」


 やはりマルグリット様は、アルバン様に『寝取られ願望』があることを勘づいてらっしゃるのね。


 そうよね、書籍が出たりとあれだけ市井でも話題の性癖なのですもの。


 鋭いマルグリット様も、親しくなった私のことをよく見ててくださるからきっと気付かれてしまったのね。


「マルグリット様……。そうなのです。アルバン様は『寝取られ願望のお強い方』なのですわ。」


「 「 ええっ!? 」 」


「はい?」


 マルグリット様も皇太子殿下も、とても驚いたようなお顔をなさるので私こそ驚いてしまいました。


「ね、寝取られ願望が強い!?」

「はい、皇太子殿下。アルバン様がそうおっしゃって……。それで私を敢えて他の殿方と頻繁に接触させるようにしているのだと。そのようなところを観察することが快感なのだそうです。」


 目を大きく見開いて驚くお姿を見て、まさか親しいご学友の変わった性癖を聞くとは思いもよらなかったのではないかと、申し訳なくなりましたのよ。


「タチアナ、それは本当なの?」

「はい。やはりマルグリット様もお気づきだったのですね。」

「……いいえ、私はまさかそんなことだとは思っていなくて……。」

「えっ?」


 まさか……、マルグリット様は気づいてらっしゃらなかった?


「私は、アルバン様がタチアナのことを虐げたり蔑ろに扱っていると思っていただけで……。婚約者である貴女の美貌を必要以上に周囲に自慢しているところもあるし。まさかそのような性癖があるなどと気づかなかったわ。」

「ああ、私ったら……。早とちりしてとんでもないことを暴露してしまいましたのね。」


 居た堪れなくなっていると、姉弟のお二人は顔を見合わせてこちらへ向かって言いましたの。


「「あんな奴とは婚約破棄してしまいなさい。」」


 お二人は声を合わせてとんでもないことをおっしゃいましたわ。


「お二人とも、落ち着いてくださいませ。私が悪かったのです。まさかこのようなことになるとは思いもよらず、お二人に話してしまったのですから。」

「いいえタチアナ!あのような輩はタチアナに相応しくありません!セドリック!貴方何とかなさいな!」


 随分とマルグリット様が感情的になってしまわれて、皇太子殿下も難しいお顔をして考え込んでしまいましたので、私は途方に暮れてしまいましたの。


「……タチアナ嬢、貴女はアルバンのことを好いているのか?」

「いいえ。全く。」


 おもむろに殿下が問いかけるものですから、私らしからぬことではありますが、つい本音を即座に曝け出してしまったのです。


「ほら、ごらんなさい!タチアナ!やはり最早婚約破棄しかないわよ。そんな気持ちの悪い輩など捨てておしまい!」

「姉上、タチアナ嬢は伯爵令嬢です。対してアルバンは侯爵令息だ。なかなかタチアナ嬢の方から婚約破棄を言い出すことは難しいでしょう。」

「それならセドリック!貴方が何とかなさいな!貴方皇太子でしょう!?」


 マルグリット様、とても興奮なさっていて……それは無茶振りというものです。


「分かりました。ただし、タチアナ嬢が婚約破棄を望むなら、ですが。」


 本当ですの?本来のタチアナ嬢を自殺に追いやった、あの残念なお方(アルバン様)と婚約破棄ができるなど私にとっては夢のようなことですわ。


「私は、アルバン様と添い遂げるなど絶対に嫌です。」


 それを聞いたお二人は力強く頷き合い、本日のところは私にお暇するようおっしゃったのです。





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